孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

欧州信用不安  独仏は、どこまでギリシャを支えられるのか?

2011-09-15 21:48:27 | 欧州情勢

(2月4日の欧州理事会でのメルケル独首相(左)、パパンドレウ・ギリシャ首相(中央)、サルコジ仏大統領(右) “flickr”より By European Council http://www.flickr.com/photos/europeancouncil_meetings/5415651503/

【「ギリシャがユーロ圏にとどまると確信している」】
連日のように欧州経済の信用不安が報じられています。
その元凶となっているのが、EUとIMFの支援を受けながらも一向に財政再建が進まないギリシャです。
ギリシャは、EUとIMFによる経済復興計画をなかなか実行に移せないことから、デフォルト(債務不履行)に陥るかユーロ圏から離脱するということが現実の問題として論議されるようになっており、市場も混乱しています。
ギリシャ国債が紙くず同然になるのを恐れ、投資家たちは国債を投げ売りしているとも言われています。

こうした状況で、14日、欧州経済を支えるドイツ・フランス両国首脳がパパンドレウ首相と電話で協議、「ギリシャの未来はユーロ圏にあると確信している」との共同声明を出し、ギリシャを支えていくことを改めて示しています。

****ギリシャ:ユーロ圏離脱否定 独仏首脳が電話協議****
メルケル独首相、サルコジ仏大統領は14日午後、財政再建が進まず、危機的状況に陥っているギリシャのパパンドレウ首相と電話で協議。独仏両首脳は「ギリシャがユーロ圏にとどまると確信している」として、ギリシャ支援の決意を改めて強調するとともに、ギリシャに一層の財政再建策を促した。
また、ユーロ圏(17カ国)首脳が7月21日に決めたギリシャへの第2次支援策を、早期に実施する努力を続けることも確認した。

各国の政治家が、「ギリシャのデフォルト(債務不履行)は避けられない」との見方や、ギリシャのユーロからの離脱を促す発言を繰り返し、危機が深まっていた。ユーロ圏の中心である独仏首脳が「ユーロ圏にとどまる」と発言する一方、パパンドレウ首相は財政赤字削減について「完全な実現のためあらゆる手段を尽くす」と表明。市場に危機の沈静化の姿勢をアピールした。

ギリシャ危機をきっかけとした欧州債務危機は、イタリアなど巨額の財政赤字を抱える国にも波及。16、17両日にガイトナー米財務長官も出席して開かれるユーロ圏の非公式財務相会合で支援策を協議する。ただ、14日のギリシャの国債価格は下落(利回りは上昇)、10年国債の利回りは一時、26%台まで上昇。デフォルトの可能性を織り込みつつある市場が沈静化に向かうかは不透明だ。【9月15日 毎日】
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【「ドイツ財務省がギリシャの国家破綻の可能性があるとして、準備を始めている」】
ただ、ギリシャの財政再建がすすまず、更に他の国々の状況も悪化するということになると、仏独としても、いつまでもギリシャなどを支えることは困難です。特に最大の支援資金供給国ドイツ国内には、いつまで自分たちのカネで放漫財政国を助けなければならないのか・・・といった、根強い反対論があります。

****欧州危機恐れ、息のむ市場 ユーロ急落・株安連鎖****
・・・「ドイツ財務省がギリシャの国家破綻(はたん)の可能性があるとして、準備を始めている」。ドイツ週刊誌シュピーゲルは10日、そんなニュースを報じた。
ユーロ加盟国はこれまで、ギリシャの借金返済の繰り延べや金利減免など軽度の債務整理をする方向で調整してきた。しかし、同誌が想定しているのは元本の一部が返ってこないような重度の債務不履行だ。

メルケル首相はギリシャ支援の姿勢を崩していないが、足元で政治家の発言はますます過激になっている。与党第2党、自由民主党党首のレスラー経済・技術相は12日の独紙ウェルトへの寄稿でこう語った。「ユーロの安定のためには、タブーがあってはならない。(選択肢には)ギリシャの管理された債務不履行も含まれる」・・・・【9月13日 朝日】
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もちろん、ギリシャがデフォルトになれば、資金調達ができないギリシャ国内で公務員給与や年金支払いが滞るといった大混乱が起きる他、ギリシャ債権を抱える仏独の銀行を含む各国金融機関の経営が悪化、欧州全体の資金の流れもが悪化、信用不安はポルトガル、スペイン、イタリアにも飛び火・・・・と、独仏を含めた欧州経済全体が危機に瀕することも想定されます。

【「イタリアは真の欧州中央政府のために、あらゆる主権を移譲する用意がある」】
ギリシャだけならまだ支援体制もなんとか維持できますが、経済大国イタリアが支援を要するような事態となれば、独仏としてもこれを支えるのはますます困難です。

そのイタリアでは、14日、年金は女性の支給開始年齢の60歳から65歳への引き上げ、付加価値税税率の20%から21%への引き上げ、生協法人税の増税、国有資産の売却、脱税者の厳罰などを盛り込んだ、2014年までの3年半で総額540億ユーロ(約6兆円)規模に上る財政緊縮法案を下院で可決しました。上院ではすでに7日に可決しています。

****イタリア:追加緊縮策、法制化決まる 下院可決****
イタリア下院は14日、2013年の財政黒字を目標とするベルルスコーニ政権による追加緊縮法案を314対300票で可決した。上院ですでに承認されており、法制化が決まった。

可決を受けても市場で国債や株価の下落が止まらなければ、政府は新たな増税や資産売却を打ち出す見通しで、市民の抗議が暴力を伴う「ギリシャ型」に発展する可能性もある。ローマでは14日、抗議デモの一部が暴徒化し、警察が催涙弾を放つ場面もあった。

緊縮策は2014年までで総額540億ユーロ(約5兆7000億円)に上り、額は年平均で国家予算の3%に匹敵。内訳は省庁や地方など行政支出や年金を削る歳出減が約7割で、付加価値税、たばこ税や金融取引税などの増税が約3割を占める。

イタリアは90年代から地域ごとの発展を目指し、地域や村単位の自治を進めてきたが、今回の緊縮策では自治体への交付金や議員支出が大幅に削られる。また、流通で第1位のシェアを持つ「3大生協」の優遇法人税も一部廃止される。中央政府を介さない「市民自治」というイタリアらしい面が阻まれることになり、バチカン(ローマ法王庁)はこの点に批判を加えている。

一方、政府は新たな策として、バチカンの固定資産にも課税する案を模索しており、宗教団体など従来の免税や優遇対象にも切り込む考えだ。【9月15日 毎日】
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イタリアのフランコ・フラティニ外相は14日、「もはや円卓に座って、政府間交渉で欧州を統治するやり方では十分でない。国によって連邦主義的欧州に関する考えはそれぞれ違う。しかし、イタリアは真の欧州中央政府のために、あらゆる主権を移譲する用意がある」と、欧州全体の強化につながるのであれば、イタリアは主権の一部移譲もいとわないと、危機回避へ向けた強い決意を表明しています。

ただ、ベルルスコーニ政権が8月12日に発表した緊縮策原案は、与野党や地方の反発で内容が大幅に変更され骨抜きにもなっています。年収9万ユーロ(約970万円)以上の所得者への新規課税は公務員を除いて見送られ、年収30万ユーロ(約3200万円)以上の富裕層にのみ課税されることになったことで、税収見込みは原案の7分の1に減っています。また、「議員半減」など政治のスリム化に踏み込まれていません。

こうしたこともあって、緊縮財政案が上院に提出される前の6日には、最大の労組、イタリア労働総同盟(CGIL)の呼びかけにより、ローマなどで緊縮財政案に反対する大規模なゼネストが行われるなど、国民の反発も大きくなっています。

一方、セックス・スキャンダルに追われるベルルスコーニ首相は、タランティーニ容疑者への金銭支払いを仲介したとされるニュースサイト編集者のバルテル・ラビトーラ容疑者との7月13日付けの電話で、度重なる捜査に対する不満をぶちまけ、「もう知ったことか。数か月もすれば、私はどこか遠くで私だけのクソ・ビジネスに専念するんだ。吐き気を催させてくれるクソ・イタリアなんか出ていってやるのさ」と語っています。【9月2日 AFP】
財政再建についても、あまり多くを期待できるような感じではありません。

注目される29日のドイツ議会
今後の欧州信用不安の行方については、やはり最大支援国ドイツの国内事情が注目されます。
****欧州9月危機でユーロ崩壊の悪夢****
・・・・支援に対するドイツ国内の逆風は強まる一方だ。ドイツの連邦憲法裁判所は先週、ユーロ諸国に対する金融支援について「今後は連邦議会の承認を得る必要がある」という判断を示した。今後の機動的な支援に支障が出る恐れもある。
ユーロ圏諸国の支援を進めるべき立場のメルケル首相自らが、ギリシャのデフォルトに備えて自国の銀行に資本注入する準備を指示したという噂も流れ、ユーロ相場や欧州株の急落に拍車を掛けた。

市場は9月危機を恐れている。9月は欧州債務問題に関連する重要イベントがめじろ押しだ。なかでも注目は29日のドイツ議会。EU諸国が出資する欧州金融安定基金(EFSF)のユーロ諸国に対する支援拡充案を承認するかどうかが議論される。
否決されれば、ユーロ圏17カ国の支援余力は既に決定したギリシャなどの分で手いっぱいになり、スペインやイタリアには対応できなくなる。

そうなれば、ユーロの信用は失われ、債務国の国情を保有している銀行の財務体質が悪化し、リーマン・ショック型の信用収縮の連鎖が起こりかねない。またユーロ資産はドイツに集中し、ユーロ圈の他の国では流動性が失われるだろう。
オランダのルッテ首相は、ユーロ圏再生を話し合う来月のEU首脳会議に向けて、危機国がユーロを離脱できる規定も含めた財政赤字抑制策を提案した。
その前にドイツがユーロを殺さなければ、の話だが。【9月21日号 Newsweek日本版】
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