◇天井桟敷の人々(1945年 フランス 190分)
原題 Les enfants du Paradis
第1幕 犯罪大通り(Le Boulevard du Crime)
第2幕 白い男(L'Homme Blanc)
監督 マルセル・カルネ
◇「愛し合う者同士にはパリも狭い」
高校生の頃、映画にめざめた。
で、田舎の少年の定番なんだけど、キネマ旬報を毎月購読するようになった。とはいえ、けっこう難しくて、すべてを読みこなせたわけでもなく、それでもまあ惰性で読み続けた。で、大学に入ったとき、戦後復刊800号記念で外国映画史上ベストテンってやつがあって、そこでこの作品は堂々第1位を獲得した。へえ~とおもった。おもって、いつかこの映画はちゃんと観なくちゃいけないな~ともおもった。
それから、何度か観る機会があったような気もするんだけど、よく憶えてない。
で、このたび観て、こりゃ忘れるよ、とおもった。
考えてみればそりゃそうだろう。当時、キネ旬のベストテンに投票した人達は青春時代にこの作品を観てるわけで、当然、青春時代の甘酸っぱい記憶と共に投票されれば第1位にもなろうってもんだ。といいきっちゃうのは、おそらく、ぼくが映画については結局のところど素人で、鑑賞眼なんてものは欠片すら持っていないからだろう。
けどさ、落ち目の女芸人アルレッティを臍に、パントマイム芸人と女たらしの役者と富豪の伯爵が恋仇となって、そこへ強盗殺人犯と明きめくらの古物商とが絡んで、ひたすら恋物語に時間が費やされるこの物語が、たとえフランスあたりでリメイクされたとしても、たぶん、つまらない恋愛映画にしかならないだろうってことくらいはわかる。つまりは、それくらいのあらすじなんじゃないのかなと。たしかに大作だってことはよくわかるし、当時よく制作できたものだっていう驚きもあるし、マルセル・カルネもさぞかし大変なおもいをして撮影したんだろうなって気もするけどね。
ただ、おもうんだけど、アルレッティについてどうして自叙伝の「女優アルレッティ・天井桟敷のミューズ」が映画化されないんだろう?この作品がそれほどの名画なら、とっくに映画化されても不思議じゃないんだけどな~。ドイツ将校の愛人だったために対独協力者として嫌疑をかけられ、公爵夫人の愛人だったことも暴露され、それでも人気は衰えず、さらには銀幕に復帰して『史上最大の作戦』にまで出演(役名バロー夫人)するなんて、誰も考えつかないような最高の物語じゃんね。
でもまあ、こういう話は、歴史街道とかで掲載されたりするのが一番なんだろうけどね、たぶん。