冬薔薇<ふゆそうび> の花言葉は「輝き」。花の少ない真冬に輝いて見えるからでしょう。冬薔薇はフランスのメイアン社が20年かけて作り出した傑作といわれています。ちなみに、薔薇<ばら>は、荊、棘<いばら>が語源との由。
「東京には空が無いといふ」高村光太郎「智恵子抄」の一節。澄みきった東京の空。智恵子の空が戻ってきたのでしょうか。智恵子抄のあどけない話は下記サイト。https://aozoraroudoku.jp/voice/rdp/rd570.html
田舎からお米が届くと、コイン精米所に行きます。ガーガーと音をたて白米にして扉を開けると、
いつのまに集まったのか、雀たちが触れんばかりに近づいて首をふりふりしています。
こぼれ米だけでは足りなかろうと一つまみ撒くと、さらにもう一団がやってきて加わり、
閑散としていた精米所がお祭り騒ぎに。いったい何処にいたんだろうと思う瞬間。
「風の中から現れる」がぴったりです。
竹葉さん:いつもは姿を見せないのに逞しく生きている雀が想像出来、雀さん良かったね、と思える句です。
須美さん:風の中からが良い。
晴代さん:風の中からが餌の少ない時期の雀の動きがよくわかります。
その雀も、最近見なくなりました。
「米を撒かないでください」と精米所に張られたビラのせいか、
寒さや、天敵、隠れ場所の確保が難しい今の建築事情のせいか、
頬墨のすゝけてをりぬ寒雀 河野静雲
痩せて羽の艶の足りない雀が、少ない餌をとりあって喧嘩をしていたりするのを見ると・・
皆、頑張って生きているんだなあと思います。 郁子
この句を最初に見た時、今の世の中の動きとは少し離れたところにいたとしても、無事に新年を迎えられ安堵する気持ちが伺えました。初雀の健気な声に励まされるような気もしました。
「この世」は社会生活なのか、あるいは雀の住む自然界なのか、いずれにしても「すこしはみ出て」に、それでも生きていくという力強さが感じられました。
皆さんのコメントです。
殿様:雀は20年前と比べ8割減少。絶滅も近いといわれています。
作者は滅び去る雀への愛惜の念を句にこめたのでしょうか。
紅さん:すずめが少なくなってきているそうです。この世はすずめたちのとって、住みにくいのでしょうか。
遅足さんの奥様の佐保子さん:
情景を描くという句ではなく、こころというか思いを表現したいのではという感じです。(見たことを575にしてるだけの私と違って)締め切りの日も結局句が浮かばなかったのに、翌朝起きたらできたといった句があれでした。あの初すずめは宏二自身で、この世からすこしもうはみでてしまって生きている、病気で頭の方ももはや回らなくなって来ている感じをうまくいったなと思って「いいね!」と1票いれました。読む人が、けなげととってくださってもいいし、寂しいねととって下さってもいいし。ちょっと私は感動したので、
「この世からすこしはみ出て初すずめ」締切すぎて夫(つま)の読みし句 佐保子
なんて歌にしたりしました。
★★★
遅足さんの俳句を佐保子さんが短歌にする。これは素敵な共同作業ですね。以前、遅足さんはご自身の俳句を短歌に作り直しておられましたが、これからは奥様とご一緒にできますね。これからも期待しています。
俳句にも短歌にもなる初すずめ 麗子
都心で最も標高のある愛宕山。急な石段を登ると愛宕神社があります。愛宕神社は徳川家康が江戸の防火を願い創建したといわれる神社。雪の残る石段。灯篭の炎が微かに揺れます。
鉄紺<てつこん>紺を含む鉄色の意。横から吹く冬の雨がレールを磨いているようです。実は。他の会で詠んだ句。会員より「鉄紺」は彼の母校である東洋大学のスクールカラーと教えていただきました。東洋大の駅伝部の襷の色は鉄紺。鉄紺という色は東洋大学の校訓を表現しているとの言。
収束どころか、変異を重ね過去最多の感染者を、出しているコロナ。
今度のオミクロン株は、10歳未満の子どもの感染が多いということで、今後何処にどのような形で広がっていくのか不安です。学生、受験生も同じく、辛き世を共有するという意味でこの雀の姿に重なります。
コメントをいただきました。
千香子さん: もともと天敵が多く寿命の短い雀がさらに環境の悪化で、目に見えて数を減らしています。辛い世です。
泉さん: 年々、雀が減っている。最近はなかなか見かけなくなってきた。
晴代さん: ゆゆしき状態。屋根瓦の家屋がふえると少しは良いのでしょうか
結宇さん 遅足さん 佐保子さんも一票を投じました。
余談になりますが
昔一時だけ、すずめを飼っていたことがありました。
巣から落ちてしまって戻れなくなった保護雀で「ちゅん太」と名づけられ、呼ぶと飛んできて手に乗るほどになりました。栄養不良で尻尾が生えそろわず、小さなキウイのような子。
庭で遊んでいるうちにふと居なくなりました。向かいの家にはやんちゃな猫が!
ずい分泣きましたが、親が迎えに来て帰っていったのだと信じて祈りました。
・・・懐かしい子どもの頃のお話です。でも野鳥を飼うのは違法でしたね(笑) 郁子
今年の初句会で見事トップ賞を獲得した郁子さんらしいかわいらしい句。昭和の光景かと思いきや、最近、実際に住宅地の駐車場でけんぱの輪を見たそうです。実景をそのまますっと作れた時、多くの方の共感と郷愁を誘いますね。子供たちが去ったあとの輪の中で今度は雀たちが遊びます。
ところで、皆さんの地域では「けんぱ」のことをなんと言いますか?私が子供の頃過ごした大阪北摂地方では「けんけんぱ」と言って地面に〇を書いて片足で飛んでいたように思います。「けんけん」「石けり」などと呼ぶ地方もあるようです。懐かしい遊びが現代にも踏襲されているのはなんだか嬉しいですね。
では皆さんからのコメントです。
殿様:子どもたちが地に描いた輪。その輪で遊ぶ雀。童話の世界を描いたような幻想的な句。
紅さん:子供達が遊んだけんけんぱの跡でしょう。懐かしい面白い句ですね。
能登さん:古き良き時代を感じる。
千香子さん:寒い中元気に遊んでした子どもと、子供がいなくなって遊んでいる雀と
可愛らしいすがたが重なって楽しくなりました。
須美さん:なんとも可愛らしい句。小さい頃見た様な。
晴代さん:子供と雀の関係がほほえましい。
★★★
「けんぱの輪」という懐かしい情景とかわいらしい雀の取り合わせが見事なトップ賞でした。ちなみに郁子さんは2015年の初句会で
無秩序が秩序となりて初雀
という俳句を作っておられます。同じ作者とは思えない思慮深い句。観念句から写生句まで懐の深さを感じました。
遅足さんが当時、この句について「世界は混沌に始まり、秩序が生まれていく不思議。初雀に、そんな自然の摂理を感じ取ったのでしょうか?」というブログを書かれています。(2015年1月28日)
そして、その時の句会で佐保子さんが
寒雀手毬のごとく飛び跳ぬる
という句を作っておられ高得点を獲得されています。7年前のブログも今読んでみるととても懐かしいです。よかったら皆さんも覗いてみてください。 麗子
初句会の結果はご覧のようになりました。題詠は郁子さん、自由題は亜子さんが見事、今年の初トップでした!!おめでとうございました。今年もこの575の会からどんな俳句が生まれるのか楽しみですね。
題詠 「寒雀」2022.1月
①屋根神の高さに跳ぶや寒雀 (亜子)能登 麗子 遅足 等
②子雀よ吾と学べや入試間近か (等)泉
③首すくめねぐら思案か寒雀 (結宇)
④寒雀小首かしげて寄り添えり (麗子)能登 等 亜子
⑤糠まけば風の中から寒雀 (千香子)竹葉 郁子 須美 晴代
⑥初雀弾む語らひ弾む枝 (竹葉)須美 亜子
⑦この世からすこしはみ出て初すずめ(遅足)殿 紅 麗子 結宇 佐保子
⑧寒雀夕日浴ぶ屋根かさこそと (泉)竹葉 郁子
➈寒雀パン撒く人に群をなす (佐保子)
⑩宿もとめ 我が庭来たり 寒雀 (殿)紅
⑪寒雀舌切られるな早よ食べよ (須美)
⑫けんぱの輪残り遊ぶや寒雀 (郁子)殿 紅 能登 麗子 佐保子 千香子 須美 晴代
⑬数減らし辛き世を生く寒雀(能登)結宇 遅足 佐保子 千香子 泉 晴代
⑭主(あるじ)なき 杖にとまりて 寒雀 (紅)殿 結宇 遅足 千香子 等
⑮寒雀むれてついばむ目地の草 (晴代)竹葉 郁子 泉 亜子
自由題
①鐘の音心新たに初昔 (泉)竹葉 麗子 遅足 亜子
②独り居の花一輪の淑気かな (亜子)能登 竹葉 麗子 郁子 遅足 佐保子 須美 等 晴代
③言祝ぎつつ屠蘇にみたての赤ワイン (晴代)殿 紅 郁子
④初明かり餅かずきそふ声遠し (郁子)佐保子 泉
⑤初市の 瞳哀しき 仔牛かな(紅)殿 佐保子 千香子 須美 等
⑥太陽の子を抱き咲く冬牡丹 (等)結宇 千香子 須美 泉
⑦病めること久しくなりぬ夫傘寿 (佐保子)遅足 等 亜子
⑧冬晴や塑像のごとく園の虎 (千香子)泉 晴代
➈寒参り点呼整列石の兵 (結宇)麗子 亜子
⑩寒月の研ぎ澄まされた細さかな (麗子)殿 紅 能登 郁子 千香子
⑪月冴ゆる弱き心を嗜める (須美)結宇
⑫寒に入り輝き近し友の星 (竹葉)結宇
⑬妖精の 睫毛震えし 雪月夜 (殿)紅 能登
⑭風の花幼なじみの訃の報せ (能登)竹葉 晴代
雀はすでに9割が減少したといわれています。種の絶滅と共に歳時記からも消え去るのでしょう。「首すくめ ねぐら思案か 寒雀」 「この世から すこしはみ出て 初すずめ」「数減らし 辛き世を生く 寒雀」などの秀句も雀への哀悼と解釈できるかもしれません。<殿>
今年の初句会の兼題は「寒雀」あるいは「初雀」でした。どの雀の囀りがにぎやかでしょうか?明日をお楽しみに。
題詠 「寒雀」
① 屋根神の高さに跳ぶや寒雀
② 子雀よ吾と学べや入試間近か
③ 首すくめねぐら思案か寒雀
④ 寒雀小首かしげて寄り添えり
⑤ 糠まけば風の中から寒雀
⑥ 初雀弾む語らひ弾む枝
⑦ この世からすこしはみ出て初すずめ
⑧ 寒雀夕日浴ぶ屋根かさこそと
⑨ 寒雀パン撒く人に群をなす
⑩ 宿もとめ 我が庭来たり 寒雀
⑪ 寒雀舌切られるな早よ食べよ
⑫ けんぱの輪残り遊ぶや寒雀
⑬ 数減らし辛き世を生く寒雀
⑭ 主(あるじ)なき 杖にとまりて 寒雀
⑮ 寒雀むれてついばむ目地の草
自由題
① 鐘の音心新たに初昔
② 独り居の花一輪の淑気かな
③ 言祝ぎつつ屠蘇にみたての赤ワイン
④ 初明かり餅かずきそふ声遠し
⑤ 初市の 瞳哀しき 仔牛かな
⑥ 太陽の子を抱き咲く冬牡丹
⑦ 病めること久しくなりぬ夫傘寿
⑧ 冬晴や塑像のごとく園の虎
⑨ 寒参り点呼整列石の兵
⑩ 寒月の研ぎ澄まされた細さかな
⑪ 月冴ゆる弱き心を嗜める
⑫ 寒に入り輝き近し友の星
⑬ 妖精の 睫毛震えし 雪月夜
⑭ 風の花幼なじみの訃の報せ