◇パーフェクト・センス(2011年 イギリス 92分)
原題 Perfect Sense
監督 デヴィッド・マッケンジー
◇ただ無くなっていくのみ
たとえようもない悲しみに襲われてそこから解放されると同時に嗅覚が失われ、どうしようもない食欲が込み上げてそこから解放されると同時に味覚が失われ、こらえきれない怒りが暴発してそこから解放されると同時に聴覚が失われ、なにものにも代えがたい幸福感に包まれるのと同時に視覚が失われる。ただ、それだけの映画だ。
もちろん、あらがう。あらがおうとするのは医者であるエヴァ・グリーンで、謎の感染症を受け入れながら懸命に対処していこうとするのは料理長のユアン・マクレガーだ。ふたりの置かれている設定はちょうどいいところなんだけど、結局のところ、なんにもできずにいるんだよね。
こういうパニック物っていうのはどこかに希望の灯がないとただ追い込まれていくだけになっちゃう。やがて暗闇が訪れたときは幸せかもしれないけど、そこから解放されたときに、もはや逃げきれない悲しみと食欲と怒りがいっぺんにやってくるのはもはや自明のことで、映画の佳境でグリーンは「マンモスは徐々に滅亡したのではなくて一挙に氷河期が来たために滅亡したのだ」と独白する。胃袋に未消化の草があったことからそれは想像できるというのだけれども、人類もまた同じなのだという暗喩であるのはここに書くまでもない。
でもな~どうにも未消化な物語なんだよな~。