◎ピエロがお前を嘲笑う(2015年 ドイツ 106分)
原題 Who Am I - Kein System ist sicher
監督 バラン・ボー・オダー
◎仮面と地下鉄
なるほど、地下をすいすいと移動してゆく仮面の男たちというのは、実にいいえてる。
ただ、どうしてハッカー(クラッカー?)は男ばかりなんだろ?女がいたっていいじゃんね。で、映画の途中からこんなことを考えてた。すべては34歳の大学生ハンナー・ヘルツシュプルングの仕組んだことなんじゃないかって。けど、そこまで入り組んではいなかった。たしかにコンピュータについては僕はさっぱりわからんから「これは困ったことになったかもしれない」と冒頭観てておもったんだけど、結局のところ、ITの世界は小道具大道具つまり修飾部分なんだね。でも、おもしろかった。
そもそも『アクロイド殺し』と同じようなもので、告白から始まるどんでん返し物というのはその告白のどこかあるいはすべてに嘘が隠されているもので、これを信用すること自体、まちがってる。だから、ぼくたちとしては、こいつの嘘はどこにあるんだってことから観始めないといけない。でも、ホテルの中での3人の男の惨殺死体と語り部の怪我の具合からして、これはかなりの部分ほんとなんじゃないかって製作者側の術中に嵌まっていく僕がいた。まんまとやられた。
にしても、だ。
どんでん返しの応酬というのはまあまあ気持ちのいいもので、それが2度続くと3度あるのは見えてくる。途中までが常に逆境になっていくのを逆に跳ね返しているものだからこれはこれでいいとしても、警察に助けてくれと駆け込んでくること自体、主人公たりえないわけだからそこに陰謀あるいは作戦があるのは自明のことだし、たとえ駆け込んできたのがほんとうであってもそののち刑事と同等の立場に立って事件の解決に邁進し、やがては自分の手で大団円まで持ち込まなければならない。それが物語の鉄則だからだ。だから途中からラストはおぼろげに見えてくるものの、いやあ、あの惨殺がフェイクってのには騙された。嘲笑われた。