テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

その筆、天職!

2016-08-22 22:12:29 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 おおあめェ、こわいィでスゥ~ッ!」
「がるる!ぐるがるるるぅ!」(←訳:虎です!川があふれるぅ!)

 こんにちは、ネーさです。
 リオオリンピック閉会式の中継時間、
 ここ東京・八王子周辺は台風9号の豪雨に襲われ、
 ネーさ家のすぐ裏手の川が氾濫寸前に!
 市役所の方々が土嚢を運んでくださったり、
 少し雨足が弱まったことで
 なんとか浸水は免れましたが、
 これから台風の進路に当たってしまう地域の皆さま、
 どうか気を付けてくださいね!

「きけんがァ、せまッたらッ!」
「ぐるがるる!」(←訳:すぐ避難を!)

 幸い、現在の多摩地域は天候が安定していますので、
 ココロを平静に保つためにも、
 さあ、読書タイムですよ。
 本日は、こちらのノンフィクション作品を、どうぞ~!
 
  



         ―― ダルトン・トランボ ――



 著者はジェニファー・ワーナーさん、原著は2014年に、
 日本語版は2016年8月に発行されました。
 英語原題は『BLACKLISTED:A Biography of Dalton Trumbo』、
 『ハリウッドのブラックリストに挙げられた男』と日本語副題が付されています。

「ひょうしのォ、おじちゃんがァ~」
「がるるるぐる!」(←訳:トランボさん!)

 つい最近まで、
 ダルトン・トランボさん、といっても
 多くの人は首を傾げたことでしょう。

 それって誰?と。

 ですが、現在、事情は変わりつつあります。
 映画好きな御方ならば、きっと、こう答えてくれるはず。

 ダルトン・トランボさん?
 ああ、映画『ローマの休日』の脚本家さんね!

「すごいィぞッ、おじちゃんッ!」
「ぐるるーがるるる!」(←訳:オスカーあげよう!)

 ええ、アケデミー脚本賞を受賞するのも当然な、
 素晴らしいお仕事をしたダルトンさん。

 しかし、ダルトンさんがオードリー・ヘップバーンさん主演のこの映画で
 アカデミー賞授賞式の舞台に登壇した事実はありません。

 なぜなら、彼は、共産主義者として糾弾され、
 投獄された過去を持つ身でしたから。

「そこがァ、わきゃりませんッ!」
「がるぐるがる??」(←訳:それ犯罪なの??)

 アメリカの映画史に刻まれた最大の汚点、
 《ハリウッド・テン》事件。

 1948年、
 共産主義を排斥すべき、という当時の風潮が巻き起こした
 政治的な“陰謀”により、
 議会侮辱罪の判決を受け、
 10人の映画人が連邦刑務所で一年の刑を宣告されました。

 ダルトンさんは、その10人の中の一員であり、
 1950年、ケンタッキー州の連邦矯正施設に収監されます。

 そして、10ヶ月ののち、
 ようやく自由の身となりましたが……

 自由?

 そんなもの、どこに?

 投獄される前から、
 ダルトンさんの名はブラックリストに載っていました。

 ブラックリストに乗せられた状態では、
 脚本を書いても採用などされません。
 どんな良い脚本を仕上げても、
 映画会社から門前払いを喰らうばかり。

「そこでェ、おじちゃんはァ、かんがえましたでス!」
「ぐるがるぐる!」(←訳:知恵こそ武器!)

 表には立たず、
 友人の名義を借りて、脚本を書く。

 そんな手を使っても、ええ、
 分かる人には分かっちゃうんですけどね、
 資金繰りが苦しい小さな映画会社は、
 見て見ぬふりをして
 別人名義のダルトンさんの脚本を買い上げます。

 ダルトンさんの武器は、
 速く書けて、手際もよい、
 そして観客さんにウケのいい脚本を書けること。

 そんな武器がアカ狩りに揺れる社会に通用するのか?
 窮状を打破できるのか?
 と心配になりますが……

「やッてェみなくちゃッ!」
「がるるるるるっ!」(←訳:わからないよっ!)

 トランボさんの闘いの記録を
 著者・ワーナーさんはひとつずつ拾い上げ、
 つなげてゆきます。

 耐え続けながらも、
 知恵を絞り、
 打てるだけの手を打ちまくり、
 脚本や小説の執筆を決して止めない。

 おそらくは、
 天職を見つけた者だけが持つ強さで、
 荒波を乗り越えてゆくトランボさん――

「いまはもうゥ、かくさなくてェ、いいのでス!」
「ぐるるるるる!」(←訳:自分の名をね!)

 近年、再評価がぐんぐん進む、
 ひとりの映画人の人生。

 訳者・梓澤登さんにも拍手を送りたいこの一冊を、
 皆さまも、ぜひ♪
 


コメント
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