☆帰ってきたヒトラー(2015年 ドイツ 116分)
原題 Er ist wieder da
監督・脚本 デヴィット・ヴェント
出演 オリヴァー・マスッチ、カッチャ・リーマン、トーマス・ティーメ、ファビアン・ブッシュ
☆66年後の未来
ナチズムからも独裁政治からもさらにいえば歴史からも遠いところにいるぼくからすれば、とってもおもしろい作品だった。だから、この作品がコメディなのか、ブラックユーモアを前面に押し出した右翼の台頭を危ぶんだ相当に主張性のある物語なのかは判断がつかない。
でも、自殺したはずのヒトラーが時間跳躍して旧総統官邸に復活し、キオスクで働き、コメディアンとして扱われ、youtubeにまで出演していくという設定はなんともおもしろく、充分に楽しめた。演出が、現代的なドキュメントタッチにしているところがこの映画の成功の鍵だったようにもおもえるし、そうした斬新さがなかったらこれまでにもあったようなごく一般的な「ヒトラー現代にあらわる」物の亜流でしかなかったかもしれない。
ただ、おもうのは、ヒトラーに対する免疫がドイツ本国ですら薄れていることだ。もちろんそんなことは予想できたことだけど、ここまで現実にヒトラーは完全に過去の遺物になってしまっているのを突きつけられてしまうと、あの時代はなんだったんだろうっておもっちゃうんだな。
ちなみに、ぼくたちはヒトラーのことをヒットラーと習ってきた。それがいつのまにやらヒトラーと書くようになった。でも、この映画では「ヒットラー」っていってるような気がするんだけどな。となると、ヒトラーっていうのは日本の言い方にすぎなくて、ほんとうはやっぱりヒットラーでいいんじゃないかっておもうんだけどね。