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普通の人々

2014年10月23日 01時59分26秒 | 洋画1971~1980年

 ◇普通の人々(1980年 アメリカ 124分)

 原題 Ordinary People

 staff 原作/ジュディス・ゲスト『Ordinary People』

     監督/ロバート・レッドフォード 脚本/アルヴィン・サージェント

     撮影/ジョン・ベイリー 音楽/マーヴィン・ハムリッシュ

 cast ドナルド・サザーランド ティモシー・ハットン エリザベス・マクガヴァン

 

 ◇1970年代、シカゴ郊外

 いつの時代もおなじように語られるのが集団の崩壊だ。

 映画は常に家庭や家族や一族をとらえ、そしてその崩壊を見つめてきた。

 この作品も例外じゃない。

 けど、やっぱりWASPの国アメリカは、最後に小さな希望を灯す。

 白人の上流階級だからっていうわけじゃなくて、

 それがハリウッドのドラマツルギーなのかもしれない。

 どのような家族であれ、はたから見れば幸せそうでも、いうにいわれぬ悩みを抱えている。

 弁護士ドナルド・サザーランドの家族もそうだ。

 息子がふたりして海に出、兄が事故死してしまったりしたら、

 その痛手をおのおのが抱えて、家族は絶望と苦悶に包まれて崩壊しかけるだろう。

 ことに自分のせいで兄を殺してしまったと弟が悩むのは仕方のないことで、

 さらに病院でともに診察をうけていた女友達との再会もつかの間、

 自殺されちゃったりしたら、これはもう自我の崩壊が待ってる。

 けれど、こういうときに救いになるのは異性の愛なんだよね。

 そしてまた、家族の絆なんだよね。

 たしかに、母親は父子のもとから去ってしまうのかもしれないんだけど、

 それから先に希望をつなげるような心持ちになんとかなっていくことで、

 父と子はなんとか蘇生してゆけるのかもしれないっていう光を残してる。

 そういうあらすじからいえば、

 たしかに普通の人々のささやかな希望なのかもしれないけど、

 実はこの人々は普通じゃない。

 知識と財産と品格を備えた上流階級の家族だ。

 家族の死とまっこうから向き合える誠実さを持ち、

 家族の絆をしっかりと信じている。

 それは、WASPだからこその物語で、そういう意味では「上流な人々」なんだろね。

 とはいえ、ホームドラマとしてはきわめてしっかりしてる。

 実は、ちょっとふしぎなんだけど、

 ぼくはこの作品がアカデミー賞を受賞したときの光景をよくおぼえてる。

 レッドフォードが受賞式の檀上に現れたとき、げっそりとやせ細ってて、

 ぼくは「ありゃあ、こりゃ重い病気なんじゃないか」とおもったものだ。

 だから、とても銀幕に映るのをよしとせず、監督に徹したんじゃないかと。

 ところがそうでもなかったようで、

 その後もレッドフォードは活躍し続けている。

 なんであんな勘違いをしたんだろうと、今もってふしぎなんだよね。

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