『西郷隆盛紀行』 (文春学藝ライブラリー) 文庫 2014/10/17
橋川 文三 (著) 1 件のカスタマーレビュー
図書館2月の新着
演歌を聴いているところを人に見られたくない気持ちを
西郷を読む時の気持ちにたとえては、やはりいけないなあ、と思わされた一冊。
P29 西郷隆盛と南の島々 島尾敏雄氏との対談
19735年 3月20日 (名瀬市南風荘にて)p100 雑誌『伝統と現代』掲載
↑は、20年の名瀬での生活を切り上げ鹿児島の指宿に引っ越すことが決まった直後の対談。
島尾は対談相手の著者の旅の目的であった 流謫地での西郷のイメージをつかむことについて
「私はそのことについては何も知らぬことと同じであった」と付記で述べつつ
しかし、次のようにも述べている。
p90「それは、ああいう偉い英雄でも、そうですよ。西郷がこっちへきてなにかを感じとった。西郷が島から受けた影響ですね。これを誰も本気になって書いた人がいないんです。それは具体的には掴めないから、とても難しいんだけど・・・・。」p90島尾は他にも今読んでも目からうろこの示唆に富んだ指摘をいくつかしている。
本書ではこの対談が一番おもしろく、とくに沖永良部を訪れた際に感じた著者が受けた西郷のイメージは本書全体の鍵になっているとおもう。
函館戦争後の帰郷、明治6年の政変、西南戦争、と西郷の謎の?行動を知るためにも
また、
本書冒頭、内村鑑三の一節「維新史における西郷の役割を余さずに書くことは
維新史の全体を書くこととなるであるだろう」
から、
本書解説の最後「西郷がどんな夢をいだいていたかは、結局、わからずじまいである。(略)西郷の思想それ自体が未完だからなのである。そして、この『西郷隆盛紀行』は、西郷問題、いや、近代日本という問題がまだおわっていないことを伝えるのに、十分成功していると私はおもう。
この2つの指摘のあいだで沖永良部での西郷の一年半の暮らしが、クローズアップされるとすれば、(本書では、他の箇所でも何度かその重要性が指摘されている)
もう、ぜひ一度は沖永良部を訪れてみなくてはと、思わないわけにはいかない。
西郷好きの人のなかにも奄美大島と沖永良部島の違いがよく分からない人も少なくないと思うが
私もその一人かも知れない。地形や江戸期の藩政の違い。音楽の違いなど徳之島との間に
いくつもの境界線があるように思える。
西郷が沖縄に行ったと過程してみるのも面白い。
あまり時間がないので以下、思いつきをメモ風に。
西南戦争に民約論を読みながら参加した宮崎八郎
ルソー問題 ルソー、中江兆民と西郷の類似点
ほかにも何か書くことがあったような・・。