孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  オバマ大統領再選  経済回復で“ラッキー”な大統領に?「財政の崖」は?

2012-11-07 22:42:37 | アメリカ

(勝利宣言するオバマ大統領 “flickr”より By gautam.goradia http://www.flickr.com/photos/28096161@N02/8163523311/

この選挙の勝者は、これから回復に向かう経済の恩恵を受ける
接戦が予想され世界が注目していたアメリカ大統領選挙は、オバマ大統領が再選されました。
全体の得票率がどの程度だったのかはまだ情報がありませんが、勝敗を分けると見られていた激戦州の殆んどをオバマ大統領が制したため、選挙人獲得数ではかなりの差が開き、2000年(ブッシュ対ゴア)のような大混乱はありませんでした。

アメリカの経済・雇用情勢は、このところ回復基調にありますが、それでも失業率は8%近い高水準です。現職大統領にとってはその責任を問われる厳しい情勢には変わりなく、そうした逆風のもとでオバマ大統領が勝利できたのは、“相手に恵まれた”というラッキーな側面があるようにも思えます。

オバマ大統領は再選を果たしたことで、今後、アメリカ経済回復の果実を“成果”としてアピールできる立場を得たと言え、その点でも“ラッキー”と言えるようです。

****アメリカ経済は誰が大統領でも回復する****
再選されたオバマは、その手腕とは関係なく経済政策が称賛されるラッキーな大統領になるだろう

大接戦の米大統領選を制したのは、バラク・オバマだった。しかし結果が出る前から確かなことが一つあった。この選挙の勝者は、これから回復に向かう経済の恩恵を受けることになる。よほど大きなヘマさえしなければ、悲惨だった過去10年に比べて素晴らしい経済手腕を発揮したかのように見られるだろう。
 
共和党のミット・ロムニー候補は、1200万人の新規雇用を生み出すと約束していた。この公約は批判されたが、その理由は実現不可能な数字だからではない。政策の手が入らずとも達成できる数字だからだ。
米調査機関のムーディーズ・アナリティックスは今年4月発表の経済見通しで、向こう4年間で1170万人の雇用が創出されると予測した。米大手調査会社マクロエコノミック・アドバイザーズも同様に、1230万人と予測した。

もちろん、誰もがそこまで楽観的なわけではない。米連邦議会予算事務局(CBO)は、やや控えめに960万人としている。とはいえCBOは、大型減税の期限切れと強制的な歳出削減が同時進行で今年末から起きる、いわゆる「財政の崖」問題に何の対策も取られないことを前提にしている。
だが党派を越えてこの問題が重要視されていることを思えば、何らかの対策が打たれるはずだ。それにたとえ960万人(もしくはそれ以下)だったとしても、近年の雇用状況に比べれば、素晴らしい成功と見られるだろう。

景気回復が期待できる根拠
というわけで、オバマは過去4年間の経済低迷の責任をブッシュ前大統領に押しつけることができる。仮にロムニーが勝っていたとしても、責任を押し付ける相手がオバマに変わるだけだった。

では、なぜ景気回復はほぼ確実と見られているのか。その最大の要因は金融政策だ。
クリーブランド連邦準備銀行のエコノミストであるエリス・トールマンとサイード・ザーマンの研究によれば、金融危機後の09年の経済環境における金利は、マイナス5%が適正だったとした。もちろんFRB(米連邦準備理事会)にとって、名目金利をゼロを下回る値にするのは不可能だ。さらに実質金利を下げるためにFRBはインフレ目標を高めに設定するという政策も取ってこなかった。その結果、政策金利はほぼゼロで据え置かれているが、実際には適正な金利より5ポイントも高い水準にあるため、失業率は跳ね上がり、経済回復のペースも鈍いものになってしまう。

ところが、経済の回復が進むにつれて適正金利の値も高くなる。トールマンとザーマンは、今年第2四半期までに適正な金利水準はマイナス2%前後まで上昇していたと分析。実際の金利は依然、適正値より高いものの、その差は縮まりつつあるということだ。来年中にはゼロ金利が適正金利とほぼ一致するようになり、持続的な経済回復も見込めるだろう。そして、そのときホワイトハウスにいる人物は、自分の手腕とは関係のないことで称賛を浴びるはずだ。

レーガンも「棚ぼた」だった
こうした状況は今回が初めてではない。ロナルド・レーガンは経済が低迷するなかで大統領に就任。当時のFRB議長ポール・ボルカーは高金利政策でインフレを鎮静化させ、直ちに金利を低下させた。これによりアメリカ経済は82年の深刻な不況から急速に回復。レーガンの保守的な政策とは関係なかったのに、彼のおかげだと思われた。

オバマの2期目に、この80年代半ばのような劇的な景気回復が起きることはないだろう。だが今後4年間のアメリカ経済が過去4年をはるかに上回るものになるのはほぼ間違いない。オバマ大統領、あなたは本当にラッキーだ。【11月7日 Newsweek】
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非常に楽観的な上記記事にもある、大型減税の期限切れと強制的な歳出削減が同時進行で起きる「財政の崖」問題については、これを懸念する向きもあります。

****財政の崖」懸念強まる 米上下院で「ねじれ*****
与野党泥仕合も
6日の米議会選挙では、共和党が下院で過半数を維持する一方、上院では民主党が多数を保つことが確実になった。上下両院の多数派が異なる「ねじれ」が続き、再選されたオバマ大統領は2期目も厳しい政権運営に直面する。今年末までに対応を迫られる「財政の崖」など懸案が山積するなか、与野党対立で米立法機能の停滞が続けば、世界経済の波乱要因になる恐れがある。

上院は連邦判事や政治任命ポストの承認権、条約批准などで大きな権限を持つ。だが、税法などの議決では、下院に優越する決まりはない。上下両院のねじれが解消できない場合、超党派の協議で妥協を探る道もある。それができなければ法案が通らず、泥仕合を演じるしかない。

2010年秋の中間選挙で「茶会党」ブームを背景に共和が下院の多数を奪って以降のオバマ政権は、こうした不安定な状況に見舞われた。ねじれに阻まれて思うように雇用・景気関連の法案が通らず、野党ばかりか、かたくなに妥協を拒むオバマ大統領にも批判の矛先が向かった。

議会が大統領選後に対処すべき懸案は山積している。差し迫った課題は懸念が国際的に広がる「財政の崖」の回避だ。
これは今年末に「ブッシュ減税」などの大型減税が失効し、来年1月には連邦歳出の強制削減も始まり、急激な財政引き締めにつながる問題。来年1月の新政権発足までに、現有議席で開かれるレームダック(死に体)議会の下、早急に対応を固める必要がある。
だが、共和が下院で勝利を決めれば、副大統領候補のライアン議員ら財政緊縮の「タカ派」が一段と勢いを増す見通し。与野党が妥協点を見いだすのは容易でなさそうだ。

ホワイトハウスと議会が最後には、減税の短期延長で手を打つとの見方もある。だが、民主、共和両党とも譲歩せず、債務の上限引き上げを巡って金融市場が大混乱した11年夏の再現になるとの懸念も根強い。
13年春には再び行われる債務上限の引き上げ交渉や、エネルギーや地球温暖化に関わる対策など、民主、共和両党がことごとく対立する懸案への対応は険しさが増す。共和が下院を押さえ続けると現在の構図は変わらず、オバマ政権の議会運営は厳しいままだ。【11月7日 日経】
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メキシコで開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議においても、アメリカの「財政の崖」への懸念が出され、「世界経済への短期的なリスクという点では、財政の崖が欧州債務危機を上回っている」(カナダ財務相)との指摘もありました。

****G20:財務相会議 米の「財政の崖」に各国が懸念表明****
主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が4日夕(日本時間5日午前)開幕し、初日は世界経済について話し合った。米国で来年初めに大型減税の期限切れと強制的な歳出削減が重なる「財政の崖」について、世界経済の大きなリスクになるとの懸念を各国が表明。5日採択する共同声明は、欧州に債務危機解決を、日本に赤字国債発行のための特例公債法案成立を求めるとともに、米国に対して、崖の速やかな解消を促す見通しだ。

「本当に解決がつかなければ、世界経済、ひいては日本経済に影響を与える。G20でしっかり取り組んでほしいと各国が言うことになる」。日銀の白川方明(まさあき)総裁は4日の会議直前、今回のG20が米国に「財政の崖」への対応を迫る場になるとの見方を記者団に示した。

ロイター通信によると、カナダのフレアティ財務相も開幕前、「世界経済への短期的なリスクという点では、財政の崖が欧州債務危機を上回っている」と指摘。韓国の朴宰完(パク・ジェワン)企画財政相は「13年の第1四半期、世界経済は財政の崖をめぐる不確実性に苦しむだろう」と語った。
その言葉の通り、初日の討議では、国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事を皮切りに、各国から「財政の崖」について「欧州債務危機と並ぶ世界経済の不安要因だ」などとする発言が相次いだ。

米国の7〜9月の実質経済成長率は2.0%と、低水準ながら前期(1.3%)よりも伸びを拡大させた。欧州の債務危機の影響が比較的小さかったためだ。住宅市場の改善の兆しも見え始め、今後の消費拡大への期待が高まっている。

一方、財政の崖に伴う実質増税と歳出削減の合計は約5600億ドル(約45兆円)。米議会予算局(CBO)は、財政の崖が現実化した場合の13年前半の経済成長率をマイナス2.9%と予想し、「深刻な景気後退に陥る」と警告。米国まで景気後退局面に入れば、先進国経済は総崩れになる。米国への輸出依存度が高い中国など新興国経済の成長もさらに鈍化し、世界全体を景気後退に陥れかねない。【11月5日 毎日】
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“党派を越えてこの問題が重要視されていることを思えば、何らかの対策が打たれるはず” 【11月7日 Newsweek】ということで順調にアメリカ経済が回復して、オバマ大統領は“ラッキー”な大統領となるのか、ねじれ議会のもとで“金融市場が大混乱した11年夏の再現”“財政の崖が現実化した場合の13年前半の経済成長率をマイナス2.9%と予想”といった事態に陥るのか・・・。
答えは年末から年明けという、すぐ近い時期にわかります。

先行き暗い日本経済
「財政の崖」を別にすれば回復基調にあるアメリカ経済に比べ、日本経済の方は、先行き暗そうです。
この差はどこから来るのでしょうか?

****景気、すでに後退局面か 9月の一致指数低下 ****
6カ月連続でマイナスに 自動車関連落ち込む
内閣府が6日発表した9月の景気動向指数(CI、2005年=100)速報値によると、景気の現状を示す一致指数は前月比2.3ポイント低下の91.2だった。マイナスは6カ月連続。内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「足踏み」から下方修正し、東日本大震災直後の昨年5月以来となる「下方への局面変化」と表現した。(後略)【11月6日 日経】
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