Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

殺し

2007年01月12日 12時16分28秒 | 洋画1961~1970年

 ◎殺し(1962年 イタリア 92分)

 原題/La Commare Secca

 監督/ベルナルド・ベルトルッチ 音楽/ピエロ・ピッチオーニ

 出演/フランチェスコ・ルイウ ジャンカルロ・デ・ローザ ヴィンチェンツォ・チッコラ

 

 ◎ベルトルッチ、衝撃のデビュー

 若干21歳。当時、詩人。そして処女作。

「やめてよ、まったく」

 といいたいほどの映像的な才能。

 パゾリーニとは詩を介して知り合ったっていうんだけど、師匠と弟子っていう関係だったんだろうか?

 けど、自分で撮ろうとしていた映画のあらすじを渡しちゃうわけだから、パゾリーニも相当、若き日のベルトルッチを買ってたんだろね。もちろん、パゾリーニにしてみれば賭けみたいなものだろう。詩作は多少できても、映画の監督が務まるかどうかはわからないんだから。いや、結局のところ、ベルトルッチを発掘したんだから、さすが、パゾリーニっていうか、人を観る目があったんだろう。だから、原案を提供したんだろうね。

 それにしても、見事な映像詩だ。吹きっ晒しの河原、夕陽に舞う無数の紙切れ、中年の娼婦の死体、五人の容疑者、バック盗みのコソ泥、娼婦のヒモ、ヒモの愛人、ケンカ、娼婦の部屋、陰鬱な空気、しとしとと降る雨、罵声、休暇中の兵士、好色、ローマの女、ふたりの少年、警官、逃走、溺死、少年の真実、ふたりの少女、食料品店、金欠、ホモ、コート盗み、ホモの目撃、犯人、縦縞の男、サンダル、足音、ダンス、若い娼婦、そして逆光、流麗なカメラワーク…。

 でたらめに聞こえるさまざまな証言が、そのままモザイクのように散りばめられ、やはりモザイクのような映像とともに犯人像を形づくり、事件をひっぱる。

 これが、才能っていうやつだ。

コメント