(「4歳の息子でさえ22口径の銃を撃てるの」と自慢していた銃擁護活動家ジェイミー・ギルト容疑者 https://www.youtube.com/watch?v=zZcQEuAK-Hs)
【「4歳の息子でさえ22口径の銃を撃てるの」】
「銃社会」アメリカでは、銃によって身を守る可能性よりは、銃による事故に巻き込まれる危険の方が大きいように思われます。
****4歳児が誤射、銃愛好の母重傷=ネットで射撃自慢―米フロリダ州****
米南部フロリダ州で銃愛好家の女性が、4歳の息子に誤って撃たれ、重傷を負った。容体は安定している。米メディアが9日一斉に報じた。女性は日頃、息子が銃を扱えることをインターネット上で自慢げに語っていた。
女性はジェイミー・ギルトさん(31)。8日、車の運転中、息子が車内にあった45口径の銃の引き金を引いた。弾丸がギルトさんに当たり、背中から腹部を貫通した。息子にけがはなかった。
フェイスブックでギルトさんは銃所持を擁護する持論を展開。カウボーイハット姿でライフルを携える写真や、「4歳の息子でさえ22口径の銃を撃てるの」といったコメントも投稿していた。【3月11日 時事】
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確かに「4歳の息子でさえ22口径の銃を撃てる」のは間違いないですが、きちんと扱えるかどうかは別問題です。
問題の銃は、車内の床に落ちていたようです。
母親は幸い命には別状ありませんでしたが、もし死亡していたら自分の問題だけでなく(自分が亡くなるのは自業自得です)、子供に「自分の母親を射殺した」という一生消せない傷を負わせるところでした。
この銃擁護派の活動家でもある4歳の息子に撃たれた母親は、「銃火器の危険な保管」の罪での訴追を受ける状況にありましたが、司法取引で銃の安全な取り扱いに関するスピーチをすることになったようです。
****4歳息子に撃たれた銃擁護派の母親、安全スピーチ10回に同意****
米国で4歳の息子に誤って銃で撃たれた銃擁護派の活動家の女性が、「銃火器の危険な保管」の罪での訴追を避けるため、司法取引の一環として、 銃の安全な取り扱いに関するスピーチをすることに同意した。
州司法当局によると、ジェイミー・ギルト容疑者(31)は、銃の安全に関する講習を受けること、自分の車に銃ケースを設置すること、自宅で銃火器を安全に保管していることの証明の提出などに加え、息子に撃たれた事件と銃を安全に保管する必要性について10回のスピーチをすることで検察に合意した。どこでスピーチを行うかは具体的に示されていない。(後略)【5月7日 AFP】
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同様の事件は後を絶ちません。下記の事故では、やはり車内で2歳の息子に撃たれた母親は死亡しています。
****2歳半の男児、車内で誤って発砲 母親死亡 米国****
米ウィスコンシン州ミルウォーキーで26日、車の後部座席に乗った幼児が運転席の下から滑り出た40口径の銃を誤って発砲し、母親を死亡させた。警察当局が27日、明らかにした。
地元の保安官事務所によると、母親のパトリス・プライスさん(26)は現場で死亡が確認された。
銃を撃った幼児は2歳半で、地元メディアによると男児だという。地元放送局WISNは、父親アンドレ・プライスさんの話として、パトリスさんは3人の子どもの母親だと伝えた。アンドレさんは「胸が締め付けられる思い」だと語っているという。
地元紙ミルウォーキー・ジャーナル・センティネルによると、パトリスさんは自分の車が盗まれたため、警備員をしている友人男性の車を運転していた。男児が撃った銃はこの男性のものとみられる。
車には、プライスさんの1歳になる子どもと、プライスさんの母親も同乗していた。子どもたちはいずれもチャイルドシートに座っていなかったという。【4月28日 AFP】
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こうした状況にあって、オバマ大統領が銃乱射事件で犠牲になった子どもたちに演説で触れ、涙を流しながら「みんなで立ち上がり、国民を守らなければならない」などと訴えたこと、しかし、現実には乱射事件が起きるたびに銃の販売は増え、カリフォルニア州では全米初の銃器専門通販の放送局「ガン(銃)TV」の立ち上げが計画されていることなどは、1月7日ブログ「アメリカ オバマ大統領、涙ながらに銃規制強化を発表 内容は限定的 “西部劇”さながらの事件も」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160107で取り上げたところです。
4月には、友人をかばって射殺されたいとこを追悼するバスケットボールの試合を観戦して帰宅する途中だった少年が、銃撃戦に巻き込まれ頭部に銃撃を受け死亡するという事件も。
****米12歳少年、頭撃たれ死亡 射殺されたいとこの追悼行事直後****
米テネシー州ノックスビルで16日、射殺されたいとこを追悼するバスケットボールの試合を観戦して帰宅する途中だった少年が、頭部に銃撃を受け死亡した。地元警察当局が17日、明らかにした。
ジャジュアン・ヒューバート・レイサム君(12)はこの日、昨年12月に起きた銃撃事件で友人をかばって死亡したいとこのザビオン・ドブソン君(当時15)を追悼し、若者による銃犯罪の撲滅を訴えるため開催されたバスケットボールの試合を観戦。
その後、父親の運転する車の後部座席に座っていたところを、公園で起きた多数の人々と2台の車が絡んだ銃撃戦に巻き込まれ、頭部に銃弾を受けた。父親の手ですぐさま病院に運ばれたが、助からなかったという。
高校のアメリカンフットボール部に所属していたドブソン君が死亡した際、バラク・オバマ米大統領はマイクロブログのツイッターに「ザビオン・ドブソン君は友人3人を銃弾からかばって命を落とした。15歳にして英雄だった。行動しないことに対するわれわれの言い訳は何だ?」と投稿していた。【4月18日 AFP】
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【あのファーガソンでは黒人警察署長が就任するも・・・・】
銃と並んで、アメリカ社会の問題とされるのが「人種」の問題です。
一連の警察による黒人への扱いが問題となった事件の契機ともなったファーガソンでは、警察署員の大半を白人が占めていましたが、人種的多様性を確保すべくアフリカ系米国人が警察署長に就任したそうです。
****アフリカ系米国人が警察署長に就任 黒人青年射殺の米ファーガソン****
約2年前、武器を持っていなかった黒人青年が白人警官に射殺される事件が起きた米中西部ミズーリ州ファーガソンで9日、アフリカ系米国人が警察署長に就任した。
地域における警察活動の専門家とされるマイアミ警察のベテラン、デルリッシュ・モス氏(51)は、当局に対する地域の信頼を取り戻すべく同地に赴いた。
2014年にファーガソン市で起きたマイケル・ブラウンさんの射殺事件では、数週間にわたって抗議行動が続き、ときに暴徒化。人種問題と米警察当局の対応をめぐり、全米で議論を巻き起こした。
米連邦当局の調査により、同州セントルイスの郊外に位置するファーガソン市では定型化した人種差別がまん延し、憲法上の市民の権利が侵害されている事例が複数認められた。このため同市は、市警組織と裁判所の改革を迫られていた。
モス氏は、住民の3分の2をアフリカ系米国人が占めながら、署員の大半を白人が占める同市警に多様性をもたらすことを約束した。【5月10日 AFP】
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これはこれで“a step in the right direction”ですが、警察内部における意識にはまだまだ改革を必要とするものがありそうです。
****米カリフォルニアの警官ら、内輪で人種差別メールやりとり****
米カリフォルニア州のロサンゼルスとサンフランシスコの警官らが、人種差別的で同性愛を嫌悪する内容の電子メールやテキストメッセージを交わしていたことが明らかになり、非難を浴びている。警官らはメールの中でマイノリティー(少数派)の人々を「野蛮人」「野獣」などと呼んでいた。
サンフランシスコ市当局によると、同市警では問題発覚後に警官3人が辞職し、4人目が懲戒処分の対象になっているという。
26日に記者会見したサンフランシスコ市の公選弁護人、ジェフ・アダチ氏は、辞職した3人の間で交わされたテキストメッセージの詳細を公表。3件の殺人を含む少なくとも207件の事件に影響する可能性があると述べた。
メッセージの中で、元警官らは黒人に対し「Nワード」(ニガーなどの差別語)を使用していたほか、アラブ系の人々を「ぼろ切れ頭」などと表していた。
一連の差別的なメッセージは、3人のうちの1人に対する強姦容疑の捜査過程で見つかったという。この元警官は、あるメッセージの中で黒人について「野蛮人」「解き放たれた野獣の群れ」も同然だなどと記していた。
「市民のために尽くすと誓った警官が、これほど無頓着に市民の人間性を攻撃するなど、恐ろしいことだ」とアダチ氏は述べた。
■「冗談」と釈明
一方のロサンゼルスでは、同郡保安局のトム・エンジェル首席補佐官が、近郊バーバンク警察の副署長を務めていた2012~13年に黒人やヒスパニック系、女性を侮辱する内容のメールを転送したとして批判の的となっている。
米紙ロサンゼルス・タイムズの取材に応じたエンジェル氏は、仕事上のメールが公になったことは不運だったと述べ、「職場の誰もが時々、不幸にも、恐らく転送すべきではないメールを転送してしまう」「誰かを傷つけたなら謝る。だが、こうした冗談が一般の人々の目に触れることは想定していなかった」と釈明した。【4月28日 AFP】
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【異様な高値のお祭り状態となっている「トレイボン・マーティン射殺事件」の銃】
人種間の亀裂を印象づける事件は今も昔も頻発していますが、2012年2月26日の夜にフロリダ州のサンフォードにおいて、武器を所持していなかった当時17歳だった黒人高校生トレイボン・マーティンさんを、ヒスパニック系の混血である自警団員だった当時28歳のジョージ・ジマーマン氏が射殺した事件も論議を呼びました。
警察は、5時間の尋問を行っただけでジマーマン氏を逮捕せず、ジマーマン氏の逮捕と十分な取り調べを求めるための抗議行動が全米に広がりました。
ジマーマン氏は正当防衛だったと述べているが、マーティンさんの遺族や友人たちは人種差別による殺人だったと主張、その後、裁判が行われましたが無罪とされています。
その事件で使われた銃をジマーマン氏がネットオークションに出品、70億円を超える高値となっているとか。
****米黒人少年射殺の拳銃、入札額さらに高騰 70億円超え****
米フロリダ(Florida)州で2012年に黒人少年が自警団員に射殺された事件で、この自警団員が競売サイトに出品した拳銃の入札額が13日までに6500万ドル(約70億6000万円)を超えた。入札者の多くはいたずら心から物議を醸している競売に参加し入札額を天文学的な数字につり上げているとみられる。(中略)
この事件でマーティンさんを撃ったケルテック(Kel-Tec)社の9ミリ拳銃をジマーマン氏が12日、銃愛好家団体「ユナイテッド・ガン・グループ」の競売サイトに出品。最低落札価格は5000ドル(約54万円)に設定された。中古品の銃としては破格の値段だが、出品から24時間もしないうちに1019人が入札。入札締め切りまで4日を残した13日朝までに入札額は6503万9000ドル(約70億6300万円)にまで高騰した。
この競売についてマーティンさんの遺族の弁護士は、「この銃は子どもの命を奪った銃で、彼(ジマーマン氏)はそれで金を儲けようとしている」とし、「侮辱的だ」と非難している。【5月14日 AFP】
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ジマーマン氏は出品した拳銃について「私の命を守り、トレイボン・マーティンの残忍な攻撃を終わらせるのに使われた拳銃」と説明し、「米国史の一片を所有する機会」と宣伝しているそうです。
もちろん入札者は本気で落札するつもりはないと思われますが、それにしても、どういう者が入札しているのでしょうか?
問題の銃をネットオークションに出品するというのも、常識を疑う行為です。