◎オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ(Only Lovers Left Alive 2013年 アメリカ)
ティルダ・スウィントンがいかにも吸血鬼らしくてええわ~。
肉感的なところを徹底して削ぎ落したような彼女は、
ほんと、白い魔女だの吸血鬼だのが似合う。
そんなことはさておき、
冒頭、レコードの回転に合わせて画面(世界)が回っていくという絵柄は、
吸血鬼もまたレコードのように過去の遺物になってしまったって意味なんだろか?
もはや希少価値以外に何の価値もなくなり、
滅んでゆくのをただ待っているような心寂しい生き物としてだけ存在してる。
なんとも儚い話ながら、
もともと、吸血鬼は吸血鬼たりえる人間を世界中を回って探し求め、
そして仲間にすることで自分たちを特権階級のひとつとしてきた。
いわば特別な貴族といっていいようなものだったはずなのに、
いまや、吸血鬼は哀れな絶滅危惧種でしかなく、
自分たちが生息している場そのものが、
かつては世界でも有数の都だったり、工業の一大中心地だったりしつつも、
今では落ちぶれた連中だけがひっそりと生きてるだけの町になってしまった場所で、
そんなところで身を隠して、宝物のような品を少しずつ売っては、
ワインを愉しむように買い求めた血液を呑んで生きてゆくしかない、
っていう状況に追い込まれている。
結局、種を保存し、かつ自分たちを生き永らえさせるためには、
血液銀行から血液を買うだけでは足りず、
どうでもいいようなランクの人間までも吸血鬼とし、
さらには処女の生き血しか呑めないはずが、
そこらの場末の人間の血を糧にしなければならないという、
哀れなほどの落ちぶれたありさまに成り果てている。
あ~、なんか身につまされるわ~。
とはいえ、
絵作りはいかにもジャームッシュだし、
重苦しいながらも洒落た音楽もまた、いかにもジャームッシュらしくて好い。
社会から取り残されつつも、世間とは一線を画すことで矜持を保っていた者が、
おろかしい一部の者によってその最後の一線を断ちきられてしまい、
かろうじて保っていた世界すなわちプライドある生活の崩壊とともに、
プライドを捨ててまでしても生きていきていきたいという、
この世に生きる者すべてが備えている根源的な本能を肯定せざるを得ないという、
なんとも哀れな話なのだよね。