(「平和に向かって 選挙に向かって 速く! 速く! 速く!」 コートジボワールの最大都市アビジャンのあちこちに2年前に建てられた選挙キャンペーンポスター それから2年、ようやく大統領選挙が実現しましたが、平和は遠いようにも思われます。 “flickr”より By mspat64
http://www.flickr.com/photos/mspat64/4910768543/ )
【「イボワールの奇跡」から内戦へ】
コートジボワール・・・・と言っても、正直なところ場所が思い浮かびません。
国名の意味でもある「象牙海岸」と言われると、「ああ、アフリカのガーナとかあるあたりか・・・」といった感じです。正確には西アフリカのガーナとリベリア・ギニアに挟まれた大西洋に面する国です
「象牙海岸」の名前からもわかるように、かつてはヨーロッパ諸国が象牙や奴隷の「交易」にやってきた地域で、フランス植民地となっていた国です。
1960年に他の多くのアフリカ諸国と同様に正式独立。
ボワニ大統領のもとで、親西側の開放政策が採られ、1960年代から1970年代にかけて年平均8パーセントの驚異的な経済成長を遂げ、その発展は「イボワールの奇跡」と呼ばれたそうです。【ウィキペディアより】
90年には複数候補者による大統領選挙も実施されるようになりましたが、93年ボワニ大統領が死去してからは、クーデターと内戦・政治闘争の絶えない国情になっています。旧宗主国フランスも軍が実力行使するなど深くかかわっています。
【「2人の大統領」】
そのコートジボワールで、10月31日、内戦終結後の和平プロセスの停滞から再三延期されていた大統領選挙が14人が立候補し行われました。そして11月28日には現職のバボ(バクボ)大統領と野党を率いるワタラ元首相の上位2人による決選投票が実施されましたが、両者が大統領当選を宣言する混乱に陥っています。
****「2人の大統領」が就任、混迷極めるコートジボワール*****
前週28日の大統領選決選投票を受け、政情が混乱しているコートジボワールで4日、現職のローラン・バグボ大統領と、対立候補のアルサン・ワタラ元首相がともに就任宣誓した。
決選投票の結果については2日に独立選挙管理委員会がワタラ氏の当選を発表したが、最終結果を認定する憲法評議会が、ワタラ氏の地盤である北部で選挙不正があったとして一部結果を無効にし、現職バグボ大統領が当選したと発表した。同評議会はバグボ大統領寄りとされる。
国連、欧州連合、アフリカ連合(AU)など国際社会は、選挙委員会が発表したワタラ氏の当選を認め、これを受け入れるようバグボ氏に求めているが、バグボ氏は大統領府で支持者を前にした「宣誓」後の演説で「このところ重大な内政干渉がみられる。私はわが国の主権を守る任にあり、その点について交渉するつもりはない」と述べ、退く考えはないと明言した。
一方、ワタラ氏は対抗し、宣誓書として手書きした書類に署名し、「大統領という立場で」憲法評議会へ送付した。これには「コートジボワールでは目下、異常事態が進行しており、私は憲法評議会の前で直接就任宣誓を行うことができない。そのため宣誓書を送付させていただく」と記したという。
コートジボワールでは決選投票後、選挙がらみの暴力で少なくとも17人が死亡している。国境は軍に封鎖され、外国の報道は妨害されている。首都アビジャンには夜間外出禁止令が出ているが、暴力を抑止しきれておらず、4日も前日に続き外出禁止時刻が終了するとワタラ支持の若者らが街路でタイヤを燃やすなど騒然とした。
機関銃を手にしたコートジボワール軍がアビジャンに市内に動員されている一方で、ワタラ陣営が拠点としているホテル周辺は国連平和維持軍の武装車両が警備している。
他方、現職バグボ氏の支持者らは街中で反白人スローガンを叫ぶなどし、特に旧宗主国フランスを中心とする外国の干渉に対して市民がもつ長年の反感をあおっている。【12月5日 AFP】
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選挙管理委員会が2日に発表した選挙結果は、投票総数の54%を得たワタラ氏が、45%のバグボ氏を破って当選したというものでした。
国連の潘基文事務総長は3日、コートジボワール大統領選の決選投票について、ワタラ元首相が当選したとの同国選挙管理委員会の発表を支持すると表明しています。ワタラ氏に同国の平和と安定のため尽力するよう要請、敗れた現職バグボ氏には円滑な政権交代への協力を求めています。【12月4日 時事より】
フランス・アメリカもワタラ氏を支持しています。
また、ソロ首相もワタラ氏支持を表明していますが、ソロ氏は2002年の内戦以来、北部に強い影響力を持つ元反政府組織「新勢力(NF)」を率いており、対立が激化すると内戦再開の恐れもあります。
アフリカ連合(AU)は事態収拾に向け南アフリカのムベキ元大統領をコートジボワールに派遣しています。
国際的には現職バグボ大統領は圧倒的に不利な立場にありますが、内戦時代からのフランス軍やPKO部隊との衝突・混乱の経緯もあって、“旧宗主国フランスを中心とする外国の干渉に対して市民がもつ長年の反感をあおっている”という状況です。
【アフリカの混迷】
国際社会が支持する勢力と、旧宗主国や外国に反感を持つ現職政権が選挙を巡ってあらそう構図は、ジンバブエでも見られたものです。
また、アフリカでは先月末からでも、マダガスカルやコートジボワールの隣国ギニアでもクーデター・政治対立が伝えられています。
マダガスカルの方は、犠牲者を出さずに収まったようです。
****マダガスカル軍の反乱、収束 けが人ゼロで解決****
マダガスカルで軍の一部が17日に反乱を起こして政府を転覆しようとした事件は、20日夜、反乱派の拠点に軍が突入し、首謀した将校16人が逮捕されて失敗に終わった。
現地からの報道によると、反乱派は17日、首都アンタナナリボの空港そばを拠点に、政府の機能停止や実権掌握を宣言した。政府側は反乱派と交渉を開始したが、20日、兵士数百人が反乱派拠点に突入して銃撃戦になった。反乱派が投降したため、けが人なしに事件は解決した。
マダガスカルは2009年3月、軍事クーデターに乗じて元ディスクジョッキーのラジェリナ氏(36)が大統領に就任して以来、国際社会の制裁を受けて孤立している。ラジェリナ氏を後押しした軍幹部が、その後に軍の内紛で権力を失い、今回の事件を起こしたとされる。
周辺国は09年クーデター以来、マダガスカルの正常化に向けた解決策を模索してきた。しかしラジェリナ氏は仲介案に妥協せず、自身の権力掌握を合法化する新憲法案をつくり、17日に国民投票にかけた。今回のクーデターは未遂に終わったものの、国民の不満はくすぶっており、20日にも首都で数百人がデモを実施した。【11月21日 朝日】
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****ギニア:新大統領にコンデ氏 最高裁が承認*****
西アフリカ・ギニアからの報道によると、大統領選決選投票の結果を巡り混乱が続いていた同国の最高裁判所は2日、野党「ギニア人民結集党」のコンデ党首(72)を新大統領として承認したと発表した。
決選投票は先月7日に実施。選管は同15日、52.5%を得票したコンデ氏の勝利を発表したが、47.5%の得票で敗れた「ギニア民主勢力連合」党首のディアロ元首相(58)が「不正があった」と裁判所に訴えていた。
ディアロ元首相の支持者らが治安部隊と衝突して死傷者も出ていた。政府は非常事態を宣言し、夜間外出禁止を発令。最高裁の判断を前に先月末からは国境も閉鎖されていた。【12月3日 毎日】
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アフリカでも選挙による指導者を選ぶ仕組みは多くの国がとっていますが、実際のところ選挙結果をめぐるトラブルが絶えません。
選挙に基づく民主主義というものが定着していないようにも思えます。政治と武力による実力行使の境が曖昧で、選挙結果も力で覆すことができる・・・とも思われているようにも。
かつて毛沢東が「政治は硝煙なき戦争であり、戦争は硝煙による政治だ」と言っていたように、本来、政治と戦争は不可分のもであり、「民主主義」の名のもとに選挙による平和的権力移譲を期待する考えの方が特殊欧米的なのかも・・・・。
日本でも選挙のたびに地域社会が異常な対立に陥る地域がありますが、そうした地域は公共事業などをとおして、選挙で勝ち組になるかどうかが日々の生活に直結しているような事情があります。
アフリカの多くの国々で見られる選挙を巡るトラブルも、民族対立、既得権益などをとおして、権力維持が生きていく上で是非とも必要とされる・・・そんな厳しい現実があるものと思われます。