△バルトの楽園(2006年 日本 134分)
監督/出目昌伸 音楽/池辺晋一郎
出演/松平健 ブルーノ・ガンツ 阿部寛 國村隼 市原悦子 勝野洋 大杉漣 高島礼子
△関連小説の話
この映画が撮影されるちょっと前、
『奇蹟の村の奇蹟の響き』
という小説が、月刊誌『歴史街道』に連載された。
主人公はこの映画で松平健の演じた松江豊寿を収容所に送り迎えした俥引きで、岩下松五郎という。教養がなく、暴れることしかできないような男なんだけど、この一介の俥引きの人生を追うことで、俘虜収容所のあらましと、ベートーベンの第九が日本で初めて演奏されたあらましが見えてくる。長くなるので、くわしくは、ここにある。
「徳島エンゲル楽団のブログ」
http://ameblo.jp/engel-tokushima/entry-10893986886.html
あるいは、
「徳島エンゲル楽団のホームページ」
にある。
で、映画の話だけど、オープンセットがなかなかの出来栄えだった。もともと坂東俘虜収容所が置かれた徳島県の坂東に作られたんだけど、現在では「阿波大正浪漫 バルトの庭」っていうテーマパークになってるらしい。近くには、鳴門市ドイツ館が置かれていて、いまでも、当時の俘虜たちがどんなふうに生活してたのか見せてもらえる。
映画にも出てきたけど、ぼくが気をひかれるのは、國村隼の演じた高木繁っていう将校さんだ。副所長だったような気がするけど、この人がいたことで、ドイツ俘虜はずいぶんと慰められたらしい。高木さんは不幸にも満洲からシベリアに送られたらしいけど、そのあたりのことは『奇蹟の村の奇蹟の響き』にも出てる。
おもうんだけど、小説にしても映画にしても、物語になったとき、架空の主人公を置いて、それを狂言回しにすることで、意外に実際にあった出来事を客観的に観ることができる。
これまでにいろんな歴史小説や歴史映画が出来たけど、洋画の場合は、そういう狂言回しをうまく置いて話をつくってることが少なくない。小説や映画はあくまでも物語で、もしも事実を知りたければ、当時の公文書や日記を読まないかぎり、むつかしいんじゃないだろか?
とかって、そんなに本を読まないぼくがいっても、説得力はないけどね。