◎恋愛小説家(1997年 アメリカ 139分)
原題/As Good as It Gets
監督/ジェームズ・L・ブルックス 音楽/ハンス・ジマー
出演/ジャック・ニコルソン ヘレン・ハント グレッグ・キニア スキート・ウーリッチ
◎斧は持たないのか?
そのかわりに、プラスティックのフォークとナイフ。
『シャイニング』と似ているのは、主人公の精神構造だ。
いつぶちきれるかわからないような異常ともいえる潔癖症で、観ているこちらとしては、次になにが起こるかはらはらさせられる。それほど、この映画の主人公である恋愛小説家は、まわりの人間を言葉でぶち殺してしまうような毒舌家のため、いつまでも結婚できない偏屈屋という設定になってる。
いや、まったく、老いて尚、魁偉な演技の出切る男ジャック!どうしてここまでセクシーかつ気味の悪さを演じられるのか不思議だけど、やけに可愛い。そこが『シャイニング』とは真反対な人間像に作られてる。
にしても、犬をダストシュートに放り込んだりするところ、これって動物愛護団体から文句は出なかったんだろうか?
もっとも、そのあとの可愛がりようから、そんな心配は吹き飛んじゃう。
そう、この映画はあまりにはらはらさせる溝嫌い、線恐怖症の男が、いつのまにやら、あまりにも奥手で純粋で不器用なことがわかることから、そのわがままぶりから毛嫌いされているはずが、その可愛らしさから誰からも愛されるようになるという筋立てになってる。なんとも見事な設定と脚本、そして、ジャック・ニコルソンの大仰な顔と演技がぴったりとはまってる。
音楽がこれまたほのぼのと可愛い。
と、ここまではいいんだけど、こうした主人公の設定や話の筋は、えらく簡単なように見えて、なかなか考えつかないものだ。ところが、この映画が封切られてからのこと。この映画の設定や筋に、非常に細かい部分まで恐ろしいほど酷似した日本のテレビドラマがあり、とある大手新聞がそのプロデューサーにインタビューし、オリジナル脚本のおもしろさについて取材され、記事になってた。
ぼくは、ちょっとふるえた。
「え!オリジナル!?」
ものすごい偶然のなせるわざだとおもった。
ぼくみたいな凡人にはとても考えつかない設定と筋立てなんだけど、世の中には、海を隔てた日本とアメリカで、やや時間差はあるものの、ほぼ同じ時期に、まったく寸分たがわないようなドラマができるなんて、物語をつむぎだす人達の発想ってのは似てくるものなんだろか?
世の中にはありえないことがありえるもんなんだね。
びっくりしたわ、まじに。