孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

南アフリカの土地収用新法を白人差別と批判するトランプ大統領 “負の歴史の清算”を求める南ア黒人層

2025-02-06 23:34:38 | アフリカ

(南アフリカ・フリーステイト州のトウモロコシ畑【2018年8月24日 Newsweek】 このような広大な農園のほとんどは未だ白人所有であり、資産の格差は結果的に所得の格差を存続させています)

【トランプ大統領 南アの土地収用に関する新法を白人への人種差別と批難 背後にはマスク氏の存在も】
アメリカ・トランプ大統領は、国際的な面だけでも、不法移民強制送還をめぐってコロンビアなどと、関税問題ではカナダ・メキシコ・中国と、昨日取り上げたパレスチナ・ガザ地区をめぐって中東諸国と、更にはグリーランドをめぐってデンマークと、パナマ運河をめぐってパナマと、NATO負担をめぐって欧州と対立し、ディール(取引)を展開しています。

もちろん、選挙期間中に「24時間で終わらせる」と豪語していたウクライナ・ロシアの問題もあります。イランをめぐる問題、地球温暖化のパリ協議・疾病対策のWHO・国際人道支援といった国際的協調からの離脱もあります。

当然ながら、国内では「革命」とも言えるような大幅・急激な政策転換も行っています。

どんな問題を取り上げても、「トランプ大統領の対応は?」ということが絡んできます。

傍目にはあまりに抱える問題が多すぎるようにも見えますが(ひとつひとつ丁寧に検討する時間はないでしょう。直観勝負でしょうか)、それでも不足しているのか、話題になることは多くありませんが南アフリカとも揉めています。

****トランプ氏、南アへの資金援助を全面的に停止へ 投稿経緯は不明****
トランプ米大統領は2日、「南アフリカが土地を没収し、特定の階層の人々を非常にひどく扱っている」と根拠なく主張し、南アフリカへの資金援助を調査完了まで全て停止すると表明した。

交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」に「米国はこれを容認せず、行動を起こす」と投稿した。

投稿に至った経緯は不明。在ワシントンの南アフリカ大使館からは業務時間外のためコメントを得られていない。

米国政府の統計によると、2023年に米国は南アフリカに対する約4億4000万ドルの援助を義務化した。

南アフリカは現在20カ国・地域(G20)の議長国。米国が議長国を引き継ぐことになっている。

南アフリカのラマポーザ大統領は先月、トランプ政権下での米国との関係について心配していないとの見解を示した。トランプ氏とは昨年11月の大統領選勝利後に祝意とともに、同政権と協力していくことを楽しみにしていると伝えたことを明らかにした。

トランプ氏は第1次政権時代、南アフリカで白人農民の大規模な殺害や土地の暴力的買収が行われているとして調査すると表明。南ア政府は当時、トランプ氏が誤解していると指摘していた。トランプ政権が調査を実施したかどうかは不明だ。

トランプ氏の盟友で実業家のイーロン・マスク氏は南アフリカ生まれ。マスク氏は23年にXで、南アフリカの極左政党が古い反アパルトヘイトの歌「ボーア人を殺せ」を歌っている動画に反応し、「彼らは南アフリカで白人の大量虐殺を公然と推進している」とした上で、ラマポーザ氏に対し「なぜ何も言わないのか?」と訴えた。【2月3日 ロイター】
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“経緯は不明”とありますが、トランプ大統領は、公益のために国家が土地を収用しやすくする南アフリカの新法を批判し、同国の白人を念頭に「特定の階級の人がひどい扱いを受けている」とも指摘しています。

そうした批判の背景には南ア出身のマスク氏の存在があります。

****トランプ氏、南アフリカ批判 マスク氏影響か****
トランプ米大統領は2日、公益のために国家が土地を収用しやすくする南アフリカの新法を批判した。同国の白人を念頭に「特定の階級の人がひどい扱いを受けている」とし、南アへの資金援助停止に言及した。

南ア生まれの実業家イーロン・マスク氏が同国で白人が差別されていると主張しており、トランプ氏の批判に影響を与えた可能性がある。南アの新法は先月、ラマポーザ大統領が署名した。

トランプ氏は自身の交流サイト(SNS)で「南アは土地を没収している。ひどい状況だ。大規模な人権侵害が起きている」と根拠を示さず糾弾。調査が終わるまで「南アへの資金援助全て打ち切る」と表明した。

ラマポーザ氏は3日の声明で、誤解を解くために米側と協議したい考えを示した。

南アではアパルトヘイト(人種隔離)で白人が取得した土地の再分配が課題になっている。白人から土地を奪うのが新法の狙いだとの見方があり、マスク氏も同調している。【2月4日 共同】
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南アフリカは「いかなる人々の土地も没収していない」と反論し、トランプ政権との協議を求めています。

****「土地没収してない」南ア大統領が反論 トランプ大統領の資金援助停止表明受け****
アメリカのトランプ大統領が南アフリカへの資金援助を全面的に停止する意向を示したことを受け、ラマポーザ大統領が反論し、「トランプ政権と協議の場を持ちたい」と声明を出しました。

トランプ大統領は2日、「南アフリカは特定の階級の人々の土地を没収し非常にひどく扱っている」と主張し、調査が終わるまで資金援助をすべて停止すると表明しました。

これに対してラマポーザ大統領は3日、「南アフリカ政府はいかなる人々の土地も没収していない」と反論しました。

また、「トランプ政権と協議することを楽しみにしている」としたうえで、「この問題に関して共通の理解を得られると確信している」と述べています。

ロイター通信によりますと、トランプ大統領は前回の大統領在任期間中にも南アフリカで多くの白人の農民が殺害されたり、土地が暴力的に買収されているとして調査すると表明していました。

その後のバイデン政権では、2023年に南アフリカに対して約4億4000万ドルの援助を義務化しています。【2月3日 テレ朝news】
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【“人種差別”か“負の歴史の清算”か? 黒人層の苛立ちで“黒いトランプ”の台頭】
問題の根っこは、アパルトヘイトを廃止した南アフリカにおいて、未だに多くの土地を白人が所有しているという現実、それに対する黒人層の苛立ちがあります。

また、南アとしてはアメリカの批判はある程度“想定内”で、アメリカの援助が以前ほどの重要性を持たなくなっている現実もあるようです。

****アメリカが南アフリカ向け援助停止を警告――その理由になった“人種差別”とは何か****
米トランプ政権は「黒人による白人への差別」を理由に、南アフリカ向け支援の停止を警告した。
南アフリカでは1月、補償なしに土地を収用できる法律が成立し、その対象には白人所有地も含まれるとみられている。

ただし、アメリカの強い拒絶反応は南アフリカにとって想定の範囲内で、あえて土地収用法を成立させたと考えられる。

「土地を没収しようとしている」
米トランプ大統領は2月2日、南アフリカ(南ア)向けの開発協力を無期限に停止すると発表した。
その理由は「土地を没収して、特定の人々をとても劣悪に扱っている」からとされた。  ここでいう特定の人々とは南ア白人を指す。

南アでは1月末、「正当で公益に資する場合」、政府は補償なしに私有地を公的管理のもとにおける土地収用法が成立した。

これが白人所有地の収用と黒人への再分配を念頭においたものであることは、もはや国際的な常識に近い。

だからこそトランプのアドバイザー、イーロン・マスクは「なぜ露骨に人種差別的な法律を成立させた?」と批判しているのだ。マスクは南ア出身だ。

国務省によると、アメリカの南ア向け援助額は約3億1800万ドル(2024年)だった。

人種差別か、歴史的清算か
批判に対して、南アのシリル・ラマポーザ大統領は「我が国は民主国家だ。法的手続きに沿ったもので、没収ではない」と反論した。

土地収用法の対象には、以下のような場合も含まれる。
・投機目的で所有されている土地
・賃借人によって実質的に管理されている土地
・放棄された土地
・所有権が不明な都市の建築物

これだけならそれほど大きな問題もないようにみえるが、実際には先述のように白人所有地も例外ではない、とみられている。

それをマスクは“人種差別”と呼ぶわけだが、一方で南アにはこれを“負の歴史の清算”と評価する人も多い。
というのは南アでは人口の9%に過ぎない白人が耕作可能地の72%を所有しているからだ。
これは18世紀以降、白人が黒人を武力で追い払って“私有地”を広げた結果だ。
 
それもあって、現在でも人口の約8割を占める黒人の平均年収は白人の約5%に過ぎない。

土地収用をめぐる対立軸
だからこそ南アでは所得格差の是正が白人所有地の収用と結びつけて語られやすい。

その裏返しでアフリカを植民地支配したヨーロッパや、あるいはやはり先住民族を武力で追い払って白人が広大な土地を“私有地”にした歴史のあるアメリカで、土地収用への拒絶反応が強いこともまた不思議ではない。

とはいえ白人所有地の収用が内外で摩擦や対立が激しくするのは避けられない。
実際、南アの隣国ジンバブエでは2000年、やはり白人所有地を補償なしに収用できる法律が成立した結果、白人の海外脱出を加速させ、かえって深刻な経済危機をもたらした。

そのため南アにも土地収用に反対する人は少なくない。
それにもかかわらず土地収用法が成立した背景にはポピュリズムとヘイトの高まりがある。

人口多数派の黒人の間には人種間格差が改善しないことへの不満が根強く、生活苦の広がりにともない、それまでタブーに近かった白人所有地の収用が2010年代末頃から公然と政治の場で語られるようになっているのだ。

“黒いトランプ”の台頭
その先頭に立つ極左政党“経済的自由のための戦士(EFF)”は、黒人の都市貧困層を主な支持基盤にしている。

EFFのジュリウス・マレマ党首は、白人など「アフリカ的でない者」や周辺アフリカ各国からの不法移民の国外退去を叫ぶ一方、「白人の特権を終わらせる」と主張して白人所有地の収容と黒人への再分配を主導してきた。
その排他的でポピュリスト的な言動は“黒いトランプ”とも呼べる。

これに対して、1994年から政権与党の座を占めてきたアフリカ民族会議(ANC)は白人所有地の収用に消極的だった。

しかし、経済停滞を背景に昨年の議会選挙でANCはかつてない大敗を喫し、単独過半数の議席数を失った。求心力の低下したANCやラマポーザ大統領は、急進的な世論に迎合する格好で、白人所有地の収用に傾いていったのである。

そこにはEFF支持者の取り込みによる求心力回復といった目的もあるとみられるが、EFFは土地収用法を「不十分」と批判している。

ともかく、こうした背景のもとで成立した土地収用法により、南アは約3億ドルの援助がアメリカからこなくなる公算が高まっているのだ。 ただし、アメリカの強硬な反応は南ア政府も織り込み済みだったと思われる。

南アには想定の範囲内?
第二次政権発足直後、トランプはイスラエル向け軍事援助などを除き、すべての国際協力を見直し、凍結すると宣言した。しかし、それ以前から「アメリカ第一」を掲げるトランプが途上国支援に熱心でないことは周知のことだった。

そのなかで南アが標的になりやすいことも、事前にある程度予測されていた。
アメリカでは保守系を中心に、この数年で「南ア支援を削減すべき」という論調が高まっていたからだ。南アが米軍と軍事演習などを行う一方、ウクライナ侵攻やガザ侵攻でアメリカの方針に協力しなかったことがその最大の要因だった。

つまり、南ア政府は「どの道アメリカが支援を減らすなら、逆に今さら遠慮しなくてもいい」と判断しやすかったといえる。

さらにそこに中国の支援があれば、トランプの威嚇に限界があっても不思議ではない。 中国政府は昨年、アフリカ向けに500億ドルの資金協力を約束し、これをラマポーザは「素晴らしい恩恵」と称賛した。

“援助停止”の限界
そのうえ南アを含むアフリカ大陸は、世界全体で見れば貧困国がいまだに多いものの、援助の重要度はかつてより低下している。

かつて援助はアフリカに流入する資金の大半を占めていた。 しかし、近年では海外に移住したアフリカ系移民による送金や海外企業による直接投資の占める割合が増えていて、2021年に限ると送金が935億ドル、海外直接投資が830億ドルで、これに対して援助は728億ドルだった。

とはいえ南ア政府もアメリカとの決定的な対立は避けたいだろう。 また、ジンバブエのように経済破綻に突き進む懸念も拭えない。

だから白人所有地を含む土地の収用を可能にする法律ができても、南ア政府が実際にそれを発動するかは未知数だ。

その一方で、アメリカの強い拒絶反応が目に見えていたのに南アがあえて土地収用法を成立させたとすれば、“援助停止”という脅し文句だけで揺さぶるのが、これまでより難しくなっていることを象徴する。

その意味で、アメリカと南アの対立の今後の展開は、アフリカ全体にも影響を及ぼす可能性が大きいといえるだろう。【2月5日 六辻障二氏 YAHOO!ニュース】
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【南ア開催のG20外相会議をアメリカ欠席】
南アとトランプ政権の対立は南アで今月開催されるG20外相会議にも波及。
ルビオ米国務長官は5日、「南アは非常に悪いことをしている。私有財産を没収している」と非難し、20カ国・地域(G20)外相会合を欠席するとX(旧ツイッター)で明らかにしています。

****米国務長官 南アでのG20会合に欠席表明 トランプ氏・マスク氏の南ア批判など受け****
アメリカのルビオ国務長官が今月、南アフリカで開かれるG20(主要20カ国)の外相会合を欠席すると表明しました。

G20の外相会合は20日から21日の日程で議長国である南アフリカのヨハネスブルクで開催されますが、ルビオ国務長官は5日、南アフリカが「非常に悪いことをしている」として、会合を欠席するとSNSで表明しました。

その理由として、南アフリカが掲げる今年のG20のテーマがトランプ政権が批判するDEIと呼ばれる多様性や公平性の理念や気候変動対策と同じであることや南アフリカで私有財産の没収が行われているからだとしています。

ルビオ長官は「アメリカの国益を推進するため、税金を無駄にしたり、反米主義を助長したりすることはしない」と強調しました。(中略)

G20の会合を欠席するというルビオ長官の判断は、こうした(トランプ大統領やマスク氏の南アへの)批判を受けたものとみられます。【2月6日 テレ朝news】
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“米国務長官がG20外相会合を欠席するのは異例。「米国第一」の外交政策を推し進めるトランプ政権が多国間協力の枠組みを軽視し、国際社会に内向き志向をあらわにした形で各国に波紋を広げそうだ。”【2月6日 時事】 

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