テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

― 《家》へとつづく道 ―

2011-10-11 23:26:42 | ブックス
 こんにちは、ネーさです。
 金木犀の香りもやや薄れ、その代わりに、嗅覚を刺激するものは……
 銀杏の実! うわわ~!

「こんにちわッ、テディちゃでス!
 むむッ、ちょッとォ、くちゃいィッ!」
「がるる!がるぐるるがる!」(←訳:虎です!うんうん、匂うね!)

 ここ東京都・八王子の秋の名物は、
 黄色く色づく甲州街道沿いのイチョウ並木。
 しばらくは銀杏の芳香に悩まされそうですが、
 我慢ガマン……と唱えながら、さあ、読書タイ~ム!
 本日は、こちらを、どうぞ~!

  


 
             ―― フジモリ式建築入門 ――

 
 
 著者は藤森照信さん、2011年9月に発行されました。
 画像でお分かりのように、新書であるこの御本は、サイズこそ小判ですが、
 内容はみっちり濃厚です!

「にゅうもんしょォ、なのにィ??」
「がるぐるるがる?」(←訳:ハイレベルなの?)

 読みやすく、初心者さんにも分かりやすいのに、
 高質で、なおかつ斬新に建築学を語る――
 これは、実はとても難しいことなのです。

 以前に聞いた御話なのですが、
 建築というのは、非常に『学問化しにくい学問』なのだとか。
 他の学問と比較してみますと、
 物理学の場合では、
 
 ニュートン力学があって→アインシュタインの理論が生まれた

 とうように、
 《必然》が《進展》を招きます。

 では、建築の場合は?

「あうゥッ??」
「がるっぐるがるるぐるっ?」(←訳:えっと、どうなるのっ?)

 時代ごとの建築の変遷を決定するのは、
 《必然》ではなく、
 《流行》や《好み》と言えるのではないでしょうか。

 ルネサンスの建築なんて、
 まるで古代ギリシャ、いえいえ、本気で古代ギリシャ!な復古路線です。
 見方によっては、ルネサンスよりも前のゴシック調建築のほうが、
 近代都市建築に近い、とさえ思えます。
 なぜ、いきなりギリシャに戻っちゃったのか――
 それは、ヒトの好み、当時の人々の嗜好が、
 古代ギリシャを選んだから。

 そう、建築を左右するのは、
 ひとのこころ、
 これがいい!こっちのほうが好きだ!という人間の感情なのです。

「うむゥ~、それはァ、ややこしィッ!」
「がるぐるがるぐるるる!」(←訳:心理学になっちゃう!)

 我らが建築探偵こと藤森さんは、第一章で述べておられます。
 
  “懐かしい”

 このしみじみした感情の力が重要なのだ、と。
 そうして、

   建築の本質は“美”

 と断言します。
 これは明治の日本で活躍した建築家ジョサイア・コンドルさんの

  “建築の本質は実用ではなく美である”

 という言葉を引用したものです。
 
 《美》を判定するのが《感情》であり《ひとのこころ》であるならば、
 《ひとのこころ》の動きに多くを委ねられた『建築』分野ほど、
 数値化&方程式化しにくい学問はないでしょう。

「いちだんとォ、ややこしィッ!」
「がるるぐるぐる~る~」(←訳:方程式なんてムリ~)

 人類最初の建築から、
 欧州の建築の歴史、
 日本の建築が辿った変化・変転に至るまで、
 藤森さんは果敢に挑みます。
 歴史の流れの上に、
 未来の建築は、見えてくるのか――

 10月11日の今日、
 震災から7ヶ月が過ぎました。
 建築について、
 ヒトが住まう容れものの在りかたについて、
 さらには、町、都市のかたちについて、
 日々、私たちは考えを巡らさずにはおれません。
 復興とは、何なのか――
 新しく町を創造するとは、
 どういうことなのか――
 より良い『住まい』『家』『建築』を、
 どうやって見つけ出せばよいのか――

 失われた《町》を悼み、
 新しい《町》のために祈りたくなる
 誠実な文章で綴られた建築入門の一冊、
 ぜひ一読を!

「よいおうちがァ、できますようにッ!」
「ぐるがるるぐる!ぐるるる!」(←訳:きっと見つかる!と信じて!)


 
コメント
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