孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

スーダン  南部独立を問う住民投票に高まる緊張

2010-12-12 20:00:00 | 国際情勢

(南部スーダン自治政府の首都ジュバで住民投票を支持する民衆 すでに独立したような喜びようですが・・・ “flickr”より By BenedicteDesrus http://www.flickr.com/photos/benedictedesrus02/5249474626/

【「投票日の先延ばし」の動き
11月11日ブログ「スーダン 南部独立への動きにみる“国際開発援助の限界”」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20101111)でも取り上げたように、アフリカ・スーダンの南部独立を問う住民投票が来年1月9日に迫ってきています。

スーダンではアラブ系でイスラム教徒中心の政府が80年代、キリスト教徒や土着宗教中心の南部にもイスラム法を導入しようとしたことなどを機に内戦に突入。政府と南部の主要勢力「スーダン人民解放運動」(SPLM)が05年に「包括和平合意」(CPA)を結び内戦は一応の終結しましたが、この間の約20年間で推定200万人が死亡したと言われています。

「包括和平合意」(CPA)では、南部出身者の住民投票より南部独立を決定することとされており、その投票予定日が来年1月9日という訳です。
しかし、当然ながら北部中心の統一政府・バシル大統領側は南部独立には消極的で、南北境界にある石油産出地域であるアビエイ地区を巡る線引きが不明確なこともあって、「南北境界を画定しないまま住民投票を実施すれば再び内戦になる」と投票延期の動きを見せています。

これに対し、投票を実施すれば「独立」の結果がでることが確実な南部側は、予定通りの投票実施を強く求めており、投票実施に向けた南部を後押しするアメリカなどの国際圧力も強まっており、両者の間での緊張が高まっています。

****スーダン:分離独立住民投票めぐり南部と北部で緊張高まる****
スーダンで来年1月9日に予定されている南部の分離独立の是非を問う住民投票を巡り、独立を目指す南部の政治勢力と「独立阻止」を狙う中央政府(北部)の間で緊張が高まっている。
投票実務を担う住民投票管理委員会が「投票日の先延ばし」を示唆したことに対し、南部の独立推進派が「意図的な遅延だ」と猛反発。住民投票が実際に先送りとなれば、混乱は必至の情勢だ。

同国では、政府が83年にイスラム法を導入し、キリスト教徒主体の南部が反発して内戦が始まった。内戦は05年の包括和平合意で終結し、この時に住民投票が約束された。南部には現在、旧反政府勢力「スーダン人民解放運動」が主導する自治政府が存在し、住民投票による独立承認を目指している。

投票の有資格者は推計約600万人おり、投票管理委は当初、先月15日~今月1日を有権者登録期間としていた。しかし同委は先月26日、「技術的な問題の発生」を理由に登録期間を今月8日まで延長した。同日までに約300万人が登録したとみられるが、同委は登録締め切り前の2日に「投票日の3週間先延ばし」を決定するようバシル大統領に要請する意向を示唆した。
これに対し、南部の自治政府側は「独立阻止を目指す政府の投票引き延ばし」と反発。予定通り1月9日に投票を強行する構えを見せており、大統領が投票先延ばしを決定するかが焦点になっている。

南部のユニティ州では今月2日、自治政府兵士や住民が乗った車が何者かに襲撃されて12人が死亡するなど暴力事件が相次いでいる。自治政府側は「政府が情勢を混乱させようと事件を起こしている」と非難し、政府への不信感は頂点に達している。
南部は国家財政の大半を生み出す原油の産地であるため、北部に拠点を置く中央政府は南部の独立に消極的。今回の住民投票を巡っては、内戦中から南部側を支援してきた米国が先月、「予定通りの実施」と「結果受け入れ」を条件に、スーダン政府に「テロ支援国家指定解除手続きの開始」をちらつかせるなど、実施を後押しする国外の圧力も強まりつつある。【12月11日 毎日】
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内戦再開の危機が現実化
バシル大統領はダルフール紛争の責任を問われて国際刑事裁判所 (ICC) から逮捕状が出ている状況で、国際的な評価は最悪です。
ただ、南部が独立してうまくいくか・・・ということに関しては、11月11日ブログでも取り上げたように、外国の援助に頼りながら国造りの準備が進んでいない現状からその将来に大きな懸念も持たれています。

南部の独立国家としての将来には懸念はありますが、ここまできて住民投票をやらなければ内戦再開は必至と思われます。
バシル大統領側が投票を実施するのか、実施してその結果を受け入れるのか・・・は、以前から皆が疑問に感じていた問題でしたが、いよいよその期限が目前に迫ってきて、危機が現実のものとなってきています。


コメント
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