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(投下されて40年たった今もクラスター爆弾はラオスの人々から足を奪っています。そんなラオスの人々のための義足 “flickr”より By Briebanofsky
http://www.flickr.com/photos/41597157@N00/3316796262/)
地味なニュースではありますが、12日、衆院本会議でクラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)の批准案が全会一致で可決されました。
閣議決定時に、3月11日ブログ「クラスター爆弾 日本政府、“異例の早さ”で条約批准・法案成立を目指す」
(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090311)
でも取り上げたように、国際的に独自のアピールをすることが少ない日本としては、異例の速さです。
批准したのはノルウェー、オーストリア、メキシコ、アイルランドなど7カ国で、欧州主要国に先んじる動きとなっていますが、軍縮交渉「オスロ・プロセス」で当初消極的だった日本政府としては、名誉挽回し軍縮分野での存在感を示したい意向です。
****クラスター爆弾:禁止条約の批准案、衆院通過****
不発弾が市民に被害を与えているクラスター爆弾の保有や使用を禁じる「クラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)」の批准案が12日、衆院本会議で全会一致で可決された。
参院でも可決が見込まれており、日本は近く批准する見通し。主要国では最も早い動き。
批准に手間取る各国に影響を与えるとみられる。中曽根弘文外相は、各国に署名するよう働きかけを強め、不発弾処理に協力することに意欲を示した。
同条約は、ノルウェーなど有志国が主導する軍縮交渉「オスロ・プロセス」で議論され、昨年12月に日英仏独など94カ国が署名した。加盟国は現在、96カ国。批准したのはノルウェー、オーストリア、メキシコ、アイルランドなど7カ国。
日本は当初、「安全保障上の懸念」などを理由に条約策定に消極的だったが、欧州諸国が積極姿勢に転じたのを受け方針転換した。
署名後も防衛省や自民党の一部で反発が強く、禁止対象の例外とされる「最新型」のクラスター爆弾への代替を求める声も強かった。しかし、政府は人道的被害を重視したほか、核軍縮を訴える国としてのイメージダウンを懸念。全廃を決めた上で、条約批准案を国会に提出していた。
条約案は参院での承認を受け、国連事務総長あてに文書が寄託され、正式な批准(受諾)手続きが完了する。
条約は30カ国が批准した時点から約半年後に発効。批准国は、発効後8年以内に爆弾を廃棄する義務がある。
今国会には「クラスター爆弾禁止法案」も提出されており、近く審議に入る。【5月12日 毎日】
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もちろん、クラスター爆弾の戦術的位置づけは各国で異なりますので、今回の日本の対応の速さは、そうした実情を背景にしたものではありますが、とにもかくにも近年になく評価できる対応かと思われます。
条約成立に尽力した非政府組織(NGO)や国連の関係者からも、日本の対応に歓迎の声があがっています。
****クラスター爆弾:「素晴らしいニュース」禁止批准衆院通過****
NGOの連合体・クラスター爆弾連合(CMC)のトーマス・ナッシュ氏は「日本の迅速な動きは、クラスター爆弾廃絶への国際的な機運を盛り上げるものだ。日本が今後、被害者支援や不発弾除去への協力でも各国をリードしてくれるよう願っている」と述べた。
また、国連の軍縮関係者は「条約作りの過程で、日本は『全面禁止に消極的だ』と見られたこともあった。その日本が各国をリードする形で批准を進めることは、早期発効をめざす強いシグナルとなる」と、評価した。
NGO「地雷廃絶日本キャンペーン」の内海旬子事務局長は「被害者支援で世界をリードしてほしい」と期待する一方で、在日米軍が保有するクラスター爆弾について「過去に沖縄で実弾演習を行っており、同様の事態が起こらないよう、米軍への働きかけを強めてほしい」と注文した。
また、NGO「日本国際ボランティアセンター」の清水俊弘事務局長は、対人地雷禁止条約(オタワ条約)の批准前に、日本が保有地雷数を明らかにし、廃棄作業も公開したことに触れ、今回も「保有数や廃棄計画の透明化」を行うよう求めた。「日本の対応には世界が注目している。廃棄の情報公開を進め、他の保有国に良い先例を示すべきだ」と話す。【5月12日 毎日】
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3月時点の報道では、条約署名国は近く100カ国を超えて、国連加盟国192カ国の過半数に達するとも報じられていました。
オスロ条約は、米露中など、クラスター爆弾を大量に保有する国が参加していないことが最大の問題点と指摘されています。
しかし、これだけ多くの国々が賛同することで、オスロ条約は「事実上の国際規範」としての効力を発揮し、条約に署名していないクラスター爆弾大量保有国もこれを無視することは難しくなっています。
実際、アメリカ・ロシアにも“変化”が起きていることは3月11日ブログでも紹介したところです。
なお、大量保有国が参加する、もうひとつのクラスター爆弾に関する国際協議の場である特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)は交渉が行き詰っています。
CCWの政府専門家会合が先月14~17日、ジュネーブの国連欧州本部で開かれ、「最後の交渉」という位置づけでしたが、結局合意は得られず、8月に次回会合を開くことだけを決めて閉会しています。【4月19日 毎日】