孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

変わるフランス・ドイツ 変わらぬ日本・韓国

2010-12-13 20:04:39 | 国際情勢

(ナチス占領下のパリ市街 08年4月「Parisians under the Occupation(占領下のパリ市民)」と題された写真展で公開された、ナチスのプロパガンダ誌のカメラマンとして働いていたフランス人写真家アンドレ・ズッカ氏の作品 公開当時、水玉模様のドレスでパリの大通りを散歩する女性やリュクサンブール公園で遊ぶ子どもたちなどの平和でくつろいでいるようにも見える写真に対し、“1940-44年のナチス占領下で数千人ものユダヤ人が強制移送されたことや、数え切れないほど多くのパリ市民が苦難に耐えたことを、これらの写真は表現してはいない”との激しい非難がフランスが国内で巻き起こりました。【08年4月24日 AFPより】
写真は“flickr”より By juffrouwjo  http://www.flickr.com/photos/hab3045/2634658114/ )

両国の和解と協力を象徴
頑なに閉じていた心も時間の経過とともに変化していくこともあれば、そうでないことも。
12月8日ブログでとりあげたポーランドとロシアの関係改善は前者の例でしょうか。
もちろん、単に時間が経過しただけでなく、ポーランド大統領搭乗飛行機墜落事件やカチンの森事件真相究明に関するにおけるロシア側の対応もあってのことです。

幾世紀にわたり対立と戦争を繰り返してきた欧州における各国の関係は、アジアの人間にはよくわからないところがありますが、かつて国土の大半がナチスドイツの占領下に置かれたフランスに、ドイツ部隊が常駐することになったそうです。

****独歩兵大隊、仏に正式駐留…ナチス占領以来初*****
フランスとドイツで作る仏独合同旅団の独軍歩兵大隊335人が10日、仏東部ストラスブール郊外の駐屯地で正式に駐留を始めた。
独軍戦闘部隊の仏駐留は、第2次大戦中のナチス・ドイツによる占領期以来初めてで、両国の和解と協力を象徴する出来事となった。
仏独合同旅団は、冷戦末期の1987年、当時のミッテラン仏大統領とコール独首相が合意して誕生した。実際の部隊創設は89年で、両国の和解を世界に印象付けるものとなった。93年には、国連平和維持活動などにも参加する欧州合同軍(本部・ストラスブール)に編入された。
現在、仏、独、スペインなど6か国で構成する合同軍は、約6000人規模で、ボスニアやアフガニスタンへも派遣された。
ただ、部隊の駐留では、これまで、戦勝国フランスの部隊がドイツにいる一方、独軍部隊はフランスになく、なお大戦の記憶を引きずる形となっていた。独部隊の仏駐留で両国首脳が合意したのは2009年だった。【12月11日 読売】
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フランス、ドイツの関係も、単に時間の経過に任せていた訳ではなく、EUという共同体づくりを両国が中核になって進めてきた諸々の関係を背景にしたことでしょう。それでも“これまで、戦勝国フランスの部隊がドイツにいる一方、独軍部隊はフランスになく、なお大戦の記憶を引きずる形となっていた”というあたりに、道のりが簡単なものではなかった事情も窺えます。
2012年の段階でドイツ部隊600人が駐留する予定です。

【「突拍子もない」「不適切な発言だ」】
上記の話とはまた異なる話ではありますが、歴史的経緯を引きずる日本と韓国の間での自衛隊に関する話題もありました。

****韓国:菅首相発言に警戒感 「自衛隊派遣」事前相談なく*****
菅直人首相が、朝鮮半島有事の際の邦人救出に向け自衛隊派遣を想定した協議を韓国側と行いたいとの考えを示したことについて、韓国では13日付の朝鮮日報が「不適切な発言だ」とする社説を掲載するなど、警戒感や戸惑いが広がっている。
社説は、米軍のマレン統合参謀本部議長が先週、ソウルや東京で行った記者会見で、北朝鮮に対する圧力の一環として日米韓3カ国合同の軍事演習の必要性を強調したことに触れ「韓日の過去の問題はもちろん、日本が独島(日本名・竹島)領有権を主張する状態で、自衛隊が朝鮮半島の周辺に出没する状況を受け入れるのは難しい」と反発。
さらに「(こうした一連の動きを)中国は敵対的な動きと見なしている」と指摘し、韓国としては「何倍も慎重で敏感に受け止めるしかない問題で、菅首相の発言は誤解を招く不適切な発言だ」としている。

一方、聯合ニュースは12日、菅首相発言に対する韓国政府側の反応を「ひとことで言えば『突拍子もない』というものだ」と伝えた。政府当局者は「韓国政府には事前に何の相談もなかった。敏感な安全保障の懸案に対し、日本の首相が突然切り出したのは、おかしい」と語った。
また、青瓦台(大統領府)高官は「現実性のある話ではない」とし「おそらくそれほど深く考えて述べた話ではないのだろう」との見方を示したという。【12月13日 毎日】
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当初10日には、管首相の発言は、“朝鮮半島有事が起きた場合、北朝鮮による拉致被害者の救出のため、自衛隊派遣の可能性を政府内で検討している”【12月10日 読売】というものでした。
どこにいるかもわからない拉致被害者を、有事の混乱状態の中でどうやって救出するのだろうか・・・とも思ったのですが、11日には在韓邦人が主な対象だと軌道修正しています。
“政府関係者によると、首相は先の北朝鮮による韓国砲撃の直後に、邦人救出の現状と課題について関係省庁から説明を受けた。一方、拉致被害者の家族は以前から、「自衛隊機を使ってでも被害者を奪還してほしい」としており、政府内では「首相は細部を詰めないまま、二つを結びつけて発言したのではないか」という見方も出ている。”【12月12日 読売】

朝鮮半島有事の際、在韓邦人救出のために自衛隊派遣を含めた対応策については協議していくべきことですが、最大の問題は、韓国側の受け止め方です。
微妙な関係にある両国関係を考えると、事前の相談なしにこういう発言をするのは、うまくないやり方でしょう。

百年前ならいざ知らず、別に日本も有事にかこつけて出兵しそのまま居座るとか考えている訳でもありませんが、韓国側の「日本軍」に対する拒絶感は、時間の経過にもかかわらず変わらないものがあるようです。
韓国だけでなく、中国の反日感情、ロシアとの領土問題・・・日本をとりまく東アジア情勢は変化・改善が見られません。
変化には時間の経過に任せるだけでなく、変化を実現する方向での試み・努力が必要ですが、その努力において日本が再考すべきものがあるのでしょうか。

コメント
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