孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  新型コロナで富裕層は別荘・豪華ヨット、本格「シェルター」も 困窮者は「家賃不払いスト」

2020-04-29 23:18:39 | アメリカ

(地下15階、深さ60メートルにあるシェルター「サバイバル・コンドー」では、外部からの侵入者をモニターで常時監視している【4月29日 朝日】)

【改めて認識される「不平等」「格差」】
新型コロナでは著名人・セレブもときに犠牲になりますので「病は平等」というイメージもありますが、実際には経済力によって対応・リスクも大きく異なり、「不平等のリトマス紙」でもあることは3月22日ブログ“新型コロナは「不平等のリトマス紙」 弱い立場の人々へのケアが社会全体のリスクを軽減”でも取り上げました。

その結果、アメリカでは人種問題が改めてクローズアップされていることは、4月10日ブログ“アメリカ社会のアキレス腱「人種問題」を改めて浮き彫りにする新型コロナ”でも。

****「貧富の差」浮き彫り 貧困地区の地下鉄は大混雑、富裕層は別荘地へ**** 
新型コロナウイルスの感染拡大防止に国を挙げて取り組む米国で、貧富の格差が浮き彫りとなっている。

ニューヨーク市では別荘地へ退避する富裕層が続出する一方、市内の一部地域の地下鉄車内は、コロナ禍の最中でも出勤せざるを得ない人たちで混雑する状態に。

低所得者層の割合が高い中西部ミシガン州デトロイト市の致死率が際立つなど、貧困層を直撃する実態が指摘され始めている。

「不平等の象徴」
ニューヨーク市中心部から30分ほどのブロンクス区。3月末のある日の朝、地下鉄の「170丁目」の駅ホームで電車を待つ人でごった返す様子がソーシャルメディア(SNS)に投稿された。市中心部の駅は閑散とする中、全く違う光景に衝撃が広がった。
 
この周辺は、平均世帯収入が約2万2000ドル(約240万円)と州平均の3分の1程度で、所得水準が低いブロンクス区の中でも最も貧しい地域の一つ。

コロナ禍の最中でも、生計を維持するため出勤せざるを得ない人たちは感染防止策として奨励されている「ソーシャルディスタンス(他人との距離)」を確保できない状態だ。
 
州の自宅待機命令を受けて、ニューヨークの地下鉄を管轄する州都市交通局(MTA)は3月末から、本数を減らして地下鉄を運行している。米紙ニューヨーク・タイムズによると、平均世帯収入が約8万ドルのマンハッタン区では利用者が75%減少したものの、約3万8000ドルのブロンクス区は55%に。同紙は「地下鉄は、都市の不平等の象徴となっている」と指摘した。

ブロンクス区の地下鉄が混雑する一方、ニューヨーク市の富裕層は、州外や市郊外の別荘地に退避する様子が報じられる。夏の別荘地として人気の同州ロングアイランドのハンプトンズには新型コロナを受けて富裕層が殺到し、物件の月額賃貸料が通常の3倍以上となっているという。
 
水道代を払えず…
また、新型コロナによる死者が急増しているミシガン州のデトロイト市では、貧困問題への対応が感染防止策の焦点となっている。新型コロナへの対策にはせっけんで手を洗うことが効果的だが、デトロイト市の貧困家庭にとってはそれすらままならない実情がある。
 
世界的な自動車の町として知られるデトロイト市は産業の衰退や生産の海外移転などに伴い、雇用が失われ、2013年7月に財政破綻した。翌14年には、財政立て直し策として水道料金滞納世帯に断水を敢行。AP通信によると、19年末には累計で12万7500世帯が未納を理由に水道水の供給を絶たれたという。
 
コロナ危機を受けて地元の市長は3月9日に、月額25ドルで水道の供給を復活させるプログラムを始めると表明。対象は数千世帯(地元メディア)にも上るとされ、23日には市長は「2週間以内にすべての世帯で復旧させたい」と対応を急ぐ考えを示したが、衛生環境の悪さが新型コロナの感染拡大につながったとする声も上がる。

人口の約8割が黒人で、3割以上が貧困層とされる同市では健康保険の未加入者も多く、専門家は「デトロイト市の人口の3割は健康状態が悪く、基本的な医療機関を利用できず、交通手段もない」と指摘する。

同市は、新型コロナに感染して重篤化するとされる基本疾患である肥満、糖尿病、高血圧の患者の割合が、全米平均と比べて高いことも特徴だ。
 
4月3日時点でミシガン州の感染者は全米で3番目となり1万2700人を超え、死者数は479人。うち半数はデトロイト市周辺に集中している。

同州の致死率は約3・8%と、全米平均の約2・6%を上回っており、深刻な貧困問題を抱える州が新型コロナの影響を大きく受けている実態が浮かび上がっている。【4月18日 SankeiBiz】
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上記記事にもある富裕層の別荘避難については、以下のようにも。

****NYの富裕層は別荘に避難、新型コロナで「貧富の格差」鮮明に****
新型コロナウイルスの感染拡大に襲われた米ニューヨーク州では、郊外にセカンドハウスを持つ富裕層らが、都市部から退避する動きを進め、隣接する各州がハイウェー上に検問を設置するなどの緊張が高まっている。感染拡大は、米国の貧富の格差を浮き彫りにしつつある。

ニューヨークでの感染者数が6万人近くに及ぶなか、セカンドハウスに退避する人々が増加し、富裕層エリアとして知られるサウサンプトンの人口は数週間前の6万人から10万人近くに急増した。

ハドソン・バレー地区の賃貸物件の一カ月の家賃はかつて平均4000ドル程度だったが、現在は1万8000ドルにまで上昇した。これにより、感染者の急増に対応できない医療機関も増えている。

富裕層が多いニューイングランド島地域のコミュニティ(ナンタケット島やマーサズ・ヴィニヤード、ブロック島)は高級別荘地として知られるが、医療のインフラは脆弱だ。ロードアイランド州の当局は既に現地のホテルら宿泊予約のキャンセルを命じたほか、州境に州兵を派遣し、隣接するニューヨークなどの州が、移動制限を発令した際に備えている。

ニューヨークの都市部では、中流階級やワーキングクラスの人々が内部に足止めを食らった一方で、郊外に避難した富裕層に対する怒りの声も噴出している。

ドリームワークスの共同創業者で、ビリオネアのデヴィッド・ゲフィンは、カリブ海に浮かぶ5億7000万ドル(約610億円)の巨大ヨットに避難し、感染拡大を逃れているとインスタグラムに投稿したが、激しい非難を浴びてその投稿を削除した。

ニューヨークの都市部においては、年収の中央値が5.6万ドルから6.5万ドルのブルックリンやクイーンズ地区が、最も強く感染拡大の影響を受けている。一方で、平均年収が8万2500ドル程度とされるマンハッタンは比較的、被害が少なく、多くの人々が郊外にセカンドハウスを保有している。(後略)【3月31日 Forbes】
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富裕層にとっては別荘や豪華ヨットに避難するのもひとつの対応ですが、もっと徹底した対応(もちろん、超富裕層にのみ可能な対応ですが)は「シェルター」

【極めつけは、地下15階の「シェルター」 もはや信仰レベル】
アメリカなどでは核戦争などを意識した「シェルター」が現実にあることはときおり耳にしますが、以下で紹介される「シェルター」は“地下15階”“もともとは大陸間弾道ミサイルを格納するために米軍がつくった縦穴”ということですから、極めつけです。

1世帯ではなく、複数世帯が共同で暮らす「分譲シェルター」のようです。

****米、高まる「サバイバル」意識 富裕層、シェルターに注目****
新型コロナウイルスの感染が広がる米国で、外の世界と遮断して過ごせる「シェルター」への関心が高まっている。かつてのミサイル基地を核戦争や大災害に備えた施設に改造し、販売している業者には問い合わせが相次ぐ。生き残りを図る富裕層の心象風景とは。

 ■地下15階、侵入阻む異空間
「妄想にとらわれているだけだとバカにしていた人々もいたが、明らかに変わった。問い合わせの電話がどんどんかかってくるよ」 3月下旬、電話口でラリー・ホールさん(63)の口調は自信に満ちていた。
 
中西部カンザス州にホールさんが開発した「サバイバル・コンドー」。コンドーとは「分譲住宅」を意味する「コンドミニアム」の略称だ。昨年10月に現地を訪ねた時、大草原のなか、防空壕(ごう)のような建物の外に重武装の守衛が立っていた。
 
銃器による攻撃や細菌の侵入を防ぐ設備が置かれた入り口を抜けると、地下15階、深さ60メートルの異空間が広がる。もともとは大陸間弾道ミサイルを格納するために、1961年に米軍がつくった縦穴だった。
 
通信会社を経営し、米軍需企業向けのコンサルタントなども務めていたホールさんがこうした「生き残りビジネス」の可能性に目をつけた契機は、2001年9月の米同時多発テロ。米政府から近くの農家に払い下げられた縦穴を08年に購入し、改造に取りかかった。
 
「08年にオバマが大統領に選ばれたときと、16年にトランプが選ばれたとき。どちらも顧客の関心が高まるのを感じた。両極端の人々がそれぞれ、まずはオバマを、次いでトランプを恐れたからだ」
 
分譲価格は150万ドル(約1億6千万円)~500万ドルほどで、維持費も家族向けユニットで毎月数十万円はかかる。新型コロナウイルスの感染が広がってから問い合わせが急増し、施設内の画像を見ただけで購入を決めた客もいた。
 
フロリダ州に住む不動産ディベロッパーのタイラー・アレンさん(51)は、08年の開発後まもない時期からの顧客だ。ユニットをいったん転売するなどしつつ今も入居の権利は持つ。アレンさんは電話取材に「ウイルスへのパニックや、経済崩壊による社会不安が気がかりだ」と話した。
 
アレンさんがサバイバルに関心を持ちコンドーのユニットを買ったのも、「9・11」がきっかけだった。「何よりも生き残るためには準備しておくしかない」と一念発起した。

 ■不安と恐怖、身構える人々
コンドーのなかは、まるでSFの世界だ。淡水魚ティラピアを食用に養殖し、そのフンを肥料にする野菜の水耕栽培施設もある。ジムや室内シアター、ペットの遊び場、教室のほか、滑り台付きの温水プールまである。

コロナウイルスも排除できる高性能フィルターで施設内の空気は清浄に保たれ、潜水艦用の電池や地熱発電を使って、居住者は「無期限に」暮らすことができる。
 
閉塞(へいそく)した環境で暮らすストレスにも配慮。心理学者の助言で、部屋には外の風景を映し出した液晶パネルの「窓」がある。壁にいくつもの銃がかけられた武器庫もある。
 
シェルターを自分で造ったり、物資をため込んだりして有事に備えるのを信条とする「サバイバリスト」は全米に相当数いる。

新型コロナウイルス感染拡大が本格化した後、全米各地でスーパーからトイレットペーパーなどの日用品がなくなる事態が起き、銃弾の売り上げも伸びているという。サバイバリストが想定していたような事態だ。
 
18年には、極端なサバイバリストの父親を持ったタラ・ウエストオーバーさんの自伝「Educated」がベストセラーになった。父親はつねに政府の陰謀を疑い、ウエストオーバーさんを学校に通わせず、Y2K(コンピューター2000年問題)による世界の滅亡を疑わなかった。
 
そのウエストオーバーさんが小さなきっかけから大学に進み、英ケンブリッジ大学で博士号をとるに至る半生をつづった自伝はサバイバリストの心象風景を広く知らしめた。「社会に広がった不安感が、世界が終わりつつあるという個人的な信仰と結びついた運動」(カンザス大学の考古学者ジョン・フープス教授)との指摘もある。
 
ホールさんの施設は米メディアでも取り上げられ、「一部の金持ちの恐れにつけ込んでいる」と批判を浴びてきた。しかしホールさんは意に介さない。「コロナウイルスは9・11のように世界を変えた。人々は互いに距離を取り、未来に対して身構えるようになる」【4月29日 朝日】
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ウイルスを避けると言うよりは、パニックで無秩序になった貧困層を避ける・・・・といったようにも見えます。
感染拡大によって、略奪から身を守るために銃の購入が急増するアメリカ社会ですから。

感染拡大でほとんどの人が亡くなったその後の社会で、ごく少数の生存者が・・・というのは、SF近未来ドラマがよく取り上げるシチュエーションです。

個人的には、そこまでして自分だけ生き残ってどうするんだろう?という感じもしますが、「社会に広がった不安感が、世界が終わりつつあるという個人的な信仰と結びついた運動」という、まさに“信仰”のレベルなのでしょう。

【家賃補助増額を求める「家賃不払い」スト】
一方、生活困窮者には家賃支払いもままならない現実が。

****米で「家賃不払い」スト、コロナで生活困窮***** 
5月1日から家賃支払いの停止を呼びかける運動は全米に広がっている
 
イスベリア・シルバさん(66)は今春、ニューヨークシティマラソンに向けてトレーニングを行うはずだった。だがその計画は、同じ賃貸アパートの住民らとともに、来月から「家賃不払い」を働きかけるストライキへと変わった。 
 
シルバさんらスト主催者によると、ニューヨーク市クイーンズ地区にある17軒のアパートビルの住民は、大半が5月1日から家賃不払いのストに参加を表明している。 
 
「生活が一変した」。新型コロナウイルスの流行で、革製品の輸入ビジネスを廃業したというシルバさんはこう話す。近隣住民の多くは失業しているか、手元資金が枯渇している。ウイルスに感染している住民もいるという。「誰も好きでわざわざこんなことをやるのではない。必要に迫られ、家賃を支払わないのだ」 
 
抗議活動としての家賃不払いは通常、借り主と家主との間のもめ事が引き金になることが多いが、ストの主催者は今回のケースについて、議員らにコロナ危機が続く間は家賃補助を増やすよう促すことが目的だと説明する。 
 
クイーンズ地区でもシルバさんが住む辺りはコロナにより最も深刻な打撃を受けている。最も近いエルムハースト病院は、患者の急増でほぼパンク状態に陥っており、地元の市議会議員は「震源地の中の震源地」と表現した。 
 
スト主催者によると、住民の多くは来月の家賃を支払う金銭的な余裕がない。中には、家賃を支払うことは可能だが、問題への関心を高めるためにストに参加する人もいる。 

5月1日から家賃支払いの停止を呼びかける運動は全米に広がっており、クイーンズのストもその一環だ。カリフォルニア、シカゴ、フィラデルフィアなどでも、同日からのストライキが計画されている。 
 
オクシデンタル・カレッジのピーター・ドレイエ教授(公共政策)は「家賃不払いのストは通常、家主に家賃を引き下げさせるか、住環境を改善させるために行われることが多い」と指摘。「今回はそのいずれでもなく(中略)政府を標的にした抗議活動だ」と述べる。 
 
ハーバード大学共同住宅研究センターによると、コロナ危機前の段階で、米世帯の約3分の1は賃貸物件に住んでおり、その半分近くは収入の3割以上を家賃や公益費の支払いに充てていた。連邦政府は先月、住宅保有者には住宅ローンの支払い猶予などの支援策を迅速に提供したが、借り主向けの支援は、都市や州によって大きく異なるのが現状だ。 
 
家主も、自分が抱えている住宅ローンや税金、ビル管理費を支払うためには、借り主からの家賃支払いが不可欠だと主張している。 
 
ニューヨークで計画されている家賃支払い拒否のストでは、「コロナ危機時に滞った家賃、住宅ローン、公益費の支払いをすべて免除」するよう州議会議員に要求する、と配布資料には記載されている。そのため、家賃を支払う経済的余裕のある借り主にもスト参加を求め、議員らに強力なメッセージを送ろうと呼びかけている。 

米主要都市の生活費高騰を背景に、近年では、賃貸物件の借り主によるアクティビズムが盛んになっている。活動家グループによる働きかけにより、複数の州や都市で、家賃の上昇制限や立ち退き保護を定めた法律が成立した。 
 
ニューヨークでは、6月下旬まで立ち退き措置が全面凍結されており、他の都市でも同様の猶予措置が導入された。だが、借り主や法律扶助の弁護士、住宅の専門家からは、住宅問題を扱う裁判所が再開した際に、家賃滞納者に何が起こるのか不安視する声も出ている。 
 
ハーバード大学共同住宅研究センターのマネジングディレクター、クリス・ハーバート氏は、「不公平を理由に家賃を支払わなかった人に対して、親身になる判事が多くいるかは分からない」と話す。 【4月29日 WSJ】
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