孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

新型インフルエンザ  日本の反応へ奇異の目 シンガポールでは“あえて感染させろ”との提案

2009-05-27 20:42:55 | 世相

(“flickr”より By Mike Licht, NotionsCapital.com
http://www.flickr.com/photos/notionscapital/3492454645/)

【第一波は峠を越したか・・・】
全世界で100人以上の死者、1万3000人近い感染者を出した新型インフルエンザは、“ひとまず”第一波のピークを過ぎたような感があります。
メキシコ市は21日に制圧宣言を出しました。

****メキシコ市、新型インフル制圧を宣言****
メキシコからの報道によると、新型の豚インフルエンザによるメキシコ国内の死者の4割が集中した首都メキシコ市は21日、「ウイルスは制圧された」と宣言し、警戒レベルを4段階のうち2番目に低い「黄」から、最も低い「緑」に下げた。過去7日間、市内で新たな感染例が出なかったことを理由にした。
メキシコのメディアによると、エブラール市長は「21日からメキシコ市は百%正常化する」と述べた。ただ、学校の念入りな清掃など教育現場での予防措置は7月まで続けるという。

メキシコ保健省によると、21日現在、メキシコで確認された感染者は4008人で、うちメキシコ市が1578人。人口10万人あたり17.8人が感染した計算だ。死者は全国で78人、メキシコ市はうち42%を占める33人。同市は、薬の備蓄や感染予防のため休業した民間企業への補償などで、約45億ペソ(約330億円)を費やしたという。【5月22日 朝日】
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また、アメリカについても、米疾病対策センター(CDC)が“米国での流行が一段落”したことを発表しています。
****米の流行一段落、秋の第2波懸念 新型インフルでCDC*****
米疾病対策センター(CDC)のアン・シュキャット博士は26日の会見で、米国での新型の豚インフルエンザの流行について「注目すべきことや優先すべきことが変わる時期にさしかかっていると思う」と述べた。米国での流行が一段落し、「第2波」が心配される秋に向けた備えに軸足を移しているとの認識を示したものだ。

CDCの25日までのまとめでは、米国内の感染者(推定例を含む)は6764人に達し、入院者も300人以上だが、ニューヨークなどを除き、新たな感染者の増加が鈍り始めたとして同博士は「今後8~10週間は、南半球の状況を見極め、米国での秋の流行への備えを強めるべき時期だ」と述べた。
世界の死者数は世界保健機関(WHO)の26日のまとめでは92人だが、各地の報道や発表を総合するとメキシコ、米国、カナダで死者が増え、計100人に達した模様だ。【5月27日 朝日】
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【パラノイア? 潔癖症?】
日本国内の状況も、感染者が集中した兵庫・大阪は落ち着きを取り戻しているようです。
こうしたなかで、日本の“過剰反応”とも見えるような騒動ぶりを奇異な目で見る論調が、各国から伝わっています。

****「マスクに手洗い、日本は偏執狂」 NYタイムズ神戸発ルポ*****
22日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、新型インフルエンザの流行で日本は混乱状態にあるとの神戸発のルポを掲載し、日本は日ごろから「強迫観念的な清潔さ」を追求し、特に外国発の感染症の流行には「パラノイア(偏執狂)の国」と伝えた。
記事では「他国と同様に感染者の症状は軽度で死者もいないが、日本の対応は危機状態のよう」と述べ、学校閉鎖や日用品の買いだめ、マスクの売り切れ、感染を心配して一切の外出を控える母子の様子を驚き交じりに取り上げている。
また、日本人の潔癖症を「宗教的なまでに学校で手洗いを教え、衛生的な砂場で遊び、下着からボールペンに至るまで抗菌性と推定される」と皮肉を込めて解説し、他国より感染者数が多いのも「より積極的な検査をしているためでは」との専門家の疑念も伝えた。【5月23日 産経】
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“パラノイア”かどうかはともかく、“潔癖症”なところはあるかも。
それと、情報に全国民が一斉に同一方向に過剰なまでに反応するのも、ひとつの国民性なのかも。
北朝鮮の“飛翔体”のときも、地方の役場の職員が慌てふためいて走り回る様には、“そこまで慌てなくても・・・”という感じもしました。
日本経済の落ち込みが大きいのも、輸出依存体質という話だけでなく、“経済危機”という情報への国民の一斉の反応の結果、過剰に弱気な“マインド”が形成されるということがあるのでは・・・とも思えます。
不安感を煽るだけのマスコミの論調にも問題があるのでしょうが。

季節性インフルエンザでは毎年国内だけで数百人規模の死者が出ています。
安全性についての判断や危機管理においては、単に“安全か否か”“危険があるか否か”ではなく、“どの程度のリスクがあるのか?”“対応策をとったときのコストはどれくらいか?”といった“リスクの程度”の量的把握も必要になります。
今回の対応についても、幼稚園・保育園や介護施設の休業による犠牲も相当出ています。
“第2派”への対策を含め、今後の対応についての検討課題があるように思えます。

【シンガポールの“割り切り”】
シンガポールでも、連日TVで日本の「騒ぎぶり」が話題になっているそうですが、現在の弱毒性の段階で感染を国内で敢えて広げることで国民に免疫をもたせ、将来的な強毒性への変異に備えるべき・・・という意見があるとか。

****マーライオンの目 あえて感染させろ!?*****
シンガポールでは、新型インフルエンザ(H1N1型)の感染者がまだ見つかっていないうえ、ウイルスの毒性も、当初言われたほど高くないとされたことで、最初は警戒を強めたものの、最近では一般の人はほとんど気にしていない様子。逆に地元テレビでは連日、日本でのマスク姿があふれる通勤風景や、ネットオークションで防護マスクが50万円で売られているなど、「騒ぎぶり」が取り上げられている。

そんななか、先日、地元紙ストレーツ・タイムズに載った国立神経科学研究所のリー・ウエイ・リン教授の寄稿が話題となった。教授は、「比較的弱い段階のウイルスをシンガポール国内に入れることで人々に感染させ、免疫を作ることはできる。そうすれば、ウイルスが変異し毒性が強まっても集団免疫で大発生を防げる」として、あえて感染させるよう提案したのだ。
新型インフルエンザへの警戒レベルを下げたとはいえ、さすがにこれには当局も驚いたようで、保健省の医療サービス部長が早速、紙面で「かつては子供に水疱瘡(ぼうそう)の免疫をつけるため、感染した子供と一緒に過ごさせることもあったが、H1N1ウイルスは水疱瘡ウイルスとは違う。わざと感染させるのは間違いだ」とあわてて反論した。
かつて新型肺炎(SARS)で多くの犠牲者を出しただけに当局者にすれば、国民と一緒に日本の騒動を面白がっているわけにいかないようだ。【5月27日 産経】
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さすがに政府は否定しているようですが、“シンガポールならありえるかも・・・”という印象もあります。
今回の新型インフルエンザ対策でも、4月30日には、過去1週間にメキシコに渡航歴のある入国者や帰国者について、症状がなくても自宅やホテルに1週間隔離する措置を導入しています。
全く話は違いますが、世界的金融危機・不況のなかでの外国人労働者の解雇について“こういうときのために外国人労働者を調整弁として入れているのだから、調整のため解雇することのどこが悪い”と政府トップが公言して憚らない国でもあります。

確かに、合理的と言えば言えなくもないのですが、“そこまでやるかな・・・”と引いてしまうところもあります。
強毒性への変異へ備えることが重要課題であることは間違いないのですが・・・。
シンガポールは同じアジアの国ですが、情緒的に右往左往する日本とは異質の“割り切り”みたいなものがあります。
個人的には、あまり馴染めないところですが。

そんなシンガポールでも27日、最初の感染者が確認されました。

*****シンガポールで初の新型インフルエンザ感染を確認*****
シンガポール政府は27日、同国で22歳の女性が新型インフルエンザに感染していることが判明したと発表した。シンガポールで感染例が確認されたのは初めて。【5月27日 ロイター】
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リン教授の提案が国民的関心を呼ぶのでしょうか。

コメント
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