◇チャイルド44 森に消えた子供たち(2015年 アメリカ 137分)
原題 Child 44
監督 ダニエル・エスピノーサ
◇アンドレイ・チカチーロ
ウクライナ生まれの連続殺人者がモデルになっているようだけど、史実との差異についてはともかく、物語についていえばどうにも散漫な印象だった。
リドリー・スコットが製作になっているからといって、それだけの迫力が出るかといえばそうではないし、そもそも僕みたいな不勉強者は1953年のソヴィエトについてよくわかっていないし、その20年前にはソヴィエトは一大飢饉に見舞われ、カニバリズムにまでいたり、それも子供たちが犠牲になったとかっていう事実もまるで知らなかった。
そこへもって、知らないことだらけの世界に自分のアイデンティティを探してゆく主人公の回想と、その妻との間に横たわる亀裂と愛情の再確認、スターリンによる「ソヴィエトに殺人はない」という欺瞞の暴露、そしてようやく子供の連続殺人の解明などが一緒くたになってぎゅうぎゅう詰めに詰め込まれてるんだから、まああかん。前半、とくに30分が過ぎるまでは「なんだい、連続殺人事件の解明劇じゃないのか?」という戸惑いからまったく立ち直れず、観る作品を間違えたんだろうかとまで、まじにおもったりもしたくらいだ。やっぱり、焦点の絞り切れない物語はどうしてもぼんやりしちゃうし、中でもいちばん謎の解明が中途半端になるのはあかんでしょ。
ただまあ、ずんぐりむっくり低音呟きトム・ハーディのいかにもタフガイめいた肩で風切る歩き方を見てると、なんだか『欲望のヴァージニア』みたいな印象を受けたりして、どうにもMGBソヴィエト国家保安省の将校のようには見えない。まあそれは、ノオミ・ラパスにしてもおんなじでなんか『ミレニアム』をひきずっちゃうんだよな~。
ただ、トム・ハーディとゲイリー・オールドマンのコンビでソヴィエト連邦内の殺人事件の担当をすることになったわけだし、そういうのからすると、これって3部作とかのシリーズになりそうな気配が嫌っていうほど濃厚に漂ってるのもなんだかな~って感じはあるよね。登場人物の紹介版かよ、みたいな。この先、どないすんねんっ。