◎ハンガー・ゲーム FINAL: レジスタンス(2014年 アメリカ 123分)
原題 The Hunger Games: Mockingjay Part 1
監督 フランシス・ローレンス
◎三本指の敬礼
まさしく、近未来革命物の王道を突き進んでる。
予想を超えた展開はほとんどなく、こう持っていくしかほかにないだろうと予測されるのを1ミリも違えることなく突き進んでゆく単純さは観ていて清々しいほどだ。余分な伏線もなければ、衒いもなく、ただひたすらジャンヌ・ダルク物語のように展開していく。市井の少女が運命のなせるがままに小さな戦場へ連れ出され、そこでおもわぬ勝利を得てしまったことで英雄とされ、以前より盛り上がりつつありながらも神輿を欠いていた革命軍に白羽の矢を立てられたことから、独裁者から狙われ、それを跳ね返して救国の女神となっていくという、正に絵に描いたような定番の物語だけれど、これを潔く作り上げているところにこの作品の好さにあるんだろう。
これまでの一連の叛乱物と違うのは、ヒロインが中継されていることだ。1と2ではゲームが舞台だったからもちろんそれを愉しむ国民に向けて中継されるのはあたりまえだったが、今度はプロパガンダの象徴としてセミ・ドキュメンタリ物のヒロインとされ、それが世界へ配信されていくことでさらに彼女は革命派のアイドルとなる。ところがもちろんヒロインにとって重要なことはこの演出に乗せられるのを拒み、自分の言葉を叫び、それが配信されるんだ。当然の展開だけれども、こうした配信という形はなかなか斬新だ。
もちろん、忘れてはならないのはこれまで共に戦ってきた彼氏未満のジョシュ・ハッチャーソンが拉致監禁された上で独裁者側のプロパガンダとして捏造されたインタビューに出、それが配信されることだ。ハッチャーソンと入れ替わるように頭角を現してくるのがリアム・ヘムズワースで、この元カレは彼女の頼りとされるようになり、共闘の戦士となる。そう、紅一点ともいうべきジェニファー・ローレンスは、右のふたりに加えてサム・クラフリンやウディ・ハレルソンに助言され、かつ励まされて成長していく。これほど世の女の子にとって理想的な環境はない。
ただ、あたりまえのことながら、今回の作品はpart1である以上、part2への繋ぎ以外の何物でもない。だからここで痛快さや感動を期待したところで仕方がない。序盤であり、前奏曲でしかないのだ。ただ、ちょっとだけ、気持ちの入っていくところがある。やがて爆破炎上される病院の場面だ。にわかに訪問してきたジェニファー・ローレンスに対して未来を託すかのように三本指の敬礼をするところだ。
この三本指の敬礼は映画の中だけのみならず、実際に世界中で為されているらしい。抑圧され、自由を求める人達が、あたかも映画の中の登場人物のように三本指の敬礼をするのだそうな。そしてこれが映像となって配信されるや、すぐさま火消しにかかるのがその国の政府だというんだから、凄い。
物語が社会に対して影響力を持っているのだということを見せつけた点において、この映画はまさしく価値を得た。