◎真珠の耳飾りの少女(Girl with a Pearl Earring 2003年 イギリス・ルクセンブルク)
ヨハネス・フェルメールの人気は世界的なもののようで、
ご多分にもれず、ぼくも好きだったりする。
だから、スカーレット・ヨハンソンが演るというのを聞いたとき、
ちょっとな~と、おもった。
だって、肉づきがちょいと好すぎるし、
なんといっても半開きになった唇がセクシーすぎるだろっておもったからだ。
で、予想どおりだったんだけど、それについてはおいとこう。
絵づくりに、度肝を抜かれた。
だって、フェルメールの絵そのものなんだもん。
窓から差し込む日の光について下女のヨハンソンも気にしてるとおり、
照明の細部までもが、絵のとおりだ。
このあたり、凄い。
衣装も美術もそうで、1660年代のオランダが見事に定着してる。
自然光のもたらす和やかさと、役者たちの迫真性とがあいまって、
画面すべてにいいようのない緊張感が生まれてる。
ま、そんなふうにべたぼめしちゃうのも無理のない映像だし、
つむがれてる物語の理性的な美しさもまた褒められるべきかもしれないね。
少女に自分を理解できる才能と心根を感じ取ったフェルメールの、
触れたくても触れられない葛藤と、
やがて、少女の耳たぶに耳飾りの穴を開けるときの緊迫感は、
いや、ほんと、かなり官能的な世界だとおもうんだよね。
誰の指先も触れることのなかった少女の肌に、
妻子ある男が針を突き刺して血を滲ませるんだから。
ま、そのへんのところをじっくりと堪能することで、
芸術と官能がいかに表裏一体なものなのか、
ため息が出るほどに感じ取れちゃうんだよな~。
あ、だからヨハンソンだったんだろうか…。