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☆=☆☆☆☆☆
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ALWAYS 三丁目の夕日

2007年01月29日 12時51分33秒 | 邦画2005年

 △ALWAYS 三丁目の夕日(2005年 日本 133分)

 監督・VFX/山崎貴 音楽/佐藤直紀

 出演/吉岡秀隆 堤真一 薬師丸ひろ子 小雪 堀北真希 三浦友和 もたいまさこ

 

 △昭和33年であって昭和33年でないもの

 ときどき、観光地とかに出かけると、昭和レトロな空間の作られていることがある。

 そこへ何度か入っている内に「これ、いったい、いつの昭和だよ?」とおもうようになった。

 少なくとも、ぼくの知ってる昭和より前の昭和で、おそらく団塊の世代の郷愁を誘う昭和なんだろう。

 だからといって決して懐かしくないわけじゃなく、それなりに郷愁をそそられるんだけど、

「なんか、ちがうんだよな~」

 とも、いつのまにやら、おもうようになった。そこは作られた昭和で、思い出の中の昭和ではないからだ。

 そんな印象を、この映画からも感じた。

 冗漫な雰囲気は編集なのか演出なのかわからないけど、ともかくコメディにしたかったのか、役者の演技過剰にもちょっと引いたし。CGはたしかに頑張ってるなっていう感じはしたけど、セットをいかにもセット然とした演出の意味がわからない。

 すべての場面をCGとセットにするというのなら、わかる。無くなってしまったものを人工的に再現したのだといいきれるし、現実の再現ではなく、心の中にあるものの再現なんだからとも理由も断言できる。けど、ロケーションとセットとを組み合わせているんなら、再現するものの意味合いがすこしばかり違ってくるんじゃないだろか?

 ロケ現場の建物は現役で、昭和時代より朽ちてはいてもまだ生きてる。なのに、ステージ内に作られたセットの映像はすべて死んでた。各地から本物の小道具が集められたそうだけど、みんな、死んでた。セットが、あまりにもセットすぎたからだ。

 どうして、ばればれのセットにしたんだろう?なんで、わざわざセットにしか見えない撮影をしたんだろう?岡山や京都や群馬や福岡までわざわざロケに行ってるのに、どうして、現実味の薄い映像にしちゃったんだろう?どうして、お涙頂戴の昔ながらの物語にしちゃったんだろう?役者たちの大仰な芝居も加わって、なんだか気持ちが悪かった。

 とはいえ、好いな~と感じたものもある。佐藤直紀の音楽で、映画が封切られて以来、昭和レトロなものが出てくると、かならずこれだ。おかげでかなり食傷気味になってるけど、でも、好い音楽だった。とはいえ、この映画の主題が、ぼくにはやっぱりわからない。

 なにを観客にいいたいんだろう?

『クレヨンしんちゃん おとな帝国の逆襲』には、立派に主題があった。

「昭和時代は懐かしいし、帰りたいし、いつまでも続いてて欲しいけど、ぼくらは現代に生きてるんだから、現実に立ち向かっていかなくちゃいけないんだ」

 っていうのが、そうだ。

 この映画の主題は、なんなんだろう?聞けば、200万人を動員したらしいけど、その200万人の人々は、なにをおもしろいと感じて銀幕を観ていたんだろう?

「懐かしさもあったし、おもしろかったから、それでいいじゃん。つまんないこといってんじゃないよ、あほたれ」

 と怒られそうだけど、気になるんだから仕方がない。

 ま、少数派のたわごとだけどね。

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