絵本のような装丁のこの本、背表紙には、「和田誠+唱」となっているのに、表紙には「和田唱+誠」となっている。
和田誠氏は、2019年に亡くなったが、あのほのぼのした感じの絵を描くイラストレーターだった。
和田唱氏は、その長男で、ロックバンド・TRICERATOPSのボーカルである。
表紙を見て分かるが、この本は、息子の唱氏が小さいころ描いた絵がたくさん載っている。
親馬鹿の和田誠氏が、それらの絵を丁寧に(?)取っておいて、雑誌「家庭画報」誌の1981年1月号から12月号まで1年間連載したものをまとめて本に再構成したものである。
最初は、1983年秋に講談社から出版されたようだが、2017年の秋に、復刊ドットコムから新規要素を加えた新装版として復刊されたものである。
大半は、息子唱さんが描いた絵で、ページが埋め尽くされている。
そこに、父誠氏の短いひと言が添えられていて、何ページかに1ページはエッセイがある。
そこに描きたすような形で、誠氏のいつもながらの絵が入っていることもある。
こんなふうに、子どもの描いた絵について、ひと言や文章をつけるというのは、まさに親馬鹿のなせる業だと思う。
連載の期間中、子どもの唱さんは4歳から5歳という年齢であったが、なかなかうまい絵を描くものだ。
もっとも、うまいといっても全く写実的でも何でもない。
まさに、子どもの絵そのものだ。
だが、単純に子どもの感性で描かれた絵たちが、非常に生き生きしている。
子どもたちは、小さいころは、うまいへたなんて考えずに、描きたいから描いている。
唱さんもそうだったのだろう。
だから、絵自体が生き生きしているのだなあ、と思う。
添えられた、父誠氏のひと言ひと言に、目を細めてわが子を見ている親の温かさが感じられ、あったかいものが伝わってきた。
誠氏の妻はあの料理研究家の平野レミ氏ということで、唱さんは彼女を母に持つわけだが、本書では登場してもそんなに出番は多くない。
だが、彼女のエプロンのデザインを唱さんが描いたこともあったという話も披露されている。
そして、復刊されたこの本のもう一つの見どころは、裏表紙の方から読むようになっている、和田誠-和田唱の親子対談が掲載されている。
その対談は、2016年に行われたものらしいが、音楽や好みのレコードジャケットなどについても語られている。
親子のはずなのに、誠氏の個性なのか、2人がまるで年の近い友だちのような感じで対談が進んでいるのが何とも言えず、好ましい。
互いに「芸術家」であることをみとめ、互いに対するリスペクトがあるのだな、という感覚を抱いた。
わが家にも少しばかり、わが子たちが幼児の頃描いた絵が残っている。
やはり私も親馬鹿だったことは、間違いないな、と40年近く前を思い起こしたのだった。