◇デス・パズル(Class of '76 2005年 イギリス 140分)
擦られ過ぎた観のある解離性同一性障害。
でも、そこにいたる前半部分は、
なんとも味のあるゆらゆらとしたゆるやかな恐怖がたゆたってて、
嫌いじゃない。
29年前の小学校のとあるクラスに、32人の同級生がいた。
ところが、そのクラスには33人目の同級生がいる。
犯人はそいつだ。
てなことになれば、もうそれだけでオチは見えちゃうんだけど、
でも、この映画ではそれが大事なわけじゃなく、
その事実の前後にあるもの悲しい絆とあらたな悲しみが主題だ。
ハリウッドのケレン味たっぷりなものを期待したら、
そりゃもう期待外れに終わっちゃうんだけど、
イギリスのテレビ映画だってことを加味して観れば、
なかなか上質な出来なんじゃないかって感じはした。
物静かで決して前に出ることもなければ、
対人関係もうまく行かないけれど、
ひとつひとつの物事にちゃんと向き合い、
それどころかのめり込んでしまい、
他者の悲しみを自分の悲しみのように受け入れてしまう男、
なんていう設定は、ロバート・カーライルにはもってこいなんだけど、
どうしたところで地味になる。
この地味さをこらえるか、あるいは味わえれば、
作品を包み込んでる淡々とした心の戦慄が感じられるんじゃないかな。