テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

  《声》を見よ。

2016-08-25 22:18:43 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 きょうもォなげまスッ、げんきだまッ!」
「がるる!ぐるるるがるる!」(←訳:虎です!届きますように!)

 こんにちは、ネーさです。
 イタリアで、そしてミャンマーでも地震が、と聞いて、
 どうにも胸苦しい一日でした……。
 いや、ここでメゲてはならじ!
 えいやっ!と元気玉を投げ終えたら、
 さあ、私たち活字マニアの元気の素、
 読書タイムとまいりましょう。
 本日は、こちらの小説作品を、どうぞ~!

  



           ―― 暗幕のゲルニカ ――



 著者は原田マハさん、2016年3月に発行されました。
 『GUERNICA UNDERCOVER』と英語題名が付されています。

「げるにかァ、とうとォ、あのゆうめいィなァ?」
「ぐるるるるるがる!」(←訳:ピカソさんの大作!)

 ええ、そうです、
 美術の教科書に、いえ、もしかしたら
 世界史の教科書にも載っているのかしら、
 パブロ・ピカソさん作『ゲルニカ』(1937年制作)。

 『ゲルニカ』は現在、
 ピカソさんの祖国スペインのマドリッドにある
 レイナ・ソフィア芸術センターに収蔵されていますが、
 そこに辿りつくまでに
 壮大なドラマがあったことを
 アート好きな方々はよく御存知のことでしょう。

「せんそうのォさなかッ、だッたのでスゥ!」
「がるぐるる!」(←訳:欧州全域が!)

 『ゲルニカ』の制作年代からもお分かりのように、
 スペインに内戦が起こり、
 独裁政権が共和国政府を倒した時期に
 ピカソさんはこの作品を描きました。

 ゆえに、
 画布にはゲルニカ空爆への、戦争への怒りと抗議が
 描き込まれているのも必然であり、
 作品から政治的なメッセージを読み取ることも
 できなくはありません。

「ひとめェみればァ、わかりまス!」
「ぐるがるるぐるる!」(←訳:戦争なんてイヤだ!)

 著者・原田さんは
 御本の巻末にこう記しています。

 《本作は史実に基づいたフィクションです》

「ふぃくしょんだけどォ~」
「がるるぐっるる!」(←訳:事実もいっぱい!)

 語られるのは、
 ピカソさんが『ゲルニカ』を政策した20世紀の物語と、
 NYとスペインを主な舞台にした現代――21世紀の物語。

 特注品の巨大なキャンバスに、
 ピカソさんの手で
 いままさに描かれんとする『ゲルニカ』。
 その制作過程を撮影してゆく
 ピカソさんの当時の恋人ドラ・マールさん。

 完成した作品が
 公開当時だけでなく、
 21世紀の現代、そして未来にまで
 不穏な波紋をもたらすものになろうとは
 ピカソさんは予想していたでしょうか……

「それほどォ、ぱわふるゥなのでス!」
「ぐるるるがるる!」(←訳:すごい絵だよね!)

 すごい絵、いえ、すご過ぎる作品は、
 21世紀のNY、
 MOMA美術館で働くひとりの日本人女性の人生をも
 嵐の中の木の葉のように翻弄します。

 ピカソさん公認の貴重な『ゲルニカ』複製作品が
 政治的に利用される、という事件が起きました。

 MOMA美術館のミュレーターであり、
 ピカソ作品の研究者としても知られる
 ヨーコ・ヤガミさんは
 事件に深く関わっているのでは、と
 メディアに疑われます。

「むむゥ! ぬれぎぬゥでス!」
「がるるぐるる!」(←訳:無関係だよう!)

 『ゲルニカ』を利用したのは何者なのか?
 何を目論んでそんなことを?

 スペインで、NYで、
 ヨーコさんは事件の真相を追いますが……

「さすぺんすゥ!」
「ぐるるる!」(←訳:ミステリ!)

 歴史小説的な側面も持つこの御本、
 しかし本質はやはり、
 ミステリだと思われますので、
 これ以上の粗筋は明かせませんが、
 アート好きさんにはきっと楽しめるでしょうし、
 読後の充実感にも、
 そして物語に織り込まれたメッセージにも
 エールを送りたくなる快作です。

 ピカソさんが上げた抗議の声を
 “いま”によみがえらせる一冊を
 皆さま、ぜひ!


 
 
コメント
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