◎キャラクター 孤独な人の肖像(1997年 オランダ 122分)
原題/Karakter
監督/マイケ・ファン・ディム 音楽/バレス・ヴァン・ブン(ブン宮殿楽団)
出演/フェジャ・ファン・フエット ヤン・デクレール ベティ・スヒュールマン ヴィクトー・ロウ
◎監督と撮影はこれが処女作
ちょっとどころではないくらい、驚きた。
もうかなりの熟練監督が、これまた熟練のスタッフを動員して作った作品だとばかりおもってた。それがどうして、こんなに堂々とした作品を作り、アカデミー賞の外国語映画賞を受賞しちゃえるんだろう。
この人達が特異な才能に恵まれているか、あるいは、オランダという国に上質な映画を作る土壌でもあるのか、ぼくにはよくわからないけど、古典的ながらも重厚な物語性といい、レンブラント光をそのまま映像化したような絵作りといい、いやまあ、凄いもんだ。
ただ、俳優さんの馴染みの無さが、見るのにすこしばかり辛かったかも。
ていうのは、顔の区別がうまくつかないんだよ~。もともと暗い画面づくりをしている上に、なんとも陰湿でちからの籠もった内容なもんだから、顔がついつい無表情になりがちで、目を皿のようにして見ていないと、なかなか理解できない。
あ、理解っていうより、把握っていった方がいいかも。
要するに、某スポコン漫画と似たような主題で、父と子の確執っていうか、獅子が千仞の谷に子獅子を突き落とす故事をそのまま話にしてるんだけど、ライオンじゃなくて執政官の父と弁護士になろうとする息子の話になってて、もともと認知されなかった息子が、さらに借金や破産や試験や母の死や人生の障害にぶつかるたび、父親が手を回してこっぴどい目に遭わせてくるのを乗り越え、最後には父親と決闘まがいの乱闘になった後、父親の殺害容疑で逮捕されたときに至ってようやく、
遺言によって、父親が獅子であろうとしたことを知るっていう筋書きになってる。
これが、重苦しいんだ。
あ、でも、すごくおもしろかった。
とはいえ、たった一度の欲望によって、自分の種を相手の女性が宿してしまったとき、その責任感と行動を木っ端微塵に拒否されたらどうなるだろう?生まれてくる子を愛しながらも憎みつづけるような、歪んだ人生を歩む事になるんだろうか?っていう、なんだかきわめて深遠な主題を抱えてるもんだから、観終わったあとでも、う~んと頭を抱えちゃうんだよ。
母親の気持ちもわからないではないけど、強情すぎるんじゃない?とか、父親の気持ちもわからないではないけど、厳格すぎるんじゃない?とか、いや、そもそも、両親が意地を張り過ぎたために息子が痛めつけられてるんじゃない?てなことを、あれこれ考えちゃうんだよね。
まあ、こういう設定もありなのか~と、他人事のように感じてしまった。