鵙<もず>といえば、捕食した餌を小枝などに突き刺しておく「速贄」<はやなえ>という習性で知られています。実は、速贄する理由について鳥類学の教授に尋ねたことがあります。しかし、餌の備蓄、生息域<テリトリー>の目印など諸説あるとの弁。また、速贄を見かけるのは秋が深まってからという印象があります。しかし、関東地方で鵙が山地から降りてくるのはまだ残暑厳しい9月頃。落葉していないので速贄が目立たないだけとのこと。ちなみに、独特の鵙の高鳴き。拙句のように日没を惜しんでのことではなくテリトリー誇示との由。
京都に近い琵琶湖。古名は「淡海」<あわうみ> 浜名湖は遠いので「遠淡海> <とおあわうみ>といわれました。新幹線から眺める鳥居のある海浜は馴染みの風景でしょう。かっての浜名湖は川に沿ったいくつかの淡水湖だったのですが、戦国時代 15世紀の地震により海と繋がり塩分の混じる汽水湖となりました。「遠淡海」と呼称した万葉集は7世紀なので当時は琵琶湖と同じ淡水湖だったのでしょう。ちなみに、現在の浜名湖は堆積物と異常気象により陸地化が進んでいます。将来はいくつかの淡水湖が生まれ原始の姿に戻るのかもしれません。
皆それぞれの秋日和、寄せられたコメントです。
等さん:夏が終わり冬の寒い季節に向かう、一人住まいの老人の淋しさが、“鍋の焦げを取る“と言う具体的な言葉で良く表現されています。
結宇さん:いかにも独り身の生活感ですね。どうみても男所帯と思いたくなりますが、どうでしょう。
作者は女性でしたね。ほかに晴代さん、私も一票投じました。
最愛のパートナーである旦那さまを亡くされ、一人暮らしの亜子さん。介護中は、飲み込みやすさを考え食事つくりにとても気を使うとおっしゃっていました。
「そんなに頑張らずとも」とご本人の身体のほうを心配したこともありましたが、今はご自分のための食事つくり。
ふと物思い、鍋を焦げ付かせたことがあったかもしれませんね。一人暮らしの寂しさも感じますが、
苦笑しながらも一心不乱に焦げをカリカリとこそげ落とす作業は、明日に向かっていく!という強さと明るさを私は感じました。
「秋日和」という季語との取り合わせかもしれません。
作者は5年前
まず薬缶磨いて老いの年用意
という句を作っています。(2016.12)
大掃除をして新年を迎えるため、まず手始めにやかんを磨くという大先輩の暮らしぶりと矜持におおいに感銘をうけ
麗子さんと私はすぐに真似をしたのを覚えています。私に関しては二年目くらいに挫折してしまいましたが・・
女はいつも手を動かしているのです。憂いや哀しみのなかにあろうとも。 (ひとにもよるかな?) 郁子
今週いっぱい秋日和が続きそうです。秋の空が澄み渡り、今日のように晴れて穏やかなお天気の日には自転車に乗りたくなりますね。枕木の残る自転車道。廃線となって新たな利用方法になったのでしょう。秋日和にさわやかに自転車をこぐ疾走感や解放感が感じられます。とても気持ちのいい句だと思いました。
頂いたコメントです。
等さん:鉄道を撤去したあと、枕木が積んである自転車道を、秋風とともに行く自転車の群れ、爽やかな秋風景です。
亜子さん:◎の句。枕木が残るのはかつて単線が走っていた線路。今は廃線となり自転車道になっている。山が迫る周りの田園風景なども目に見えるよう。
★★★
ところで「枕木」ってなんだか心惹かれる言葉ですね。規則正しく一定の間隔で敷かれ、レールを固定する力持ち。ガタンコドンという音も枕木のなせる技でしょうか?郷愁に通じるようなどこか懐かしい存在。廃線となっても残る落ち着き。過疎化の中、そんな枕木の存在と自転車道の爽快感が秋日和にマッチしたのだと思います。
最後に枕木の俳句をひとつご紹介します。
山国の枕木きしむ秋の声 伊藤翠
信州での研修会。昼休みに学生たちと散策します。コロナにより彼らの就職は不透明。きっと心は揺れ動いているでしょう。金色の稲穂に秋の風が吹きます。
玄宗皇帝の愛した絶世の美女「楊貴妃」。彼女が愛飲した「桂花陳酒」は金木犀の花をワインに漬けて作ります。そのため、楊貴妃は金木犀の香りがしたといわれています。秋の夜の金木犀の甘い香り。しかし、若くして命を絶った楊貴妃のように金木犀の花も3日ほどで散ってしまうとの由。
月夜烏<つきよがらす> 月の夜に遊ぶ烏と月の夜に遊ぶ人。ふたつの意味があります。ラプソディ 狂詩曲という意。ところで、やや収束した感のあるコロナ。都内の飲食街も賑やかさを取り戻しつつあります。酔客たちの宴。秋の夜が深まります。下記サイトは小澤征爾によるジョージ・ガーシュウインの名曲「ラプソディ・インブルー」https://www.youtube.com/watch?v=Z5w0tnbtnXY
Moonlit Night Crow <Tsukiyogarasu> A crow playing on a moonlit night and a person playing on a moonlit night. It has two meanings. By the way, the corona has a slightly converged feeling. The restaurants in Tokyo are also regaining their liveliness. Feast of drunk people. The autumn night deepens. The following site is George Garshwin's masterpiece "Rhapsody in Blue" by Seiji Ozawa. https://www.youtube.com/watch?v=Z5w0tnbtnXY
この句も10月トップ賞に輝きました。
まだ片手で自分の歳を表せる園児たち、そのうちのほぼ二年間をコロナ禍にさらされているとしたら、
大人たちはマスクをしている生き物だと思っているのではないでしょうか。マスクをとるのを嫌がる子どもも多いと聞きます。
保育園の先生は情操教育に苦労されているかもしれません。
皆さまからのコメントです。
竹葉さん:「離れ寄り」で園児が列から離れたりまた戻ったりの楽しげな景色が浮かぶ秋日和らしい句だと思います。
麗子さん: かわいい園児がつかず離れず通う様子。彼らにソーシャルディスタンスは難しいですね。
実際に目にしないと出来ない句だと思いました。
千香子さん: 離れ寄り が園児たちの行動をうまくとらえていると思いました。
亜子さん: 幼児が離れたり並んだり、のんびりと遠足かお散歩か。秋日和ならではの光景。
佐保子さん: 小さい子たちはほんとかわいい。二人ずつ手をつなぎ、公園までの散歩かな?
かわいい声まで、聞こえます。先生のはーいという呼びかけも。
須美さん: 園児の列の様子が良い。
能登さん: 園児の列は規則正しくはなりませんね。秋日和との組み合わせがいい。
「離れ寄り」だけで雄弁に園児のいる景を描きだしています。確かに音も想像できますね。
舌足らずなおしゃべり、先生の声かけ・・にぎやかな声が高く澄んだ秋の空に上がっていったことでしょう。
先日、逆走車と鉢合わせしました。幸いにも事なきを得ましたが
こういう可愛らしい列には、間違っても車を突っ込ませてはいけません!!みんなで見守りたい宝ものです。 郁子
トップ賞に輝いた竹葉さんの圧巻の一句。投句頂いた時、一読してとてもさわやかないい句だな~と思いました。まさに秋日和。千葉にお住まいの竹葉さん。「カタカナはあまり使わない方がいいそうですが、キロを粁にすると全部漢字になって重々しくなる気がしてカタカナにしました。千葉から富士山が見えるくらいだから百キロでは足りないかしら。。」とメールをくださっていました。
観覧車から見渡せるどこまでも遠くまでも澄み切った青空。百キロという具体的な数字も効いていると思いました。とてもクリアな一句。秋日和にふさわしいと思いました。そして、久しぶりに観覧車に乗ってみたくなりました。
では皆様からのコメントです。
殿さま:大気の澄みきった状態で見える水平線は約40km。地球は丸いのでその先は見えなくなるとの由。「視界百キロ」作者には地球の果てまで見える秋の好日だったのでしょう。
亜子さん:百キロというのが大げさですが、かなり遠いところまで見渡せて秋日和によく合う。百粁と漢字でもよかったかも知れません。
晴代さん:視界100キロが秋日和を言い得て妙です。
郁子さん:3段切れというのでしょうか。それでもスパっと言い切る気持ちよさが秋日和にぴったりです。
千香子:視界100キロですか?澄んだ空気の様子がつたわってきます。
泉さん:空が澄み渡り、遠くまでよく見える様子がわかる。
能登さん:これぞ秋日和の風景、納得です。
★★★
簡単な言葉でも情景が映像化できる。これぞ、「直しはありません!!」という夏井先生の声が聞こえて来そうです。
そうそう、今朝明け方ラジオを聞いていたら5時25分ごろ国際宇宙ステーション「きぼう」が名古屋上空を通過するとのこと。急いでダウンを着込み、まだ暗いベランダにでて空を見上げると。。。
南西の空から明るく光る物体が近づいて来るのが見えました!!「きぼう」は地上400キロの上空を一周90分というスピードで地球の周りをまわっているのです。「星出宇宙飛行士は今あそこにいるんだな~」と不思議な感覚。朝からとても嬉しいひと時でした。竹葉さんにならって一句。
「きぼう」来る400キロの秋の暁 麗子
2021,10月「秋日和」
- 玉子焼きおにぎりつくり秋日和 (佐保子)
- 秋日和弁当ひろげサラリーマン (須美) 泉
- 鍋の焦げ剥ぐや独居の秋日和 (亜子)結宇 等 晴代 郁子
- ビアグラス泡ごしの君秋日和 (能登)結宇 佐保子
- 秋日和縁側遠き夢の中 (泉 ) 竹葉 晴代
- 秋日和とは全天候型むらさきのこと (遅足)
- 秋日和枕木残る自転車道 (千香子)等 麗子 亜子
- 折り紙で つくる猫の背 秋日和 (殿)紅 遅足 須美
- 鷹匠(タカジョウ)目差し似て来る秋日和 (結宇) 遅足
- 恵那の里空青くして秋日和 (麗子) 泉
- 秋日和甘き味噌香の妻籠宿 (郁子) 竹葉 千香子 佐保子 須美 能登
- 秋入日空は紅(くれ)なゐ穂高立つ (等) 紅
- 観覧車視界百キロ秋日和 (竹葉) 殿 紅 麗子 晴代 千香子 亜子 泉 郁子 能登
- 乳母車 押す影長く 秋日和 (紅) 殿 結宇 等
- 離れ寄り園児の列や秋日和 (晴代) 竹葉 麗子 千香子 亜子 遅足 佐保子 須美 郁子 能登
自由題
- 大和尚説経さなか大くしゃみ (等) 千香子 能登
- 六地蔵どの吾(ア)に呉れる彼岸花 (結宇) 須美
- 微笑みの遺影の翳や秋灯 (亜子) 等 麗子
- ハロウィンの 魔女かも知れぬ 君来たり (殿) 紅 佐保子 泉 能登
- 朝一番金木犀の香をかげり (佐保子) 千香子
- ひとひごと朝顔の花咲き続け (麗子) 竹葉 郁子
- 目白来て会話始まり朝の窓 (千香子) 晴代 亜子 佐保子 泉
- 夕暮れやねぐら求めるサギの群れ (泉)
- 来い来いとただただ揺れる芒かな (竹葉) 殿 結宇 紅 麗子 亜子 遅足 須美
- 秋宵や 信濃の蒼に 溶けてゆく (紅) 殿 麗子
- 上弦の月は横向き入日追ひ (郁子) 結宇 竹葉
- 眼鏡かけ小骨気にして秋刀魚飯 (須美) 結宇 等 紅 晴代 亜子 佐保子 泉 郁子 能登
- 拭きおえた窓近々と新松子 (晴代) 殿 等 千香子 遅足 須美 竹葉
- 月山に転生を期す草紅葉 (能登) 晴代 遅足 郁子
兼題トップ賞は、同票で竹葉さんと晴代さん
自由題は、須美さんとなりました。おめでとうございます!!
竹葉さんと晴代さんは兼題、自由題とも高得点でした。素晴らしい
気持ちのいい秋日和の句が集まりました。結果は明日発表の予定です。お楽しみに!
2021,10月「秋日和」
① 玉子焼きおにぎりつくり秋日和
② 秋日和弁当ひろげサラリーマン
③ 鍋の焦げ剥ぐや独居の秋日和
④ ビアグラス泡ごしの君秋日和
⑤ 秋日和縁側遠き夢の中
⑥ 秋日和とは全天候型むらさきのこと
⑦ 秋日和枕木残る自転車道
⑧ 折り紙で つくる猫の背 秋日和
⑨ 鷹匠(タカジョウ)目差し似て来る秋日和
⑩ 恵那の里空青くして秋日和
⑪ 秋日和甘き味噌香の妻籠宿
⑫ 秋入日空は紅(くれ)なゐ穂高立つ
⑬ 観覧車視界百キロ秋日和
⑭ 乳母車 押す影長く 秋日和
⑮ 離れ寄り園児の列や秋日和
自由題
① 大和尚説経さなか大くしゃみ
② 六地蔵どの吾(ア)に呉れる彼岸花
③ 微笑みの遺影の翳や秋灯
④ ハロウィンの 魔女かも知れぬ 君来たり
⑤ 朝一番金木犀の香をかげり
⑥ ひとひごと朝顔の花咲き続け
⑦ 目白来て会話始まり朝の窓
⑧ 夕暮れやねぐら求めるサギの群れ
⑨ 来い来いとただただ揺れる芒かな
⑩ 秋宵や 信濃の蒼に 溶けてゆく
⑪ 上弦の月は横向き入日追ひ
⑫ 眼鏡かけ小骨気にして秋刀魚飯
⑬ 拭きおえた窓近々と新松子
⑭ 月山に転生を期す草紅葉
大学がリモート講義となり、鎌倉、青山、荘川、の多拠点生活をしています。ところで、鎌倉と江ノ島は都内小学校における遠足地の定番。当時は、東急から譲渡された通称「青虫」という車両により4両編成となった時代。曲線の多い軌道につり革が大きく揺れた記憶があります。ちなみに、藤沢駅発の最終列車は22時52分。鎌倉着は30分後になります。料金は310円で昔とあまり変わってない印象。鎌倉に向かう最終の江ノ電。秋の海を目指します。
渋谷駅にスタンウェーのストリートピアノがあるとの由。機会を得たので弾いてみました。気がつけば、楽器ケースを抱えた二人の女性が見ています。あきらかに音大生。下手なクラシックなど弾けません。曲目をジャズに変えた秋日和。
雨続きの夏 いつまでも夏日の続く暑い秋・・俳句も、季語・季題に違和感を感じることが増えました。
もともと季語は旧暦に基づくもので、実感と多少のずれは感じたものの、気候変動や異常気象の中で
この先さらに違和感はひろがるのでしょうか。
皆さまからの選句コメントです。
殿様: 作者の視点に惹かれました。ピアノは湿気により音程が変わります。今夏は雨が多く調律師の苦労を句にされたのでしょう。
(ところで、句会の狗子とはピアノ仲間。某駅のスタンウェーを弾きにいこうと計画しているのですが)
等さん: 本当に今年の夏は異常な暑さでした。湿度の高さといい、楽器の調律師さんも身にしみて感じたことでしょう。
紅さん: 私も少しピアノを弾きますが、こんな風に長雨を捉える素晴らしい感性だと思います。
我が家にピアノはなくちょっとわかりませんが、
ピアノの気持ちや声が、調律師さんにはしっかり届くのでしょうね。
自由題では、この句もたくさん票を集めました。しっかり観察しています。
新生姜 真白き肌に 紅をさす 須美
能登さん: 色っぽい新生姜。発見です。
紅さん:紅をさした女性が浮かびます。綺麗な句ですね。
殿様:擬人化の模範句といっても過言ではないでしょう。中七から下五で嫋やかな女性を感じます。
推敲を重ねたのでしょうか。一語一句が光ります。
亜子さん:新生姜を擬人化。新生姜はまるで女性を思わせるような白い肌。
はっとするような紅色が入っている。まるで頬紅をさしたかのよう。
以前、義母から新生姜を甘辛く煮た常備菜を教えてもらいました。お手軽な箸休めになり重宝したのですが、
最近は代謝を上げてアンチエイジングになるとかで女性にも人気の食材です。甘酢につけて手軽にお寿司屋さんのようなガリもできます。
少々値段がお高くなったようで残念です。 郁子
自由題でトップ賞に輝いた殿様の句。いつもブログで美しい写真を投稿して下さっています。ありがとうございます。羊の群れのような白い綿状の雲の群れ。そのすき間からは青い空も見えるようです。そして雲が消えるとそこには壮大な青い空。果てしない宇宙に吸い込まれるような、宇宙と一体化したような感じでしょうか?
殿様からは「秋の日は釣瓶落とし。
瞬く間にひつじ雲が消え夜空が拡がります。」
夕暮れから夜空へのマジックアワーの一コマでした。では皆様のコメントです。
泉さん:秋の空は高くて、宇宙を感じる。
結宇さん:青空に青一色の宇宙を見るという事でしょうkか。 すっきりした秋を思います。
紅さん:壮大で綺麗な句ですね。
亜子さん:◎の句。ひつじ雲は季語ではないが十分よくわかる。青空を宇宙と見立て思い切って詠んだところがすばらしい。
須美さん:宇宙が見えるが効いている。羊雲を群れと言うところも楽しい。
★★★
今朝、明け方の青空にはひつじ雲がでていました。今はすっかり消えて真っ青な秋の空。この地球も私たち一人ひとりも宇宙の一員ですね。いい一日になりますように。
来月の投句も揃ってきました。
さまざまな投句が揃い秋日和 麗子