575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

舞う阿修羅長き手妖し春の雨  等

2021年04月30日 | Weblog

  

興福寺の阿修羅像。三つの顔と六本の腕を持つ美少年顔の有名な仏像。

その中性的な面立ちで長い手をくねらせて踊るという図でしょうか、

春の雨との相乗効果で妙に艶めいて気になり、いただきました。

 

今回の兼題、「春の雨」は春に降る雨一般を指しますが、

雨のイメージとしては、古くから感じ分けられて使われていたようです。

例えば「春雨は」、豪雨となることは少ないが、細かい雨滴のしとしとと長く降り続く雨。木の芽を張り、草の芽を伸ばし花を咲かせる雨で、長雨という点では「春霖」「菜種梅雨」もこちらと言えそうです。

対して「春時雨」「春驟雨」はにわかに黒雲が天を多い、時に春雷を伴って降る急雨とありました。明るさがあり春色のときめきが感じられるとも。

 

春時雨 遺影となりし 叔母の笑み (殿)

蕾打ち 目覚め促す 春驟雨  (紅)

 

この二句も雨のタイプを感じ分けるとまた深い味わいがあります。

 

須美さん:目覚め促すが好き 

竹葉さん:「打ち」で、ただ雨が当たるのでは無く、開花を促す感じが出ていい

殿さまも、ご自分の句「辛夷揺れ 小さき石拳 揃いけり」の連句のように思われたそうです。

驟雨が打つのだから、きっと硬い蕾なのでしょう。と

しとしとと降るだけではなかなか起きられないですね。驟雨が活きてきます。

 

 さて表題の句に戻ります。

私は仏教にも疎く勝手な見方になるかと思いますが

両性具有にも見える三面六臂の阿修羅が、様々な思いや感情、決意など

相反するものもすべて受け入れて踊っている姿が浮かんできました。それは妖しい?

 

連日発表される数字に踊らされ、感染予防と経済活動両立のはざまに揺れる連休、

対極にあるものを統合させ、折り合いをつけられるのが日本の文化であるならば、

この国ならではのコロナ禍を乗り越えるヒントも見つけられるのではと、僭越ながら思います。

 

「お手上げ踊り」とはなりませんように(笑) 郁子

    

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菜種梅雨もも色の道静かなり  泉

2021年04月28日 | Weblog

作者の泉さんのコメントです。

「今年も春が早くやってきました。桜、菜種の花、チューリップ、ボタンなど早く咲いてびっくりしています。桜も、早く咲き、楽しもうと思っているうちに雨が降り 見る見るうちに葉桜になり、雨が降っている歩道はもも色になり、人もいなくて 美しいと感じました。今回、菜種梅雨を季語に用いてみました。」

 

私は、「もも色の道」に魅かれました。桜の花びらのじゅうたんですね。そして、雨の止み間の静謐な様子が伺えました。菜種梅雨の黄色ともも色の対比も鮮やかですね。皆様からのコメントをご紹介します。

殿様:ももいろの道。童話のような世界を描いています。

歩いてみたくなる佳句。

 

千香子さん:菜の花の黄色が広がり、ももいろの道の千本桜が満開だったころを思い出させる美しい風景がうかびます。

 

「もも色」って優しい言葉ですね。明日から大型連休。皆様お元気でお過ごしください。「新緑の道」歩けるといいですね。麗子

 

 

 

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にりん咲く ふたりしずかの 深山かな <殿>

2021年04月25日 | Weblog

*ふたりしずか <二人静 >  春の山野草。名称の由来は鎌倉の鶴岡八幡宮で「静御前」が舞いを披露。もうひとりの舞手は亡霊。ミステリアスな伝承を持つ二人静。陽の当たらない深山で白く可憐な花が咲きます。

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化粧坂<けわいざか> 魔界へ通ず 木下闇<こしたやみ> <殿>

2021年04月24日 | Weblog

鎌倉には敵の侵入を防ぐ七つの切り通しがあります。 そのひとつが化粧坂<けわいざか>の切り通し。武将の首を洗い化粧して首実検したと伝わる激戦の地。いまでも武者の叫びを聞くとか。木々が鬱蒼と茂り汗がひいていきます。

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鯱留守の天守の低し春の雨  晴代

2021年04月23日 | Weblog

 

いつもお城をみている作者ならではの観察眼ですねと麗子さんが指摘されました。

尾張名古屋は城でもつ。シャチのない天守が精彩を欠いて見えたのでしょうか。

 

等さん: 名古屋城の金シャチがおろされ、天守閣が低くなったニュースですね。

低くなった空からの“春の雨”と上手くマッチしています。

 

能登さん:春雨を見上げてみれば名古屋城、鯱が無いだけで低く感じられます。見事です。

 

須美さん:鯱鉾が天守から降りた事を留守と表現しているのが面白い。

 

泉さん:普段は高い所にある鯱が下に降りてきて春の雨にうたれている。

 

そうでした。名古屋城のシンボルともいえる金シャチは、今、疫病退散と復興を願って降臨し

名古屋・栄で特別展覧されています。7月11日までだそうです。

閲覧料500円はいかがなものかと麗子さんのコメントもあり笑ってしまいましたが、

ご利益があるならば、お賽銭と考えてもいいかもしれません。

 

亜子さんは

「天守の低し」で名古屋の時事句として面白い!とコメントされました。

明後日、まん延防止等重点措置のもとでの名古屋市長選が行われます。

金のシャチホコも、名古屋の未来に眼を光らせていることでしょうね。郁子

 

 

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ボールひとつ置き去りしまま春の雨  郁子

2021年04月22日 | Weblog

「春の雨」句会で見事トップ賞に輝いた郁子さんの句。ちょっと寂し気な雨の公園の一コマでしょうか?「置き去りしまま」にどこか物語性も感じます。

 この句の背景を郁子さんに伺ったところ、素敵なエピソードをお話してくださいました。

郁子さんの娘さんが小学校5年生の時のこと。娘さんが作った「雨の日」という詩が新聞に掲載されたそうです。当時の先生が大人しかった娘さんのこの詩をとてもほめて、投稿して下さったそうです。

ご了解を得ましたのでその詩をご紹介させていただきます。

  「雨の日」

雨の日になると

男子はろうかか教室で

おにごっこ

女子はお絵かきか

トランプ 本読み

じゃあ先生は

何をしているんだろう?

外を見ると

大きな水たまり

サッカーゴールの中には

三つのボールが

さびしそうに

落ちていた

  

 いかがでしたか?すばらしい感性ですよね。郁子さんは15年くらい前のこの詩を思い出して今回俳句を作られました。

記憶の中では「ボールひとつ」と思っていて改めて記事を探したらなんと三つだったとのこと。

句会でトップ賞だったと、社会人になられた娘さんに報告したら「ふ~ん」というつれないお返事だったそうです(笑)

詩では3つの方が学校の雰囲気が出ますが、俳句ではやはり「ボールひとつ」が秀逸です。

皆さんから絶賛で見事〇を11票獲得した「ボールひとつ」。

春の雨は郁子さん親子に優しく降りそそぎました。麗子

 

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「春の雨」メール句会の結果発表です。

2021年04月21日 | Weblog

早くも初夏の陽気となりましたが、メール句会ではいろんな春の雨が降りました。

郁子さんが圧勝でした。「ボールひとつ」が11票で「〇十一」でした。

おめでとうございます!

では結果をご覧ください。

 

「春の雨」2021・4月

  1. 艶々と灯籠二つ春の雨 (須美)泉
  2. 春霖や魁夷の白馬けぶる池 (能登)亜子
  3. 銅像の指さす未来春の雨 (亜子)晴代 千香子
  4. 三本指突き上げたまま春の雨 (竹葉)結宇
  5. 鯱留守の天守の低し春の雨 (晴代)等 麗子 郁子 能登 佐保子 須美 亜子 泉
  6. 舞ふ阿修羅長き手妖し春の雨 (等)郁子
  7. 春時雨 遺影となりし 叔母の笑み (殿)等 紅 竹葉 遅足
  8. ボールひとつ置き去りしまま春の雨 (郁子)結宇 等 紅 竹葉 麗子 晴代 能登 遅足 佐保子 千香子 殿
  9. 春の雨ジョージア松の下に仰ぐ(アグ)(結宇)遅足
  10. リフォームの一休みなる春の雨 (麗子)結宇 晴代 泉
  11. 春の雨歌声高く「花は咲く」 (千香子)
  12. 蕾打ち 目覚め促す 春驟雨 (紅)竹葉 能登 須美 殿
  13. 菜種梅雨もも色の道静かなり (泉)紅 麗子 千香子 殿
  14. 寝言にもママアと呼べり春の雨 (佐保子)郁子 須美
  15. 牡丹花を見納めとして春の雨 (遅足)佐保子 亜子

 

自由題

  1. 春光にさそわれし朝のどかなり (泉)
  2. この空の果ての銃声花仰ぐ (亜子)紅 竹葉 麗子 遅足 佐保子 泉 
  3. 藁咥えポストにスポッ春の鳥 (竹葉)結宇 能登 泉
  4. 桜散り明治と読める兵の墓 (結宇)等 晴代 能登 遅足 佐保子 千香子 亜子
  5. 解体の瓦礫の庭に一本桜 (等)
  6. 吾子の笑み 鉄路まっすぐ 春悲し(殿)紅 須美 泉
  7. しゃぼん玉舞う呉服座の幟旗 (郁子)結宇 麗子 佐保子
  8. はくれんがあめの光にぬれている (遅足)郁子 殿
  9. 春愁や切り抜きふえる小引き出し (晴代)結宇 等 麗子 郁子 須美 亜子
  10. 若芝の球吸い込むやスッと消え (須美)竹葉 殿
  11. 独活の字や孤高の香り白き肌(麗子)郁子 千香子 須美 亜子
  12. 手作りの絣の手甲なすの花 (千香子)等 能登
  13. 二人きり 藤のかんざし 頬染めて (紅)
  14. パステルの化粧うっすら山笑う (能登)紅 晴代 千香子 殿
  15. 桜散る我も散りたしなどおもふ (佐保子)竹葉 晴代 遅足

 

 

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「春の雨」句会の投句が揃いました。

2021年04月20日 | Weblog

「春の雨」2021・4月

  1.         艶々と灯籠二つ春の雨

②          春霖や魁夷の白馬けぶる池 

③          銅像の指さす未来春の雨 

④          三本指突き上げたまま春の雨 

⑤          鯱留守の天守の低し春の雨 

⑥          舞ふ阿修羅長き手妖し春の雨 

⑦          春時雨 遺影となりし 叔母の笑み 

⑧          ボールひとつ置き去りしまま春の雨 

⑨          春の雨ジョージア松の下に仰ぐ(アグ)

⑩          リフォームの一休みなる春の雨 

⑪          春の雨歌声高く「花は咲く」 

⑫          蕾打ち 目覚め促す 春驟雨 

⑬          菜種梅雨もも色の道静かなり 

⑭          寝言にもママアと呼べり春の雨 

⑮          牡丹花を見納めとして春の雨 

 

 

 自由題

①          春光にさそわれし朝のどかなり 

②          この空の果ての銃声花仰ぐ 

③          藁咥えポストにスポッ春の鳥 

④          桜散り明治と読める兵の墓 

⑤          解体の瓦礫の庭に一本桜 

⑥          吾子の笑み 鉄路まっすぐ 春悲し

⑦          しゃぼん玉舞う呉服座の幟旗 

⑧          はくれんがあめの光にぬれている 

⑨          春愁や切り抜きふえる小引き出し 

⑩          若芝の球吸い込むやスッと消え 

⑪          独活の字や孤高の香り白き肌 

⑫          手作りの絣の手甲なすの花 

⑬          二人きり 藤のかんざし 頬染めて 

⑭          パステルの化粧うっすら山笑う 

⑮          桜散る我も散りたしなどおもふ 

 

 

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ゆらぐとき 藤のかんざし 花こぼれ <殿>

2021年04月18日 | Weblog

 

鎌倉は三方を山に囲まれた地。鎌倉幕府は周囲の山稜を要害としたのでしょう。現在は自然歩道として整備されハイキングコースとして人気があります。藤棚とベンチのある休息所で小休止。遠くに相模の海が光を放ちます。ベンチに座ると簪<かんざし>のような枝垂れ藤が見事。風に揺れ花がこぼれ散っていきます。

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仁王像 太き指さす 糸櫻 <殿>

2021年04月17日 | Weblog

鎌倉には、高徳院、本覚寺など力の象徴ともいえる仁王像がいくつかあります。特に杉本寺の仁王像の阿形像と吽形像は「運慶」の作といわれ有名。仁王とは「金剛力士」ちなみに「金剛」とは金より硬いモノ。つまり金剛石とはダイヤモンドのこと。話を戻します。運慶作といわれる杉本寺の仁王像。その太い指先が示すのは嫋やかな糸櫻。不似合いともいえる不思議な暮の春。

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竹林でコツンとあたる春の音  泉

2021年04月16日 | Weblog

竹林で」がすこし場所説明となってしまい気になりましたが

コツンに魅かれました。カタカナ表記も感触がいいですね。

コツンという音は、耳でなく手の感触でわかる音、

音があたるという表現も新鮮です。

本当にタケノコを掘りあてた人にだけわかるうれしい「音」かもしれません。

 晴代さんも

「春の音がいいですね。自分なりの春の音を楽しみます」

とコメントを寄せてくださいました。

 

 春を感じる音って何があるでしょう。

鳥のさえずりや、雪解け水のせせらぎといった以外のもので・・

意外に浮かばないものです。

自然界が一気に活動を開始するため、花や生き物といった視覚的な事物や、

年度替わりの行事・心情的なものが満ち溢れていて、どうしてもそちらに関心が

行ってしまいます。

 

 私の身近な音は生活音。

お隣さんがぽんぽんと布団を叩く音、

旋回する飛行機から聞こえる宣伝、

遠くからとぎれとぎれにうなる機械音

 うーん、どれも春ならではという気がしないか・・

 

コロナ禍での不安やいらだちのノイズをよけて

五感で感じる私なりの春の音を探しています。 郁子

 

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職人の一枚脱いでうららけし  郁子

2021年04月15日 | Weblog

我が家も2月からリフォームをして毎日のように職人さんが出入りしていました。

郁子さん宅も窓とドアのリフォームを終えられました。朝から晩まで職人さんは本当によく働いて下さいます。外仕事は天候に左右されます。うららかな春の日。上着を「一枚脱いで」仕事に励む様子が写実的で、身近な光景を切り取った春らしい一句だと思いました。

亜子さん:庭師か大工さんか。ぽかぽかと暖かく「一枚脱いで」が具体的で一枚の写真のよう。

須美さん:本当にうららけしな光景が浮かぶ。

今在宅時間が多くなりリフォーム中のお宅が増えているようです。オンラインでの仕事場確保やコロナ感染予防のための蛇口や手洗いの増設。寒さを終え、これからの季節、職人さん身軽になってお仕事に励まれますね。願わくば一日も早くマスクが取れる日が訪れますように。麗子

 

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鷽鳥や 花の化粧<けわい>を 散らしゆく <殿>

2021年04月12日 | Weblog

<うそ> 口笛を古語では「うそ」というとの由。しかし、口笛というより「ヒーホー」と悲しげな鳴き声に聴こえます。また、弾くような仕草から「琴姫」「琴引き鳥」といった上品な別名があります。拙句は鷽がさまざまな花の芽を食する習性があることから詠んでみました。

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山の辺の ここかしこなり 山桜 <殿>

2021年04月11日 | Weblog

リハビリとして出かけた山行。塔ノ岳が近づくと大きく視界が拡がります。遠くに霞む東京の高層ビル群。そして山の裾野の遠近<おちこち>には山桜が点在。丹沢の春はこれからといった感。

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花よりも 早く出会いし 土筆かな <殿>

2021年04月10日 | Weblog

緊急搬送により入院。ステロイド点滴を終え病棟の庭を歩きます。半眼の視界にぼんやりと映ったのは土筆の群生でした。花より土筆を見ることになった春。

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