◇小さいおうち(2014年 日本 137分)
監督 山田洋次
◇こういう昭和もあったということで
いつの時代も男と女がいて、そうである以上、不倫は決してなくならない。
それは祖国が戦争をしていようがいまいが関係なく、なにかひとつきっかけがあれば男女は出会い、なにかひとつ引き鉄が引かれれば男女は抜き差しならない間柄になる。この物語の舞台は昭和10年に建てられた赤い屋根の小さな家だけれども、当時としてはかなりハイカラなものだったはずだ。当然、そこに棲んでいる家族はお金持ちで、だから住み込みの女中さんも雇える。息子が小児麻痺だったという理由はあるものの、でも、ブルジョワというくくりには入れられるだろう。当時、ここまでの家がいったいどれだけあったのかはわからないけど、それなりに裕福だったにちがいない。もちろん、人は裕福だから不倫をするわけではないし、どのような境遇にあっても機会が訪れてしまえばそうなる。だから、財産や地位はあんまり関係ないんだけど、たぶん、こういう設定の方が不倫に溺れてゆく人妻の姿は官能的になるんだろうね。
ま、そんなことはいいんだけど、なんでかな、この頃の山田洋次の映画は一般的に見て裕福な家が描かれているような気がする。その理由についていろいろと考えてみたんだけど、結局、なんでなのかはわからない。でも、今の人達が映画を観るとき、かつて、そう昭和時代に撮られていた山田洋次作品の主人公たちの境遇はあまりにかけ離れているのかもしれないね。
黒木華という女優さんはたしかに昭和的な顔をしていて、演技も淡々とした中での感情を上手に表現できる人だから、こういう役どころは似合ってるんだろね。なんていうか、バタ臭い顔をした主役級が多い中では異彩を放つといわれるのはよくわかる気もするわ~。