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(中国で初音ミクとのコラボゲームを発表した盛大游戏のビルに出現した巨大初音ミクイラスト 【ちゃに丸氏twitter https://twitter.com/chanimaru/status/902140437728706561 】)
【落胆させられた“小米科技差別発言”に関する中国のネット反応】
近年、日本を訪れる中国人観光客が急増したことに伴い、中国メディア・ネットにおける日本社会の清潔さ、思いやり、ルール順守、治安の良さ等を称賛する記事を連日目にします。
もちろん、社会全体の反日的な空気が消えた訳ではない・・・とはわかっていても、連日のように上記のような日本に好意的な記事を目にしていると、今後は日中関係も変わっていくのかも・・・と期待もしてしまいます。
そんな淡い期待に冷や水を浴びせて、「やっぱりね・・・」とも落胆させたのが、中国スマートフォン大手・小米科技(シャオミー)の日本語専攻学生に対する侮辱的な発言・・・、と言うより、その件に関する中国国内の反応とされる記事でした。
****「日本語専攻出て行け」騒動、中国ネットは差別と思っていなかった!****
2017年9月26日、中国スマートフォン大手・小米科技(シャオミー)の「日本語専攻出て行け」騒動が社会の関心を集める中、中国のネットユーザーの多くがこの発言を「差別には当たらない」と考えていることが分かった。
22日に河南省の鄭州大学で起きたこの騒動は同社社員が採用説明会の場で「日本語を専門に勉強した学生はもう帰っていい」「ドラマ(※暗にアダルトビデオを指す)を作る仕事でも紹介してあげよう」と話したことが発端で、会場にいた200人以上の学生が爆笑する一方、日本語専攻の学生は怒り心頭でその場を後に。
この発言は批判を呼び、問題の社員は「軽率な発言だった。責任はすべて自分にある。心からおわびしたい」との謝罪文をネットに掲載するに至った。
ただ、中国のネット上で行われた「小米の“からかい型”人材募集は本当に差別なのか?それとも学生が“ガラスのハート”を持っていただけ?」とのアンケート結果を見てみると、「差別」という意見が679件だったのに対し、「ガラスのハート」は1756件。学生がデリケートだったと考える人が全体の7割強を占めた。【9月26日 Record china】
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差別的発言をして自己満足にひたる愚かな人間は、中国にも日本にもいますので、問題の小米社員のような人間がいること自体は不思議ではありません。謝罪もしています。
しかし、その場の学生が爆笑し、アンケートで“学生がデリケートだったと考える人が全体の7割強を占めた”ということに関しては、やはり失望を禁じえません。
下記【産経も同様の視点から、「習近平政権によってここ数年強化された反日キャンペーンの影響が大きい」といった見解を紹介しています。
****【矢板明夫の中国点描】日本語学習者の受難は続く シャオミ騒動から見えた日中関係の現在****
・・・・これには雷氏も会社も抗弁のすべなく、24日に「不適切な発言で社会に悪影響を及ぼした」として、発言者の譴責(けんせき)処分を発表。発言者も「傷ついた方におわびします」と公式に陳謝した。
「日本語学習者なら日本に行け」
さて、ここからが問題だ。新浪など中国の大手ポータルサイトでは、この騒ぎをめぐる書き込みに女子学生への同情があまりみられない。
むしろ、「日本語学習者なら日本に行け」など、不当な発言を支持する意見が圧倒的に多かったのだ。
北京の大学で日本語を教える中国人教師は、「数年前から日本を嫌う雰囲気が若者を中心に広がり始めた。日本語を勉強したい学生が激減している」と国際電話で嘆いた。そのうえで「習近平政権によってここ数年強化された反日キャンペーンの影響が大きい」とその原因を分析した。
中国のテレビでは、旧日本軍の残虐性を強調する抗日ドラマが連日放映されてきた。
最近ではニュース番組でも、中国で相次ぐ日本人拘束事案を「日本人スパイ」と言い立てて、国民の反日感情を刺激している。
26日現在、8人の日本人が「違法な情報収集活動を行った」として中国で拘束されている。日本側の外交関係者はこれらの事件を「冤罪の可能性が高い」とみているが、ほとんどの中国人は当局の宣伝を素直に信じているのだ。(後略)【9月27日 産経】
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上記【産経】が指摘するような“ここ数年強化された反日キャンペーン”“日本たたきによって政権の求心力を高めようとしている”などによって、中国国民の反日感情が悪化している・・・・ということであれば、落胆するしかありません。
【「それにしても、日本にも同じようなネット民がいるんだな」】
しかし、必ずしも“ネット上の反応”をストレートに受け止めることもないのかも・・・と思わせる、日本側のネット反応に関する記事も。
****日本で中国製品不買運動?中国ネットで話題に****
・・・・日本では、大手メディアの報道はいずれも落ち着いた論調だったが、ネット上ではそれとは対照的に「端末の地域設定からも日本が外されているような小米は完全に反日企業だ」など反発が強まっており、不買運動を呼び掛ける書き込みもあるという。
この報道に、中国のネットユーザーからは次のようなコメントが書き込まれている。
「それなら私たちの漢字を使わないで」
「中国は前々から日本製品不買運動をしてるけど?」
「どう見たって小米が悪い。こんな社員がいるなんて俺だって気分悪いわ。不買する気持ちも分かる」
「日本を差別するのは何も悪くない」
「小米は謝ってるじゃないか。日本はいつ謝った?」
「それはそれ、これはこれだろ。この社員は本当に最悪」
「小米の肩を持つ人がいて驚いた。間違いは間違いだ」
「しかも差別した相手は日本人ではない。中国の大学生だぞ」
「日本語専攻ってだけで差別するなんて絶対間違ってる」
「王毅外相も日本語を専攻したし、駐日大使もしていた。勇気があるなら王外相もディスってみせろ」
「それにしても、日本にも同じようなネット民がいるんだな」【9月27日 Record china】
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どういう基準で選ばれた書き込みかわかりませんし、数のうえでどういう声が多いのかもわかりませんが、少なくとも取り上げられているもので見る限りは、小米(シャオミー)の対応を批判的に見ている者も少なからずいるように思われます。
一番共感できる意見は、最後の「それにしても、日本にも同じようなネット民がいるんだな」というもの。
中国側のネット上の反応にしても、日本側の反応にしても、およそネット上では“この類の”相手をディスって喜ぶようなものが多いのはそのとおりであり、そうしたものが社会全体を代表しているかのように過剰反応する必要もないのかも。
【変わりつつある中国社会】
少し気をとりなおして、中国社会の最近の“変化”について。
冒頭にあげた日本社会への称賛の裏返しとして、中国社会の“遅れ”“問題”を指摘する声が(特に日本側には)多々ありますし、私個人としても、そうした社会的問題が日中関係を阻害する大きな要因となっていると感じています。
社会上の問題が解消されて、日本から見ても理解可能な“成熟”した社会になっていけば、一部の情報で極端な反日に走るような愚かなことも少なくなるのでは・・・とも思います。
****悪習を減らそうする中国の努力を、国際社会は忍耐強く受け入れるべき****
2017年9月22日、参考消息網によると、中華圏の政治・法律・外国・台湾・マイノリティー・人権・安全保障・防衛といった政治の進展をフォローアップすることを目的とするスペインの「Observatorio de la Politica China(中国政治ウォッチャー)」は20日、「21世紀の社会的PRキャンペーン」と題する記事を掲載し、中国はさまざまなメディアを通じて国民にPRすることで、徐々に旧来の悪習をやめさせていると伝えている。
中国人がかつて海外で最も不評を買った行為は、ところかまわず痰を吐くことだった。だがここ20〜30年でそうした事例は大幅に減少している。長年にわたる撲滅キャンペーンが行われた結果だ。
中国政府は同様のPRを2〜3年ごとに多数行っている。フカヒレはことのほか珍重される食材だが、これもNBAの元スター選手の姚明(ヤオ・ミン)が「食べないようにしよう」とPRしたことで効果が上がった。こうしたキャンペーンは、幼稚園などの子どもに対しても行われている。
長く続いた悪習をやめさせるのは一朝一夕にはいかないだろう。国際社会は、中国のそうした姿勢や努力を忍耐強く受け入れるべきだ。【9月26日 Record china】
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確かに環境衛生の面では、私が初めて中国を旅行した30年ほど前に比べると、大きく変わってきています。
列に並ばない、割り込む云々も、最近の大都市を見る限り、大きく改善されているようにも見えます。
信号無視に対し、当局側が“顔認識システム”をつかった、やりすぎでは・・・とも思わせるような対応を取るようになっていることも9月11日ブログ“中国 顔認証システム、信用の可視化 その次にやってくるのはSNSによる「ランク社会」か”で取り上げました。
交通マナーにも変化の兆しがあるようです。
****中国人の交通マナーは向上中?ドライブレコーダーの「切ない映像」****
先日、中国河北省の路上で、道を譲ってくれたドライバーに対して女の子がお辞儀をして手を振る動画が注目され、称賛を集めた。最近はこうした中国人の交通マナー向上が感じられる動画も数多く投稿されるようになったが、中には切なくなってしまうものもある。
このほど、動画サイト・西瓜視頻に掲載されたドライブレコーダーの映像がそれだ。9月20日午前に河北省の路上で撮影されたもので、片側3車線の大通りを走行中のドライバーが、前方の横断歩道を渡ろうとしている男性と小学生くらいの男の子2人を発見。手前で停車し、道を譲った。
すると、2人の男の子はドライバーに向かって深々とお辞儀をする。
ここまでは心温まる映像なのだが、男の子たちが渡ろうとすると、隣の車線を走ってきた車とぶつかりそうに。結局、隣の車線の数台は道を譲ることなく走り去り、男の子たちはしばらくやり過ごした後、ようやく渡っていった。
ネットユーザーからは、「このドライバーは素晴らしいな」「お辞儀をされたドライバーはきっと一日気分が良かっただろうね」「2人の男の子は教養があるな」「2人の男の子に希望を見た」など、男の子とドライバーに称賛の声が寄せられる一方で、「歩行者に道を譲るドライバーが一人だけでは、我が国の民度も思いやられる」「このドライバーは学ぶべきだが、隣のレーンを走ってきた数台のドライバーはどうしようもないな」といった憤りのコメントも寄せられた。
同じく同サイトに掲載された別のドライブレコーダーの映像でも同様だ。横断歩道を渡ろうとする2人の子どもに、ドライブレコーダーを搭載した車が道を譲るのだが、隣の車線を走ってくる車は道を譲らない。
見かねたドライバーが隣の車線にゆっくりと車をはみ出させ、走ってくる車をブロックして子どもたちを渡らせてあげた。この動画にも、ドライバーへの称賛が寄せられている。
交通マナー向上が叫ばれて久しい中国。実際に「車が道を譲ってくれた」「歩行者からお辞儀をされた」といった体験談が増えるなど、一定の改善はみられるようだが、全体としてはまだ道半ばといったところだろうか。【9月27日 Record china】
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日本もかつては・・・ということもあります。
****「不衛生は下等国民の象徴」・・・今は清潔な日本だって、昔は結構不潔だったんだ=中国報道****
日本を訪れる中国人が一様に驚くのは街の清潔さだが、日本はいつから清潔さを実現していたのだろうか。中国メディアの今日頭条は1950年当時の日本の写真を紹介しつつ、「日本の清潔さは1日にしてもたらされたものではない」とする記事を掲載した。(後略)【9月25日 Searchina】
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社会変化には、所得向上と時間が必要です。
【高倉健・山口百恵の「旧世界」から、初音ミクの「新世界」へ】
時間の経過に伴って、世代による変化も生まれます。
中国で活躍する福岡出身の女優、女優の松峰莉璃さんは以下のようにも。
****激変する中国と、変わりつつある日本人像****
留学当時と現在の中国を比べると、「全部変わった」というほど様変わりする姿を目のあたりにしてきた松峰さん。
同時に、中国人の日本人像にも変化が生じているという。当時、第一線で活躍していた60年代生まれの中国人が思い描く日本人像は高倉健や山口百恵。
松峰さんの世代とは違う日本人のイメージにプレッシャーを感じることも多かったというが、「今仕事を一緒にしているのはほとんど80後(1980年代生まれ)や85後(1985年代生まれ)で、その多くが海外経験があり、私が留学してみたいと思い、実現したのと同じような感覚と年齢で海外に行って、受け入れたものや考え方も似ているので、この世代が大好きです。
彼らにとって日本人はもう高倉健でも山口百恵でもなく、初音ミクなんです。相手の国籍は関係ないというオーラが感じられ、楽しくて気が合うならいつでもウェルカムというスタンスも私と似ています。(後略)【9月21日 Record china】
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国際関係研究者の北野幸伯氏も、『大国の暴走 「米・中・露」三帝国はなぜ世界を脅かすのか』( 渡部恒雄・近藤大介・小泉悠 著/講談社)の紹介で、以下のようにも世代間の差を指摘しています。
****日本人は知らない、反日教育になびかぬ2億人もの中国人たち****
(中略)
中国にある、「旧世界」と「新世界」
近藤先生は、145pから、中国の「旧世界」と「新世界」について触れています。「??????????」ですね。「旧世界」ってなんでしょう? 「新世界」ってなんでしょう?
旧世界というのは習近平総書記を絶対指導者として戴く中国共産党の権威主義的世界で、こちらはひたすら全国民を洗脳しようとしています。
わかります。まさに、日本人のイメージしている、今の中国ですね。では、「新世界」とは??
一方の新世界は、そういう価値観とは全く相容れない若い一人っ子世代の世界。彼らは抗日ドラマなんかに目を向けないし、そもそもテレビ自体観ない。スマホで日本のアニメを観て、ゲームに興じているんです。
なるほど〜、「新世界」の中国人は、「抗日ドラマ」を見ないのですね。いったいどのくらいの人が、「新世界の住人」なのでしょうか?
こういう層が人口にして約2億人いて、中間層を構成しています。
2億人!!! ものすごい数じゃないですか??? 「抗日ドラマ」を見ない彼ら。それでも、やはり「反日」なのでしょうか???
彼らは日本にもたびたび旅行に来ていて、日本に来ることでよけいに日本好きになって帰っていくので、どんなに反日教育を受けても全然なびきません。
一人っ子で甘やかされて育っていますから、消費することにも貪欲で、普通の買い物も日系のコンビニで済ませます。
いいですね〜。日本を憎悪していない「新世界の住人」が中国の中枢で活躍するようになるとき、日中は、ようやくまともな関係を築けるようになるかもしれません。
というわけで皆さん、日本に来ている中国の人たちに優しくしましょう。彼らは、「新世界の住人」で、将来日本と中国がまともな関係になるよう、尽力してくれるかもしれません。
今日の出所は、本当に面白いので、是非ご一読ください。【9月21日 MAG2NEWS】
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“どんなに反日教育を受けても全然なびきません”・・・そこまで言えるかどうかは疑問もありますが、「新世界の住人」の感覚が旧来と大きく異なるのは事実でしょう。
今後の日中関係についても、そこに期待したいものです。
なお、“上から目線”で中国社会を云々する話が多くなりましたが、日本は日本で多くの問題を抱えています。
そこにも触れるべきでしょうが、長くなるので別機会に。
日本の場合、中国に比べ“変化のエネルギー”に欠けているところもあります。また、ひたすら“日本流”にのめりこむところも。
政治の世界における“希望のなんちゃら”は、変化の起爆剤になるのでしょうか?