孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフリカ  中国をはじめ多くの国から“求愛”を受けながらも貧困から脱却できない事情

2024-09-18 22:56:19 | アフリカ

(6日、アンゴラ・ルアンダで中国海軍病院船「平和の方舟」の中国人医師の診察を待つ患者ら。【9月14日 新華社】)

【習近平主席 「中国とアフリカの関係は新時代の『全天候型運命共同体』にレベルアップする」】
9月3日ブログ“中国 中国・アフリカ協力フォーラムサミット開催 変化するアフリカ向け融資”でも取り上げたように、中国の対アフリカ支援に近年“バラマキ”から“収益性重視”という変化が見られます。

****中国、「ばらまき」から収益性重視か-曲がり角の対アフリカ融資****
中国は10年以上にわたり「一帯一路」構想を通じ1200億ドルを支援
「債務のわな」や搾取、汚職といった批判がつきまとう

中国の習近平国家主席がアフリカ各国の首脳を北京に今週迎える際、習氏はアフリカ側への貸し付け規模を縮小し、中国が引き換えに何を求めているのかをより明確に示すとみられる。つまり、リターンの向上とトラブルの減少だ。(後略)【9月3日 Bloomberg】
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****中国の対アフリカ開発融資、最盛期の6分の1 撤退した分野とは?****
中国が2023年にアフリカ諸国向けに決定した開発融資は総額約46億ドル(約6700億円)で、最盛期のおよそ6分の1だった。米ボストン大グローバル開発政策センターの集計で判明した。経済が停滞した新型コロナ禍以降では初めて上昇に転じたが、中国がある分野からは手を引いたことがうかがえるという。

中国は00年代以降、巨大経済圏構想「一帯一路」に沿って、豊富な天然資源を有するアフリカへの進出を強化してきた。エネルギー・資源開発や、道路や空港・港湾といった輸送インフラ整備、防衛、農業など分野は多岐にわたり、ピークの16年には計288億ドル(約4兆2300億円)に達した。

ただコロナ禍では、経済基盤が弱いアフリカ諸国の国家財政は大きな打撃を受け、対外債務の返済が厳しくなるケースが続出。中国も不良債権化を恐れて新規融資を抑えるようになり、22年には融資総額が10億ドル(約1470億円)にまで落ち込んだ。

23年にはこういったコロナ禍のダメージからの回復傾向が見られる。同センターによると中国は23年、ナイジェリアでの鉄道網整備▽マダガスカルでの水力発電所の建設▽アンゴラでのインターネット網整備――など8カ国と13件の融資契約を結んだ。

一方、中国が最近アフリカで融資を行っていないのが、石炭火力発電所計画だ。習近平国家主席は地球規模の気候変動対策の一環として、21年9月の国連総会で「石炭火力発電所の新たな輸出はしない」と発言した。同センターの集計でも、19年以降は新規の石炭火力発電所融資は確認されていない。中国がアフリカでも「脱炭素」にかじを切っていることが読み取れる。

中国の海外開発融資は「外交機密」を理由に詳細が公表されないケースがある。また中国の企業や人材を利用することが前提の「ひも付き」の融資が大半だ。支援を受ける側が返済に窮し、資産などを差し押さえられてしまう「債務のわな」に陥るリスクが高いと国際的に批判されてきた。

同センターによると、中国は近年、アフリカ輸出入銀行(エジプト・カイロ)やアフリカ金融公社(ナイジェリア・ラゴス)といった国際的な開発金融機関を通じた融資にも力を入れている。中国政府が前面に出ることがないため、融資に伴うリスクや批判を回避できるメリットがある。

中国が00〜23年に行ったアフリカ向け融資は、49カ国と七つの開発金融機関などに対して計約1823億ドル(約27兆円)だった。中国は今後、従来の「重厚長大」から「量より質」を重視する路線にかじを切りつつ、アフリカへの影響力を維持・拡大していく狙いとみられる。【平野光芳】
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そうした支援・融資の質・量の変化はあるものの、中国は毛沢東時代から一貫して対アフリカ外交を重視しており、そのことは今も変わりません。

****中国が6年ぶりにアフリカ諸国と首脳会合 グローバルサウスを取り込みへ 北京で6日まで****
中国とアフリカ諸国が参加する「中国アフリカ協力フォーラム」の首脳会合が4日、北京で開幕。2018年以来6年ぶりの開催となる。

習近平国家主席は会合出席のため訪中した各国首脳と相次いで会談し、グローバルサウス(南半球を中心とした新興・途上国)の取り込みを図った。

2000年に発足した同フォーラムには50カ国以上が参加している。6日まで開かれる今回の首脳会合について、中国メディアは「中国が近年主催した外交行事中で最大規模」と強調する。(中略)

習氏は4日までに20カ国以上の首脳と個別に会談し、南アフリカやナイジェリアなどと2国間関係の格上げを宣言した。ロイター通信によると、4日にはタンザニアとザンビアを結ぶ鉄道の改修に向けた合意文書の署名に習氏も立ち会った。

中国としては、米欧との対立激化も念頭にグローバルサウスとの関係強化を進める狙いとみられる。習氏は2日に行った南アフリカのラマポーザ大統領との会談で、「国際情勢が複雑になるほど、グローバルサウス諸国はますます独立自主、団結、協力を堅持し、国際的な公平や正義をともに守る必要がある」と発言した。【9月4日 産経】
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****習主席「運命共同体だ」関税ゼロに200億円の食糧援助…会議にアフリカ50カ国超が参加****
中国が主催し、アフリカの50以上の国の首脳らが参加する会議が北京で開かれ、習近平国家主席が「中国とアフリカは運命共同体だ」とアピールしました。

中国 習近平国家主席 「中国とアフリカの関係は新時代の『全天候型運命共同体』にレベルアップする」

「中国アフリカ協力フォーラム」の開幕式で習主席は貿易や農業など10分野での協力を打ち出しました。
貿易では発展途上国33カ国の製品の関税をゼロにする優遇措置を取るほか、食糧援助として10億元、約200億円を提供するとしています。

また、安全保障分野でも同じく10億元を無償援助し、アフリカの軍人などの育成に協力するとしました。

中国はこれらの援助を通じ、「グローバルサウス」と呼ばれるアフリカ諸国への影響力を高めたい考えです。

アフリカ記者 「中国はウガンダに友好的なローンを提供してくれる。多くのインフラのメガプロジェクトが役に立つ」

会議にはアフリカ各国から多くの記者も招待され、各国に成果を強調する狙いもあります。【9月5日 テレ朝news】
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****対アフリカで7兆円支援へ=「米欧との違い」アピール―中国主席****
中国の習近平国家主席は5日、北京で開催中の「中国アフリカ協力フォーラム」首脳会合で基調演説を行った。アフリカ諸国首脳が一堂に会する中、今後3年間で3600億元(約7兆3000億円)の資金援助を実施することや、軍事協力の強化を表明した。

首脳会合は4〜6日の日程で、中国外務省によると、50以上のアフリカ諸国・機関の首脳らが出席した。習氏は5日の演説で「中国とアフリカの関係は史上最良だ」と強調。

対立する米国を念頭に「西側諸国は近代化の過程で多くの発展途上国に苦難をもたらしたが、中国とアフリカは絶えず歴史の不公平を正そうとしてきた」と述べ、米欧との違いをアピールした。【9月5日 時事】
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また、経済・安全保障だけでなく、医療支援といったイメージアップ活動も行っているあたり、明確な国家戦略が窺えます。

****中国海軍の病院船「平和の方舟」、コンゴ共和国訪問へ****
海外医療支援任務「和諧使命−2024」を遂行中の中国海軍病院船「平和の方舟」が11日、アンゴラでの7日間にわたる友好訪問を終え、同国のルアンダ港を離れて7カ所目の訪問先となるコンゴ共和国に向かった。【9月14日 新華社】
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また、国家レベルの支援だけでなく、人的レベルでの交流も盛んに行われています。

****中国の若者はアフリカ就職を目指す 年々深まるアフリカとの関係 習主席「歴史上もっとも良い」背景に失業率や激しい競争****
近年、中国とますます関係を深めているのがアフリカの諸国です。こうした中、今、国では就職先としてアフリカを目指す若者が増えています。(中略)

中国で始まった中国アフリカ協力フォーラム。習近平国家主席は今後3年間で7兆円を超える規模の資金を拠出すると表明しました。

中国 習近平 国家主席 「中国とアフリカ諸国の関係は現在、歴史上、最も良い時期にある」

習主席が強調するように、中国とアフリカの関係は年々深まっています。現在、中国とアフリカの貿易額は過去最高を記録。ここ10年だけでもおよそ1.5倍に拡大しました。農業やインフラ建設に加え、最近は電気自動車やIT分野での経済的な結びつきが顕著です。

こうした中、今、就職先としてアフリカを目指す中国の若者が増えています。

劉さん 「私は今、ナイロビにいます。このような決断をするとは思っていませんでした」

ケニアの首都・ナイロビで半年前から不動産関連の企業で働く劉さん(23)。なぜ、アフリカで就職しようと思ったのでしょうか?

劉さん 「中国の深センで働いていましたが 仕事は好きではありませんでした。競争が激しく、残業が当たり前で、給料もよくなかったからです」

彼女のように激しい競争を避け、アフリカを目指す若者が、ここ数年、増えているといいます。また、若者の失業率が高いこともアフリカへの就職に拍車をかけていると中国メディアは伝えています。

今ではケニアでの暮らしに満足しているという劉さん。

劉さん 「来る前はアフリカは貧しく、安全ではないという情報ばかりでしたが、来てみたら良かったです。アフリカには、まだ多くのチャンスがあります」

今後、新たな活躍の場を求め、新天地を目指す若者はますます増えそうです。【9月5日 TBS NEWS DIG】
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日本では“アフリカでの就職を目指す”若者・・・まず見ないですね。このあたりが、アフリカに対する姿勢に関する日中の違いでもあります。その姿勢・認識が変わらないと日本がTICADでいくらカネをバラまいても余り効果も上がらないかも。

【中国をはじめ多くの国から“求愛”を受けながらも貧困から脱却できないアフリカ 債務問題と内戦等による人道的危機の問題が重大な制約に】
“グローバルサウス”重視の昨今、中国だけでなく、日本や欧米、更にはインドや中東湾岸諸国をはじめとする多くのミドルパワーがアフリカへの働きかけを強めていますが、“21世紀はアフリカの世紀”と言われつつも、アフリカの現状は芳しくありません。

****<“ミドルパワー”から求愛されるアフリカ>盛んな投資を受けるも貧困から脱却できない複雑な背景****
フィナンシャル・タイムズ紙(FT)の8月30日付社説‘The middle-power competition in Africa’が、アフリカにおいて湾岸諸国等のミドルパワーの影響力争いによりもたらされている成長の機会をアフリカ諸国が無駄にしている、と論じている。要旨は次の通り。

アフリカが世界の主要議題となることはほとんどない。しかし、このような明白な経済的、戦略的影響力の欠如にもかかわらず多くのアフリカ諸国は、トルコ、ブラジル、ロシアなど様々な国から求愛されている。

このような「ミドルパワー」の関心は、アフリカの指導者たちに投資と戦略的パートナーに関する多くの選択肢を提示している。

このような多様な選択の可能性を巧みに利用すれば、各国が貧困から脱却できる機会になるかもしれない。重要なインフラ・プロジェクトに関しより良い取引ができ、一次産品取引に原材料の国内加工を伴うことを主張することもできる。アフリカ大陸自由貿易地域を加速させるべきであり、それだけで分断された経済を魅力的な単一市場に変えることができる。

英、仏といった旧植民地大国は長年にわたり、アフリカ大陸に生産的に関与しようと苦闘してきたが、かえって反発を招いてきた。

米国は、冷戦後、冷淡になった。投資家は、アフリカとの距離と厳しい贈賄防止法によって意欲をそがれた。ワシントンはアフリカをほとんど安全保障の観点からしか見なかったが、バイデン大統領のもとで、戸惑いながらも再関与の兆しを見せている。

米国と欧州の影響力の相対的な低下による空白を最初に埋めたのは中国である。その後にインドや湾岸諸国をはじめとする多くのミドルパワーが加わった、アフリカは国連に人材と票を提供している。

長期的には、アフリカには市場が約束されている。2050年までにアフリカの人口は25億人に達しその半分は25歳以下である。彼らがそこそこの生活水準に達するだけで、それは大量の消費者となる。また、コバルト、リチウム、マンガン、銅などのエネルギー転換鉱物をめぐる競争も激化している。

アフリカから見れば、この新たな関心は選択肢を意味する。タンザニアはドバイが運営する港を、ガーナとニジェールはトルコが建設する空港ターミナルを、中央アフリカとマリはロシアの傭兵を選んだ。

選択肢にはコストが伴う。欧州のアフリカへの投資は、中国にはない国内的な精査を受けることになる。しかし、中国からの借金の累積は、ザンビアからエチオピアに至るまで、債務不履行の波につながっている。

無用の長物のような投資が多すぎるのだ。ケニアに建設された40億ドルの中国鉄道は、経済の生産性向上よりも、政治家の取り巻きのために建設された。

ミドルパワーは、新たな安全保障上の絡みをもたらしている。スーダンの内戦へのアラブ首長国連邦(UAE)の介入は、世界最悪の人道的大惨事を長引かせている。金やダイヤモンドで報酬を得るロシアの傭兵は、経済的、社会的発展の面では何も提供しない。

ケニアの抗議者たちが指摘しているように、アフリカの指導者たちは、国家の発展のためではなく、自分たちの利益のために行動することがあまりにも多い。

アフリカにおける競争は、より多くの成長、より多くの製造業、そしてより多くの雇用の拡大が期待できるが、提供されている新たな関与のパターンによる機会を、今のところ、ほとんどのアフリカの政府が浪費している。

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アフリカの発展へ考慮すべき点
上記の社説の、ミドルパワーのアフリカへの関心を効果的に利用すべきだとの指摘は、現状の一面において的確な指摘ではあるが、アフリカの発展について論ずるのであれば、社説中に簡単に言及のある、債務問題と内戦等による人道的危機の問題が重大な制約となっていることを無視することはできず、これらの面を合わせて考慮しなければバランスが取れない。

8月28日付ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙の解説記事によれば、アフリカの対外債務は昨年末で1兆1000億ドル以上に達し、20カ国以上が過剰債務を抱え、外国債権者の数と多様性が従来になく際立ち、解決を困難にしている。

対外債務はナイジェリアで400億ドル、ケニアで350億ドル、ウガンダで120億ドルに達し、債務返済のための増税に反対する大規模な抗議活動やインフレ、極度の貧困の下での反政府デモが頻発している。

これらの国の債務の70~80%は中国が債権者であるが、中国は、債務救済に消極的で、債務不履行に陥ったザンビアは、債務再編まで4年近くかかった。この債務問題は、アフリカから成長の機会を奪い、社会的不安定を煽るものである。

また、人道的危機については、現在、スーダン、マリからナイジェリア北部に至るサヘル地域、中央アフリカ、コンゴ民主共和国東部、ソマリア、リビアといった地域で、内戦や過激派イスラム組織との武力衝突といった状況がある。

特に、スーダンでは、1年以上続く内戦で850万人の避難民が生じており、反乱軍を支援するアラブ首長国連邦が紛争終結の鍵を握るとされている。また、コンゴ民主共和国東部ではルワンダが介入する長年の紛争で730万人が故郷を追われた避難民となっているとされる。(後略)【9月16日 WEDGE】
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9月5日、国連のグテレス事務総長は中国アフリカ協力フォーラム首脳会合でアフリカ諸国について、不十分な債務救済や資源の乏しさが社会不安につながっているとの認識を示し、国際的な金融構造の改革を促しています。

****国連事務総長、不十分な債務救済がアフリカの社会不安の原因と警告****
国連のグテレス事務総長は5日、アフリカ諸国について、不十分な債務救済や資源の乏しさが社会不安につながっているとの認識を示し、国際的な金融構造の改革を促した。

ケニアでは増税に反対するデモ隊と警察が衝突し、ナイジェリアや ウガンダでは生活費を巡り抗議デモが発生した。

アフリカ諸国は20カ国・地域(G20)が提唱した「共通枠組み」を通じた債務再編を模索してきたが、協議は期待通りに進んでいない。

ザンビアは6月、債務不履行から3年以上を経て、このスキームを活用した債務再編に成功した最初の例となった。

グテレス氏は北京で開催された中国アフリカ協力フォーラム首脳会合で、アフリカの債務は「持続不可能で社会不安の原因となっている」と指摘。

「アフリカは効果的な債務救済を受けることができず、資源も乏しく、国民の基本的なニーズに応えるための資金も明らかに不足している」と述べた。

その上で「時代遅れで非効率的な国際金融構造の抜本的改革」の重要性を指摘し、中長期的な解決策を模索しつつ流動性の提供を可能とする政策の必要性を訴えた。【9月5日 ロイター】
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