☆もうひとりの息子(Le fils de l'autre 2012年 フランス)
湾岸戦争の頃、ハイファの病院で同じ日に生まれた子が取り違えられる。
これが悲劇の発端なんだけど、
問題は、
ふた組の夫婦が、
イスラエル人家族と、ヨルダン西岸地区のパレスチナ人家族だってことだ。
単なる息子の取り違えとその状況に苦しみ、
おたがいを理解し合っていくっていう話は、
そこらにごろごろしてて、これといって目新しいものじゃないけど、
この映画は、ちがう。
イスラエル人にとってパレスチナ人は自国に脅威をあたえる人間で、
いつ蜂起するかわからない恐怖の対象であるし、
パレスチナ人にとてイスラエル人は故国を占領している仇敵で、
いつか蜂起して追い出してやろうとする憎むべき対象であるのと同時に、
自分たちを隔離しているような壁の向こうには金と自由が溢れていて、
それに対するひがみが色濃くあって、
劣等感を持つが故に憎悪の対象にもなってるっていう、
ほんとに悲しい関係にある。
それでまた、
陸軍の大佐とエンジニア職を奪われて自動車工になってる父親の息子っていう、
なんとも皮肉な関係なものだから、余計にめんどくさい。
ただ、育てた息子とまだ見ぬ息子への愛情を、
全面的に出してくる母親はやっぱりたいしたもので、
こういう母性愛はどこの国のどの人種も変わらないんだろうな~っていう気にもなる。
ただ、
息子たちはそれぞれ大人の世界に足を踏み入れている分、
自分のすべき行動がもやもやしながらも徐々に出来あがっていく件りは、
人種問題を含んでいるから底が深い。
チンピラに刺され、病院に収容されて、両親がすぐに来るよと聞かされたとき、
「どっちの親?」
というジョークを飛ばせるのは、やっぱりフランス映画だわね。