テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

ひたいの、しるし。

2016-08-30 22:09:14 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 とうほくォもォ、ほッかいどうゥもォ~!」
「がるる!ぐるるがるるー!」(←訳:虎です!無事でいてねー!)

 こんにちは、ネーさです。
 台風10号による被害が軽微でありますように……!
 こんな場合ですからね、
 いやもう、後回しにしてもいいんですよ、読書タイムは。
 大雨大風が止んだ後でも充分です。
 台風が去って、お天気が落ち着いて、
 気持ちも落ち着いたなら、
 そのときは、さあ、リラックスして
 こちらの御本を、どうぞ~!

  



            ―― かたづの! ――



 著者は中島京子(なかじま・きょうこ)さん、2014年8月に発行されました。
 第28回柴田錬三郎賞受賞、
 第4回歴史時代作家クラブ賞作品賞受賞、
 第3回河合隼雄物語賞受賞、と
 錚々たる肩書を有するこの御本の主人公は……

 人間じゃない?

「しゅじんこうはァ、たぶんッ!」
「ぐるがる!」(←訳:ツノだね!)

 主人公が、人間ではなくて、
 ツノである、とは、どんなナゾナゾでしょうか。

 いえいえ、実は、謎かけではないんです。

 主人公というべき存在は、
 一頭の羚羊(かもしか)さん、なのでした。

 しかも、この羚羊さん、
 或る特徴があって、見分け易いんです。

 角(つの)が、一本しかない――

「だからァ、かたづのッ?」
「ぐるがるるる!」(←訳:角が片方だけ!)

 片角(かたづの)、あるいは、一本角(いっぽんづの)。

 羚羊さんがそんな呼び方をされるようになったのは、
 珍しいからと捕らえられることもなかったのは、
 ひとりの少女の言葉がきっかけでした。

  《この羚羊はきっと法華経の守護神、
   龍の姿を持つ七面天女の仮の姿に違いない》

「つまりィ、かみさまッ?」
「がるるるぐるる?」(←訳:神さまの御使い?)

 時代は、慶長5年――西暦にして1600年。
 関ケ原で天下分け目の決戦が行われようとしているときです。

 神仏の御加護を祈りこそすれ、
 縁起の悪いことは出来るだけ避けたいと思うなら、
 仏さまの仮の姿か、神の御使いか、
 と見えなくもない一本角の羚羊を
 敢えて殺めようとする者は
 一人としていなくなりました。

 こうして、一本角の羚羊さんは
 はからずも羚羊を救った少女――祢々(ねね)を訪ね、
 しばしば彼女の住む城を訪ねることとなりました、が。

「おしろォ、でスかッ?」
「ぐぅるがるるぐるるる?」(←訳:じゃあ彼女はお姫さま?)

 八戸南部氏20代当主・直政の妻・祢々さま。

 祢々さまが数奇な運命を辿るがゆえに、
 一本角の羚羊さんもまた、
 彼女とともに転変の生を送ります。

 あるときは、羚羊として。
 あるときは、ツノとして。
 またあるときは、ツノ以上の何かとして。

「なにしろォ、にんげんじゃァありませんからッ!」
「がるるぐるるがるるるる!」(←訳:人間の掟には縛られない!)

 遠い西洋の一角獣の神話を、
 万城目学さんの『鹿男あをによし』を想わせる
 ファンタジックな物語は、
 それとも、一種の異類婚譚でしょうか。

 羚羊とヒトの、
 ヒトとヒトならぬものの、
 いつかは神話になるかもしれないものがたり……

「いまごろォ、かたづのォさんはァ、どこにィ?」
「ぐるがるぅ?」(←訳:元気かなぁ?)
 
 夏の名残の読書タイムに、
 皆さま、ぜひ!
 
 
コメント
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