第 1793回の逆浸透膜(RO膜)や第 3236回などで海水淡水化を取り上げてきましたがまだまだコストの壁を敗れないのか大きく導入さ れたとの話題を聞きません。
ところがそのコストを大幅に削減できそうな技術が開発されそうなのだそうです。 こんなものが実現されれば人類の大きな問題の一つが解決されそうです。是非、実現させて欲しいものです。
SJN Blog 再生可能エネルギー最新情報より 2012年7月10日
「海水淡水化にグラフェン使 える」MITがシミュレーションで実証
水分子(赤と白)だけが孔の開いたグラフェン(水色)を透過できる。ナトリウムイオ ン(緑)と塩素イオン(紫)は孔を通れない (Graphic: David Cohen-Tanugi)
マサチューセッツ工科大学(MIT)の報告 によると、グラフェンを材料とするフィルターによって海水淡水化処理(脱塩処理)が可能であるとのこと。低 コストな海水淡水化システムが構築できる可能性がある。2012年6月5日付の Nano Letters に論文が掲載されている。
研究チームが行ったシミュレーションでは、微小な孔の開いた単層グラフェンの膜をモ デル化し、分子動力学の手法を用いて孔の口径、化学的機能化、膜にかかる水圧と脱塩能力との関係を調べた。その 結果、孔の口径をちょうど1nm程度とするとき、水分子だけがグラフェ ン膜を透過し、塩素イオンとナトリウムイオンは透過しないようになることが分ったという。孔の口径がこれよ りも大きいと塩素イオンやナトリウムイオンもグラフェン膜を通り抜けてしまうし、孔がさらに小さくなって 0.7nm程度になると水分子もまったく透過できなくなる。
グラフェンに孔を空けて分子のフィルタリングに利用する研究には先行例があるが、そ れらはDNAなど大きな分子のフィルタリングや気体の分離などを行うた めのものであり、微小な孔の口径制御という点では、脱塩用途に適合するほどの精密な制御はされていない。研 究チームでは、こうした精密な口径制御を行う方法として、ヘリウムイオン衝撃や化学的エッチング、自己組織 化システムなどが適していると考えている。これまでのところ、研究はコンピュータ上のシミュレーションだけ だが、今夏からは試作品の作製にも取りかかるという。
今日、海水淡水化処理システムで使われている一般的な方法は、逆浸透膜(RO膜)による脱塩である。しかし、RO膜は膜厚が厚いため、水を通過させるに は高い水圧をかけなければならないという問題がある。水圧を上げれば、その分エネルギーを消費することにな る。
脱塩処理にグラフェン・フィルターを使うことの利点は、膜厚が炭素原子1個分しかなく、RO膜に比べて1000分の1程度の薄さであるということ。弱 い水圧で水を透過させられるため、エネルギー消費が少なく、低コストなシステムにできる可能性がある。ま た、RO膜と同じ水圧をかければ、処理速度が数百倍高速化すると考えられる。…以下略
A new approach to water desalination
グラフェンと言えば第 4375回などでも取り上げたようにキャパシタでも脚光を浴びていましたが、これからの技術の カギを握っているような気がします。
水や電池がこのグラフェンによって画期的な低価格で実現されることを期待したいものです。こういう分野 こそ日本が得意そうなところだと思うのですが思い切って国を挙げて研究に取り組むなんてこともやってみたら どうでしょう。水とエネルギーをものにすれば日本の将来も安泰と言うものです。
日本人ならやりそう!