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マーニー

2014年10月02日 00時58分24秒 | 洋画1961~1970年

 ◇マーニー(1964年 アメリカ 130分)

 原題 Marnie

 staff 原作/ウィンストン・グレアム『マーニー』

    製作・監督/アルフレッド・ヒッチコック 脚色/ジェイ・プレッソン・アレン

    撮影/ロバート・バークス 音楽/バーナード・ハーマン

 cast ティッピ・ヘドレン ショーン・コネリー ダイアン・ベイカー ブルース・ダーン

 

 ◇赤い恐怖

 ヒッチコックはこの映画を「男の女の映画です」と予告編でいってる。

 たしかにそうで、黄色の基調の男は、緑色の基調の女を獲ろうとしている。

 つまり、セックスの映画だ。もちろん、過激なセックス場面があるわけではないし、濡れ場めいたものはキスしかない。けど、性を象徴するものはいっぱい画面に登場するし、ティッピ・ヘドレンがほとんど無意識の内に欲求不満に陥っていて、どうにもこうにもやるせないほどセックスに飢えていながらも、

「そんな汚らわしいことには興味がないの」

 という高慢ちきな態度に出る一方、淫らな印象をふりまいているという撮り方は、いやまったくヒッチコックが常軌を逸してるとしかおもえないほどだ。

 どうやらヒッチコックはこの撮影中ていうか前作の撮影中からティッピ・ヘドレンにいいより、きつい肘鉄をこうむっているらしく、

「だったら、淑女ぶった仮面をはいで淫らな本性をさらけだしてやる」

 とばかりに、撮影で復讐しているとも受け止められるような画面をつくりだしてる。

 まあ、うがった見方をすればそうなるんだろうけど、幼い頃に母親が売春をして苦しい家計を支えていたんだけれども、その母親の客を殺してしまったことで、セックスに対して尋常でないトラウマを抱いてしまいながらも、体内に流れているセックスへの興味と妄想から逃れられず、赤いものや稲光にどうしようもなく戦慄し、金銭を盗み出すことで快感を解消してしまうことから盗癖が治せずにいるという、きわめて興味深い女を設定し、彼女の過去を探り、本質をとらえようとする狩人然とした相手を設定し、このふたりをぶつけることで作品を作り上げようとしてるのはまちがいない。

 ヒッチコックの心模様はともかく、なんとも性的な映画ではあった。

 なにしろ、男根の象徴といえる馬にまたがって疾走するところは、エクスタシーの表情をとらえるためだけに撮影したんじゃないかってくらいで、画面の裏に隠されている性のほとばしりがこれほど感じられる作品もめずらしい。

 つまりは、おとなの映画ってことよね。

(以下、二度目)

 それにしても、ティッピ・ヘドレンのコートの緑色は品がいい。渋い緑だ。『めまい』の車の色もいいけど、さらにいい。それにひきかえ、ショーン・コネリーの義妹ダイアン・ベーカーのワンピースの緑はてらてら光って品がない。このあたり、ヒッチコックの色に対するこだわりはすごいっておもうわ。なんつっても綺麗だしね。

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