孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国「一帯一路」  10周年を迎えるものの、方針転換を迫られる

2023-03-17 22:30:12 | 中国

(2019年4月に開催された第2回「一帯一路」国際協力サミットフォーラム【新華社】)

【仲介外交に自信を深める習近平主席】
中国・習近平国家主席は先のサウジアラビアとイランの関係正常化仲介の成功の勢いに乗って、ロシアとウクライナの和平仲介にも意欲を示しています。

****習主席、ロシア訪問へ ウクライナとの和平仲介に意欲 中国外務省「建設的な役割を果たしたい」****
中国外務省は、習近平国家主席が20日からロシアを訪問すると発表しました。ウクライナ問題をめぐり、プーチン大統領と会談する予定です。

中国はロシアとウクライナの和平仲介に意欲を見せているものの、侵攻の継続に執着するプーチン大統領と話して具体的な成果を本当に引き出せるのかが焦点となります。

習主席のロシア訪問は20日から22日までの予定で、プーチン大統領とも会談します。中国外務省は17日午後、訪問の目的について「ウクライナ問題で平和と対話を促すため、建設的な役割を果たしたい」と述べました。

ウクライナ問題をめぐり、中国は先月、和平交渉の再開を呼びかける声明を発表したほか、16日はウクライナのクレバ外相との電話会談を行うなど動きを活発化させています。

さらに最近では、犬猿の仲だったサウジアラビアとイランの外交関係の正常化を取り持つなど、仲介外交に自信を深めています。

習主席はロシア訪問の後、ウクライナのゼレンスキー大統領とのオンライン会談の準備も進めているとの見方もありますが、ロシアとウクライナともに一歩も引かない情勢の中、何かしら成果を出せるのかが焦点となります。【3月17日 日テレNEWS】
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もちろん、現在のロシアとウクライナがの真正面からぶつかり合う状況で何らかの着地点を見出すのは至難の業ではあります。

しかし、ロシアは中国を“頼み”にしていますし、ウクライナも、2月24日に中国外務省がウクライナ侵略の政治解決に向けて発表した12項目の提案文書について、ゼレンスキー大統領が「中国がウクライナのことを話し始めている。これはよいことだ」と一定に評価、また、習近平国家主席との会談を希望する旨も語っていますので、中国の立ち位置は悪くはないかも。

【かつての勢いがない「一帯一路」】
こうした派手な仲介外交の一方で、これまでの中国外交の中核だった「一帯一路」の方は、最近影が薄くなっているように見えます。

停止している訳ではなく、一部では活発な動きも。

****サウジアラビアやインドネシアを一帯一路に取り込もうとする中国****
ぶちゃけ、中国の習近平国家主席の動きが活発化し、世界の注目を集めています。
国内ではゼロコロナ政策への反発が強まっているため、目を海外に向けようとしているかのようです。

12月9日にはサウジアラビアの首都リヤドで初の「中国アラブ首脳会議」を開催しました。
中東諸国を中心に30か国の元首と面談した習主席ですが、特にサウジアラビアとは300億ドルを超える経済協力案件に署名。

これまでサウジアラビアはアメリカとの経済、軍事的結び付きが強かったのですが、このところ急速に中国との関係強化に走っています。(中略)

そうした動きを象徴するのが、サウジアラビアを南北、東西に結ぶ高速鉄道を中国が建設していることです。
更には、「ライン」と呼ばれる巨大な新都市建設計画も進行中です。

2030年に第一期工事が完成する予定ですが、170キロに及ぶ新都市には900万人が暮らすとのこと。大半は地下部分になる模様ですが、全ての設計から建設まで中国が請け負っていると言われています。

一方、イドネシア政府が水没の危機に瀕しているジャカルタからヌサンタラへの首都移転計画を発表。この遠大な構想の実現に関しても、頼みの綱は中国と言われています。

インドネシアは中国に対しては新幹線計画の大幅な遅れによって不信感を募らせてきました。その汚名挽回のためにも、中国は積極的な資金と技術の提供をジョコ大統領に申し出ているわけです。(後略)【2022年12月18日 浜田和幸氏 MAG2NEWS】
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2023年は習近平国家主席が「一帯一路」構想の前身「シルクロード経済ベルト」構想を打ち出して10年の節目を迎えます。

しかし、「一帯一路」10周年にあたるにもかかわらず、その中国政府の扱いは微妙なものにもなっています。3月初旬の全国人民代表会議(全人代)でも「一帯一路」に関する言及はほとんどありませんでした。

習近平主席は第3回「一帯一路」フォーラムを2023年中に開催する方針を打ち出していますが、「一帯一路」10周年を大々的にアピールしたくてもできないジレンマに直面しているとのこと。

****「一帯一路」10周年なのに熱心に宣伝しない中国──求心力低下への警戒****
<習近平自身が打ち出した「一帯一路」構想を巡って中国政府はジレンマに直面している。今年開催される第3回フォーラムへの参加国が減れば中国のメンツは傷つくが、かといって、中止する訳にもいかない>

今年で10周年を迎える中国主導の経済圏「一帯一路」構想には、これまで多くのヨーロッパ諸国も参加してきた。
しかし、2019年以降、香港デモとコロナ禍をきっかけに、ヨーロッパにおける反中感情はかつてなく高まっている。

この状況下、中国政府は今年「一帯一路」フォーラムを開催する方針だが、首脳クラスの参加が減少する公算も高い。

ただし、中国は「一帯一路」フォーラムを開催しないわけにもいかないジレンマに直面している。(後略)
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香港における中国統治に対する抗議デモ拡大への中国の対応、武漢で発生したコロナ感染を中国当局が過小評価して隠蔽しようとしたという疑惑から、近年欧州の中国への好感度は著しく低下していますので、欧州首脳の参加減少は避けられないところ。

途上国・新興国にしても、米中対立が激化するなかで、あえて首脳クラスの派遣に新たに応じることは火中のクリを拾うようなもので、「大国同士の対決に巻き込まれたくない」多くの途上国・新興国が「割に合わない」と判断しても不思議ではありません。

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仮にヨーロッパからの参加国がゼロになれば、「一帯一路」フォーラム首脳会合そのものが前回の4分の3程度の規模に縮小する。そうなれば中国政府が何より重んじるメンツは大きく傷つく。

かといって、「首脳クラスを派遣する国が少なくなると見込まれるから『一帯一路』フォーラムを開かなかった」とみなされれば、それはそれでメンツは傷つく。

だからこそ習近平はあえて「2023年中に開催」を打ち出したのだろう。かなり強気ともいえる方針だ。【同上】
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また、“中国は2010年代末頃から、かつてほどインフラ整備に資金を投入しなくなった。そこには「債務の罠」などの悪評が立ったことや、中国自身の財政事情など、いくつもの理由があり、これらと連動して中国政府が以前ほど国際的な舞台で「一帯一路」をアピールしなくなっているという指摘もある。”【同上】という事情も。

【「一致一路」の軌道修正 融資審査を一段と厳格化】
「債務の罠」の悪評は常に指摘される問題。
また、中国の銀行等にしても、回収の見込みがない案件への融資を強要されても困ります。

そうしたことで、「一帯一路」が、融資審査を一段と厳格化する「一帯一路2.0」への方針転換を余儀なくされているということは昨年来指摘されています。

****中国に「一帯一路2.0」構想、問題噴出で方針転換****
融資慣行は「債務のワナ外交」との批判

中国が巨大経済圏構想「一帯一路」の見直しに着手した。影響力の拡大を狙い、アジアやアフリカ、中南米諸国に多額の資金を投じてきたが、ここにきて債務国の返済が行き詰まっており、軌道修正を余儀なくされている。政策運営に関与している複数の関係者が明らかにした。

世界経済の減速や金利上昇、インフレ高騰が足かせとなって、借り手の国家財政は急速に悪化。巨額の融資返済が滞っているほか、多数の開発案件が凍結に追い込まれている。

中国の融資慣行を巡ってはかねて「債務のワナ外交」との批判も上がっており、スリランカやザンビアなどの債務危機を助長しているとの指摘は絶えない。

こうした中、中国当局内では新規プロジェクトへの融資審査を一段と厳格化する「一帯一路2.0」構想が浮上した。またかたくなに拒否していた不良債権の計上や債務再編に対しても、幾分許容する方向へと傾いているという。関係筋が明らかにした。

習近平国家主席はかつて、一帯一路を「世紀のプロジェクト」と呼んではばからなかった。しかし、見直しを迫られている現状は、世界の秩序を塗り替えるという習氏が描くビジョンの限界を露呈させた。

習氏は昨年11月に開いた高官との協議で、一帯一路を取り巻く外部環境は「ますます複雑さを増している」との認識を表明。リスク管理の強化と他国との協力拡大が必要だと強調した。国営メディアが報じた。

中国の銀行はすでに、低所得国の新規案件に対する融資を大きく減らし、既存融資の対応に注力している。(
中国の対外融資のうち、借り手が返済困難な状況にあるとされる割合は60%に迫っており、2010年の5%から急上昇している。(中略)

途上国の債務問題解決のため、中国は先進国で構成する「パリクラブ(主要債権国会議)」といった多国間制度についても、長年の拒否姿勢を撤回する方向にかじを切った。足元では途上国の債務負担軽減に向けて20カ国・地域(G20)と協力している。

中国はこの過程で、国内銀行に対し、損失の受け入れを強要する可能性がある。中国は長年、債務元本の減免ではなく、返済期限を延長することで融資の焦げ付きに対応してきた。問題を「見て見ぬふり」する戦略だとされ、借り手の債務危機をむしろ長引かせる恐れがあると言われている。

中国国営メディアも、一帯一路に対する論調を落としている。かつては中国の融資によって借り手が受ける経済的恩恵を誇示していたが、足元ではリスク管理や国際社会との協力改善といった面を強調している。

ジョージ・メイソン大学傘下のシンクタンク「メルカタス・センター」で中国政府のプロパガンダについて研究するウェイフェン・ゾン上級研究員はこう指摘する。「中国は軌道修正を試みている」(中略)

とはいえ、一帯一路が全面的に撤回される可能性は低い。来月の共産党大会で3期目続投を目指す習氏は、国際社会における中国の役割を拡大することが重要だとの考えを堅持している。政策運営に詳しい関係筋への取材や、習氏の最近の演説要旨から分かった。

問題の多い一帯一路だが、過去10年に多数の国々を中国の勢力圏に引き入れたことも事実だ。国連の採決では、借り手の多くが中国の意向に合わせて票を投じるようになった。中国が融資への消極姿勢を強めれば、一部の国にとっては中国マネーの魅力が薄れ、国際社会の意志決定において中国の影響力が後退することもあり得る。

米外交評議会(CFR)の上級研究員で、ソブリン債務専門家のブラッド・セッツァー氏は「中国が影響力を拡大する上で、一帯一路が重要な存在であり続けるには、新たな方策を見いだす必要があるかもしれない」と述べる。具体的には融資ではなく、助成金などの支援を拡大するといった措置が挙げられるという。

内情に詳しい関係筋によると、中国当局者はリスク軽減に向けた官民パートナーシップの構築、市場水準を下回る優遇金利での融資といった手段を通じて、一帯一路を持続可能な軌道に乗せる方策も探っている。さらに中国当局は、新規案件の融資でアフリカ開発銀行のような多国間機関との協力拡大にも、前向きな姿勢をにじませ始めているという。【2022年9月27日 WSJ】
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ただ、パキスタンでの事業など重要案件を中国が諦めることはなさそうです。

****中国の一帯一路構想、縮小しても撤退せず****
新型コロナ下で後退した国外インフラ整備プロジェクト、立て直しに向かう見通し

中国が国外で進める巨大インフラ整備構想「一帯一路」は2010年代半ばから本格化したが、最近はやや絞り気味になっている。

だが、すべてを帳消しにするのは早計だ。当初の資金が多く投じられたアジアの一帯一路計画は、新型コロナウイルスのパンデミック(感染症の大流行)下で特に縮小が顕著だった。

しかし少なくとも外国直接投資でみた場合、ラテンアメリカではいまだ拡大を続けている。また、パキスタンのような問題のある地域でさえも、これまでの投資額を考えれば、中国政府が大規模プロジェクトを放棄することはないだろう。

パキスタンでは、中国が一帯一路の港湾整備計画を推進する港町グワダルで一連の政治的な頭痛の種が発生した。日経アジアの報道によれば、2022年後半に港湾周辺の警備や深海底引き網漁などの問題が住民の怒りを招いたことで港湾を封鎖する抗議行動が起き、12月末に警察の強制捜査が行われた。ここ数カ月はパキスタン在住の中国人が襲撃される事態が続いている。

パキスタンは中国同様にインドと対立してきた歴史があるため、中国にとっては政治的に取り組みやすい国のはずだった。だが、いまでは逆に一帯一路の広範な問題の象徴だ。

多くの低所得国は一帯一路の巨額プロジェクトに実行するだけの価値があるか疑問を持つようになっており、プロジェクトの結果抱える債務や地元で頻発する反対を警戒している。世界的な金利高や新興国通貨の下落、コロナ禍による経済損失で、一帯一路に対する懐疑論は高まっている。

M&A(合併・買収)情報サービスのマージャーマーケットと米エンタープライズ研究所のデータを分析したフランスの投資銀行ナティクシスによれば、一帯一路地域の国々に対する中国の融資と直接投資が近年急減したことは、驚くことではない。

急減は部分的には、中国を含むほとんどの国がコロナ下でそうしたように、中国の金融部門が世界から撤退したことを反映している。(中略)

中国は明らかに、最も注目度の高い未開発の国外インフラ整備プロジェクトに含まれるパキスタンのグワダルやスリランカのハンバントタ港でやけどを負っている。

すでに収益を生み出しているインフラ資産への直接投資は、不安定な地域で新規の巨大プロジェクトに融資する際の政治・財政的リスクを避けつつ地元政府の信用を得る一つのやり方になるかもしれない。

また、ラテンアメリカの豊富な農作物と鉱物資源は明確に中国政府の関心の的だ。中国政府は民主主義の先進諸国との関係が悪化する中、以前にも増して食料とサプライチェーン(供給網)の安全保障に固執しているように見える。

それでも、中国政府がグワダルのようなプロジェクトを放棄すると考えるのは恐らく現実的ではない。ワシントンのシンクタンク、ウィルソンセンターの南アジア研究所でディレクターを務めるマイケル・クゲルマン氏は、パキスタンでもその他の場所でも、中国は一帯一路を諦めようとはしていないと考えている。

クゲルマン氏はこうしたインフラと、他地域との連結度を高めるプロジェクトが中国の経済的利益にとって必要不可欠なものであり続け、またこの一部を軍事資産に変換する長期計画が中国政府にあるとすれば、戦略的利益にとっても重要なものであり続けると述べた。

だが、経済的な見返りと現地の人々とうまくやっていくことに焦点を当てた一帯一路計画のほうが、見識のあるものになりそうだ。【1月10日 WSJ】
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