近所の工場の道ばた、コンクリートの隙間に、この植物が生え、今白い花をたくさん咲かせている。
白い花を咲かせている姿は、明らかに雑草なのだが、ハコベでもタネツケバナでもナズナでもない。
その名前を「オランダミミナグサ」という。
20年ほど前に、一緒の職場に勤めた人が、自慢気に言っていたのが、なぜか耳に残っている。
「オレ、雑草の中で、オランダミミナグサだけは、分かるんですよ。」
…植物に関して決して詳しいとは言えない彼が、なぜオランダミミナグサだけは分かるようになったのかについては、聴き洩らしたのか忘れたのか、定かでない。
だが、何年たってもこの草を見ると、その人のことを思い出す。
そして同時に、植物について詳しくなかった彼が正しく記憶できたくらいだから、私も忘れないようにしよう、なんて対抗意識(?)をもったせいか、オランダミミナグサの名をもつ草について、私もしっかり分かるようになった。
オランダミミナグサというのだから、ヨーロッパ原産の帰化植物なのだろうと思った。
そして、「ミミナグサ」は、最初に聞いたときには「耳なし芳一」を連想し、「耳無草」かな?と思ったのだが、ちょっと違和感があった。
その後、山で見た高山植物に、葉の形がうさぎに似ていることから「ウサギギク」という名がついている植物があることを知ってから、気がついた。
「ミミナグサ」は、「耳菜草」ではないか?と。
これも、葉の形が動物の耳に似ているせいでついた名なのではないか?と。
後日調べてみたら、
環境適応力や繁殖力の強さから、ほぼ世界じゅうに広がっている小型の越年草です。葉のふわふわした感触や形が、動物の耳を連想させるため、耳菜草という名があります。
と書いてある文章を見つけ、「やっぱり!」と思ったのであった。
葉は動物の耳の形に見え、そして細かい毛も生えている草。
なるほど、「耳菜草」なんだなあ。
白い花も小さくて、よく見ると可愛い。
春の最初に咲く、ハコベ、タネツケバナなどに次いで、同じ色のこのオランダミミナグサの花を見ると、足元から完全に春になったな、と思うのである。