◎殺し(1962年 イタリア 92分)
原題/La Commare Secca
監督/ベルナルド・ベルトルッチ 音楽/ピエロ・ピッチオーニ
出演/フランチェスコ・ルイウ ジャンカルロ・デ・ローザ ヴィンチェンツォ・チッコラ
◎ベルトルッチ、衝撃のデビュー
若干21歳。当時、詩人。そして処女作。
「やめてよ、まったく」
といいたいほどの映像的な才能。
パゾリーニとは詩を介して知り合ったっていうんだけど、師匠と弟子っていう関係だったんだろうか?
けど、自分で撮ろうとしていた映画のあらすじを渡しちゃうわけだから、パゾリーニも相当、若き日のベルトルッチを買ってたんだろね。もちろん、パゾリーニにしてみれば賭けみたいなものだろう。詩作は多少できても、映画の監督が務まるかどうかはわからないんだから。いや、結局のところ、ベルトルッチを発掘したんだから、さすが、パゾリーニっていうか、人を観る目があったんだろう。だから、原案を提供したんだろうね。
それにしても、見事な映像詩だ。吹きっ晒しの河原、夕陽に舞う無数の紙切れ、中年の娼婦の死体、五人の容疑者、バック盗みのコソ泥、娼婦のヒモ、ヒモの愛人、ケンカ、娼婦の部屋、陰鬱な空気、しとしとと降る雨、罵声、休暇中の兵士、好色、ローマの女、ふたりの少年、警官、逃走、溺死、少年の真実、ふたりの少女、食料品店、金欠、ホモ、コート盗み、ホモの目撃、犯人、縦縞の男、サンダル、足音、ダンス、若い娼婦、そして逆光、流麗なカメラワーク…。
でたらめに聞こえるさまざまな証言が、そのままモザイクのように散りばめられ、やはりモザイクのような映像とともに犯人像を形づくり、事件をひっぱる。
これが、才能っていうやつだ。