テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

何より特別な、一冊。

2009-08-15 21:47:47 | ブックス
 日本名作劇場へ、ようこそ!
 こんにちは、ネーさです。

「こんにちわッ、テディちゃでスゥ!」

 今日、8月15日は私たちにとって特別な日、ですね。
 ならば本日ご紹介いたします御本も特別な一冊を!
 こちらを、どうぞ~!


        
             ―― 楡家の人びと ――



 著者は北杜夫さん、単行本は1964年に、
 改版文庫版は2000年に発行されました。
 画像はネーさ所蔵の単行本です。けっこう古びちゃってますが……。

「にれさんッてェ、だァれでスかァ?
 どこにィ、すんでるのッ?」

 楡さんのお家が建っているのは、
 現代では、東京の中心地に近い、名所のひとつに数えられる
 青山という地域。

 流行のショップやビルが集う青山一帯も、
 江戸の昔は原っぱでした。
 明治の時代も、やはり似たようなものでしたが……
 ほら、御覧なさい、あの大きな建物を!

「ひゃあァ、りッぱでスゥ!
 たわーがァ、ついてるゥ!」

 そびえるは、七つの塔。
 大理石の門柱も豪華なこの建築物は、
 『楡脳病院』。

 脳病院――精神を病む人のための病院、
 それもこれほど近代的な、設備も整った病院が出来たのは
 明治・大正の当時においては
 画期的なことであったと言えましょう。
 病院を創設したのは、
 楡基一郎(にれ・きいちろう)さん。
 
 さえない農家の四男坊から、
 東京へ出て医師となり、
 ついに大病院の主となった立志伝中の人物です。

「むむゥ、しゅっせしたのォでスねッ!」

 この物語は、
 基一郎さんを一代目とする楡家と、
 楡脳病院を中心とする年代記。
 大正から昭和にかけての日本の歴史と
 楡家の歴史が交差します。
 短い平和なひととき、
 天災、騒乱、そして戦争も、
 当時の日本が体験したすべてがこの中にあります。
 
「てんさいッ??」

 関東大震災を、これほど真に迫ってに描ききった御本は
 他に思いつきません。
 大地が揺れたその日、基一郎さんは東京を離れていました。
 必死に家へ、病院へ戻ろうとする彼が
 その帰路で目にしたものは……。

 基一郎さんの後継者たる娘婿の徹吉(てつきち)さんは
 『日本大地震』の報を留学先のドイツで知ります。
 東京が壊滅?
 家は、いったいどうなっているだろう……?

「うァうわァうゥ~、じしんはきらいでスよゥ!」

 七つの塔の脳病院を見舞う災厄は次から次へ――
 基一郎さん、基一郎さんの子どもたち、孫たちも、
 時代の嵐に巻き込まれてゆきます。
 楡家と、脳病院の運命もまた――?

 刻まれているのは、
 点景ではなく
 巨きな流れ。
 風すさぶ世界の鼓動が目に見えるようです。
 
 三島由紀夫さんは
 『戦後に書かれたもっとも重要な小説のひとつである』、
 『これこそ小説なのだ!』と
 賞賛を惜しみませんでした。
 そう、これこそ、ものがたり!
 読み終えれば、きっと感じられることでしょう、
 
 これが楡家のものがたり。
 これこそ特別な一冊。

「♪あおやまぼちからァ、
 しろいおばけがァ みッつゥ みつゥ
 あかいおばけがァ みッつみつゥ~♪」

 所々で登場する童謡や詩篇も
 すばらしく魅力的です。
 ぜひぜひ、一読を!
コメント
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