(ラスベガスの大麻栽培施設【8月31日 WSJ】)
【大規模山火事 全米で消費される大麻の6割を生産しているカリフォルニアに打撃】
先週発生したアメリカ・カリフォルニア州の山火事は、カリフォルニア州史上最も多い40人の死者、消失建造物約5700棟という大きな被害を出し、いまだ鎮火していません。
“北風の勢いは今日いっぱい続き、今夜までには弱くなると予想されている”【10月15日 AFP】とのことですので、そろそろ下火になるのでしょうか。
****山火事の死者40人に=スヌーピー作者の家も焼失―米加州****
米メディアによると、西部カリフォルニア州で広がった山火事による死者数は14日、40人に達した。1万人以上を投入して消火作業が続いているが、これまでに約10万人が避難を強いられ、数百人と依然連絡が取れていない。
ソノマ郡の中心都市サンタローザでは、スヌーピーのキャラクターで有名な漫画「ピーナッツ」の作者チャールズ・シュルツ氏が2000年に亡くなるまで長年暮らした家が焼失した。作品などは近くの博物館に所蔵されており、難を逃れたという。
今月8日に発生した山火事は、ワインの産地として知られるナパ郡やソノマ郡を中心に燃え広がり、これまでに約5700棟の建物が損壊した。【10月15日 時事】
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アメリカ西部の大規模山火事は毎年のようにニュースで見るような感じもしますが、広いアメリカのことですから、現地住民からすれば「思いもかけない」災害なのでしょう。
記事で言及されているワインよりも影響が大きそうなのが、大麻(マリファナ)生産です。
****<米国>山火事、大麻産業にも打撃・・・・全米消費の6割生産****
ワインの産地として有名な米西部カリフォルニア州北部の山火事で、米メディアは12日、死者の数がソノマ郡など4郡で29人になったと報じた。火災が広がった地域は全米有数の大麻の生産地で、大麻産業にも打撃を与えている。
米紙によると、同州は全米で消費される大麻の6割を生産しているとされる。連邦法では大麻の所持や販売は禁じられているが、同州では医療用大麻は合法で、来年1月には娯楽用も解禁になる。生産者は大麻の全面解禁による需要増に備えてきたという。
8人の死亡が確認されたメンドシーノ郡は「エメラルド・トライアングル」と呼ばれる全米最大の大麻生産地の一角にある。サンフランシスコ・クロニクル紙によると、その南のソノマ郡も推定3000〜9000の大麻農園があり、「両郡の被害は過去最悪だ」という業界団体の分析を伝えている。
大麻生産は違法とする連邦法に従い、被害に遭った生産者は政府の緊急救援基金や火災保険の対象外となるため、復旧に時間がかかる見通し。
8日の発生から4日がたった12日も火は燃え広がっており、東京23区の面積(約620平方キロ)を超える770平方キロが焼失した。【10月13日 毎日】
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【28州とワシントンD.C.で大麻が解禁】
連邦法では違法だが、州法で認められている・・・このあたりが日本人からするとピンと来ないところで、“合衆国”の合衆国たる所以でしょう。
大麻(マリファナ)については、世界的に許容する方向の流れとなっていますが、アメリカでも先の大統領選挙に合わせて多くの州で住民投票が行われ、合法化が一段と加速されたようです。
****全米9州の住民投票で大麻が合法化。大麻合法化州が28州に拡大****
全米9州で11月8日、大麻(マリファナ)に使用を合法化する住民投票が行われた。
「大麻」とは植物そのものであり、それを乾燥させ、吸引用にしたものをマリファナという。
大麻の全面合法化を問うたのが、メーン州、カリフォルニア州、マサチューセッツ州、ネヴァダ州、アリゾナ州の5州。
医療目的での限定的な大麻合法化を問うたのが、アーカンソー州、フロリダ州、モンタナ州、ノースダコタ州の4州。
そのうちアリゾナ州を除く8州で、大麻合法化賛成が多数を占め、合法化されることとなった。
米国では他の州でも大麻の合法化が進んでいる。すでに全面合法化を決めている州は、アラスカ州、ワシントン州、オレゴン州、コロラド州で、今回の新規4州を含めて全部で8州となった。
医療目的限定の合法化を定めているのは、アリゾナ州、ニューメキシコ州、ミネソタ州、ミシガン州、イリノイ州、ルイジアナ州、ペンシルバニア州、メリーランド州、デラウェア州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、コネティカット州、ロードアイランド州、バーモント州、ニューハンプシャー州、ハワイ州の16州で、今回の合法化4州を含めて20州となった。
結果、今回の住民投票を受け、28州とワシントンD.C.で大麻が解禁されることとなった。合法化州は、北東部のニューイングランド地域や西海岸エリアなど、リベラル派住民の多い都市州に多いことが特徴的だ。
米国では、連邦政府レベルでは、大麻は医療用、嗜好用共に禁止されている。しかし州内での合法化は州政府レベルで決定できることとなっている。
米国での大麻合法化のプロセスは、まず医療用として栽培・使用したいという要望があがり、続いて嗜好用の栽培・使用につながってきている。
例えば、カリフォルニア州では、1996年に医療用大麻の栽培・使用がまず合法化。2010年に嗜好用大麻の栽培・使用に向けた住民投票「プロポジション19」が実施されたが、結果は反対53.5%、賛成46.5%で否決されたが、今回の住民投票「プロポジション64」では賛成56.66%、反対43.34%で合法賛成が過半数を占めた。
カリフォルニア州では、大麻の合法化により、21歳以上の人は嗜好用として最大6鉢の大麻を栽培・使用できるが、栽培は個人宅など閉じられた空間のみに限定されている。またライセンスを得た場合には販売も可能となる。
学校、児童館、ユースセンターの600フィート(約182メートル)以内では販売活動は禁止される。
また、嗜好用大麻の栽培や販売には税金が課せられる。州レベルでは、栽培には花の部分に1オンス(約28g)当たり9.25米ドル、葉の部分に2.75米ドルで、販売には価格の15%相当の課税が予定されている。
また、郡政府や市政府にも独自の許認可付与制度と追加課税権限を付与した。大麻合法化には、政府の税収増の側面もある。税金の使途としては、大麻関連の研究、若者向け薬物関連の教育プログラム、違法な大麻栽培による環境破壊の修復等。
では、医療用大麻の効用はどの程度立証されているのだろうか。世界保健機関(WHO)のホームページには、ハーバード・メディカル・スクールのBertha K. Madras精神生物学教授とマサチューセッツ州のマクリーン病院アルコール・薬物乱用リサーチプログラムの共同論文「Update of Cannabis and its medical use」が掲載されている。
この研究では、医療用の大麻の使用に関する過去の論文335本をレビューした。結論としては、医療用大麻の効果を確実に示す根拠は乏しいと述べ、また安全性や副作用につながる可能性も指摘している。
ギャラップ社が10月に実施した調査によると、大麻に加え、ヘロイン、コカイン、アルコール、たばこなどの問題性に関し、一般市民が危険度が低いとしたのは断トツで大麻。次いで、コカイン、アルコール、タバコ、ヘロインの順で、米国ではマリファナやコカインより、アルコールやタバコのほうが社会の危険度が高いという声が多い。
特に大麻は合法化しても良いという声が増えており、今後大麻合法州が増えていく可能性が高い。【2016年12月3日 Sustainable Japan】
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大麻はともかく、コカインよりもアルコールやタバコのほうが社会の危険度が高いというのも、“そうかな・・・・?”という感もありますが、大麻、たばこ、アルコールは似たようなものでしょう。嗜好性においても、害毒においても。
個人的にはたばこは吸いますが、アルコールは飲みません。ですから、最近のたばこを“迫害”する風潮の一方で、アルコールが咎められない社会、飲めない人間が肩身が狭いような社会については“理不尽”なものを感じています。正直なところ、正体なく酔っ払った者などは撃ち殺してもいいぐらいに感じるのですが。
そのように社会的規制というものは所詮“理不尽”なものに過ぎませんから、大麻についても害毒・副作用を強調するような声には、あまり説得性を感じません。
【解禁で供給過剰・値崩れ 健康志向・環境重視に沿った差別化も】
アメリカではこれまで、大麻が各州で解禁される流れの中で、供給過剰による値崩れが起きていました。
****マリフアナ栽培業者、新たな試練は価格下落****
合法化が進み生産増加、健康・環境志向で差別化狙う業者も
警察の捜査をかわし、合法化を求めて長年闘ってきた米国の大麻栽培業者が新たな難問に直面している。価格の低下だ。
米国では多くの州で娯楽用・医療用としての大麻の使用が合法化され、大麻の生産ブームを招いた。その結果、ワシントン州やコロラド州など各地で卸売価格が下落している。
大麻の市場規模は、年間小売売上高が1190億ドル(約13兆円)に上る米たばこ産業と比べるとまだ小さい。それでも市場調査会社ユーロモニター・インターナショナルと証券会社コーウェン・アンド・カンパニーのデータによると、大麻の年間の小売売上高は60億ドルを超えた。
大麻を吸う人間にとって価格下落はありがたい話だ。米大麻市場を調査するニュー・リーフ・データ・サービシズによると、卸売価格の下落で利益を上げた小売業者も一部あったものの、娯楽用・医療用の小売価格も下がっている。
調剤薬局2店舗を運営するシアトルの小売業者ハッシュタグ・カナビスでは、卸売価格の下落は小売価格に如実に現れている。共同経営者のジェリーナ・ピラート氏によると、ボンディ・ファームス(ワシントン州)が生産した「スーパー・シルバー・レモン・ヘイズ」――緑色と褐色の塊で、プラスチック製のボトルに詰められて陳列されている――は現在1グラム約10ドルで販売されているが、2015年9月には1グラム15ドルだった。
しかし栽培業者――ハイテク倉庫で栽培している業者も、田舎で合法的に栽培を始めた業者も――にとって価格下落は厳しい事態だ。
ニュー・リーフによると、米国の大麻の平均卸売価格は15年9月に1ポンド(約454グラム)当たり2133ドル前後の高値を付けたが、今年7月には1614ドルにまで下落した。米国中西部でトウモロコシや大豆を生産する農家が記録的な豊作のあとに直面するような価格の下げ方だ。
ニュー・リーフのジョナサン・ルービン最高経営責任者(CEO)は「業界や生産者、小売業者の側では、市場がコモディティー(日用品)化したとの認識が高まっている」と話す。
食品業界に倣う
こうした状況を受けて一部の栽培業者は、健康志向・環境志向の消費者へのアピールを強める食品業界に倣おうとしている。
有機食品の売上高は従来の食料品を上回るペースで伸びている。遺伝子組み換え作物やグルテン、人工香味料を使用しない食品は陳列棚を好きなだけ使って、高い価格で売られている。スティーブン・ジェンセン氏は15年にワシントン州で大麻栽培の免許を取得した。まだ利益は出ていないが、自然栽培が売りだという。
「私たちの製品を選ぶ理由を消費者に与える必要があった」。ジェンセン氏は経営するグリーン・バーン・ファームズで合成殺虫剤の使用を控え、強力な照明機器ではなく自然光で大麻を育てている。州内に1100以上あるライバル業者との差別化を期待してのことだという。
連邦法では大麻は今も違法であるため、大麻は農務省だけが付与できる「有機」認証を受けることができない。
栽培業者は有機認証の代わりに、太陽光の使用と水を保全する手法を義務付ける「屋外栽培認証」などの表示を使用している。29の州で大麻が何らかの形で合法化された今、業者はこうした表示を使うことで、消費者の関心を引き、より多くの製品が陳列棚に並ぶことを期待している。
こうした差別化の動きは栽培業者の分裂を招いている。
業界関係者によると、屋内栽培の大麻は品質が比較的安定している。制御された環境と強力な照明により、年間で複数回の収穫が可能だ。屋内栽培の大麻はつぼみに隙間がなく、黄緑色であることが多く、消費者の目を引く。比較的高い値段が付くが、生産コストも高くなることもある。
屋外や温室で栽培された大麻を提唱する人々によると、屋内の栽培施設は合成肥料に頼っており、大量の電力を消費する。12年にカリフォルニア大学の上級科学者エバン・ミルズ氏が発表した論文では、大麻の屋内生産は国内の電力消費の1%を占めるとの試算があったという。ただし電力消費量の少ないLED照明を使い始めている栽培業者もある。
栽培は屋内か屋外か
カナソル・ファームス(ワシントン州)の経営者で、屋外栽培業者団体の代表を務めるジェレミー・モバーグ氏は大麻喫煙者が今後、環境への負荷を気に掛けるようになると話す。(中略)
多くの大麻業界関係者は最終的にはビール業界に似た状況になると予想している。ビール業界ではバドワイザーやブッシュといった安価な大量生産品の陰で価格の高いクラフトビールがファンを集めている。
栽培業者や小売業者によると、高品質の大麻や専門のブランドが高い価格で販売される可能性がある一方で、多くの低品質の大麻はオイルに加工され、噴霧器用カートリッジや、ブラウニーやクッキーなど大人向けの焼き菓子に使われるようになるという。
シアトルのジェンセン氏は、太陽光の下で時間をかけて自然な状態で生産した自社の大麻が市場価格の平均を20~30%上回ることを期待しているという。
ジェンセン氏は「私は買い物に行けばいつも自然食品を買う。(大麻)業界でも将来、同じようなことが起きると思う」と話す。ただ「そういう意識を広めるのは戦いだ」。【8月31日 WSJ】
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環境にもやさしく、有機栽培で“健康志向”にも沿ったマリファナ・・・そのうち“特保”認定マリファナも出てきたりして。
いずれにしても、全米で消費される大麻の6割を生産しているカリフォルニア州の大規模山火事は、大麻供給サイドにすれば、生産調整・価格回復につながる話かも。
【ビールを駆逐するマリファナ】
ちなみに、上記記事でビールの話が出ていますが、マリファナ解禁でビールが駆逐されているとも。
****米ビール業界を襲うマリファナ「快進撃」****
<娯楽使用のマリファナが合法化されたアメリカの各州で、マリファナの人気に押されてビールの消費が落ち込んでいることがわかった>
・・・・アメリカの若者の間では、ビールやマリファナは盛大に楽しむのに欠かせない必須アイテムになっている。だがそんなアメリカで今、ビールが近い将来、存在感を失うかもしれないことが話題になっている。
アメリカのマリファナ研究団体「カナビズ消費者グループ(C2G)」が最近公表した調査結果によれば、現在、アメリカ人の4人に1人が、ビールよりもマリファナに金を使うようになっていることがわかった。
マリファナ派の中には、まだマリファナが合法化されていない州の住民も含まれ、彼らの多くは娯楽用のマリファナが地元で合法になれば、ビールよりもマリファナを選択すると答えている。
アメリカでは最近、マリファナの娯楽使用を合法化する動きが進み、現在8つ州がすでに合法化している。そんな背景もあってマリファナ吸引者はどんどん増加中で、2016年には2400万人以上のアメリカ人がマリファナを使用している。
しかもマリファナは、合法化が進む中で若者たちの間にも広がりを見せている。最近の若者は、酒を飲んで騒ぐよりもマリファナでキメるのを好む傾向がある。
言うまでもなく、この傾向は米ビール業界にとっては深刻な打撃になりそうだ。全米のビールの売り上げは現在、年間1000億ドルに達する。だがマリファナが全米で合法化されれば、ビール業界は全売上の7%ほどを失うと指摘されている。これは20億ドル規模の損失を意味する。(中略)
その逆に、マリファナによる経済効果は大きい。例えば2014年に大麻を合法化したコロラド州では、大麻の売り上げが9億9600万ドルに達し、1万8000人以上の雇用を創出している。マリファナを吸いに行く「大麻ツーリズム」なるものも誕生している。
マリファナの合法化が、コロラドでは約24億ドル規模の経済効果をもたらしているという。そんな状況を見た他の州が、合法化を考慮しないはずがない。ちなみにマリファナ市場は今後、500億ドル規模にまで成長すると見込まれている。(中略)
ただビール業界にとっては朗報もある。ドナルド・トランプ大統領の存在だ。
実は、米連邦法では大麻は違法だ。それにもかかわらず、各州が独自の州法で合法化しているというのが実情だ。米司法省によれば、各州が未成年者の手に渡らないよう適切に規制などをしていれば、国が州の方針に介入することはないという。
ただトランプはマリファナを違法な薬物であると否定的に見ていて、すでに娯楽使用を合法化している8つの州を取り締まる可能性すらあると言われている。少なくとも、トランプ(と、マリファナ嫌いで知られるジェフ・セッションズ司法長官)がホワイトハウスにいる間は、連邦法などでマリファナの規制が大幅に緩和されることはなさそうだ。
いずれにしても、アメリカでマリファナを支持する人は多く、各種調査結果などを見ても今後さらに需要が高まっていくことになるだろう。
アメリカのビール業界は戦々恐々としている。【3月24日 Newsweek】
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なお、“マリファナ成分入りのビール”も開発されているとか。