◇グスコーブドリの伝記(2012年 日本 85分)
監督・脚本 中村隆太郎
◇ますむらひろしの猫
どうしても『銀河鉄道の夜』と比較しちゃうのは、やっぱりキャラクターのせいで、こればかりはどうしようもないんだけど、当然ながらお互いに独立した作品なんだから中身はまるでちがう。どちらがどうとかいうことは抜きにして、ともかく『銀河鉄道の夜』が制作されたときからずいぶんとアニメも進歩し、絵作りにおいてはそのめざましさに驚いた。
また、異世界をつくりあげるという点においては、いやまじ見事な出来栄えで、ファンタジーとしての濃度は実に濃い。宮沢賢治の世界観とキャラクターは上手にあしらわれているし、物語が流れていく上でそこに漂っている空気感もしっかりと感じられる。
ただ、問題なのは、火山を噴火させることによってCO2を増やしイーハトーブを温暖化させ、冷害をふせぐというのが宮沢賢治がこれを執筆したときの主題だったようで、それをほとんど踏襲していることだ。たしかに佳境、火山を爆発させるために自己犠牲をともなってゆくという心映えの美しさは感じられるものの、物語よりもその設定には眉をしかめざるをえない。あまりにも安直に作り過ぎたんじゃないかって。ちょっと製作者側の考えが足りなかったんじゃないかと。