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☆=☆☆☆☆☆
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ダンケルク(2017)

2017年10月14日 11時49分47秒 | 洋画2017年

 ◎ダンケルク(2017年 イギリス、オランダ、フランス、アメリカ 106分)

 原題 Dunkirk

 監督・脚本 クリストファー・ノーラン

 出演 ケネス・ブラナー、キリアン・マーフィー、トム・ハーディ、マーク・ライランス

 

 ◎1940年5月26日~6月4日

 まあこれは個人的な感覚だから断言はできないんだけれども、これまでクリストファー・ノーランの構図は縦を主体にしてた。天に向かって上がってゆく縦、地へ向かって落ちてゆく縦、それが次元や時間を内蔵しながら複層的に描かれてきたような気がする。

 ところが、今回の構図は奥行きだ。

 遙か彼方の爆炎、噴煙、水平線、町並み、そして空襲による爆弾の炸裂。これらは奥から手前にかけて徐々に近づき、緊迫感を増す。これにくわえて、三つの物語つまり一週間の陸、一日間の海、一時間の空が重層的に交錯して、ときに錯覚をひきおこし、幻惑させながらたったひとつの頂点すなわちダンケルクの浜と沖をめざしてゆく。かれらに共通しているのはドイツへの敵対心というよりも生存本能ただ一点で、それをなんとか満たしてやりたいとふんばる人間力の凄まじさだ。

 で、最後に語られるのはチャーチルの談話なのだけれども、ときに虚しさすら感じさせるその談話になぜか目頭が熱くなってしまうのは、クリストファー・ノーランがこれでもかとばかりに見せつける迫力満点の画面と音響のせいにほかならない。

 あらためて観直したんだけど、二度目でも感じるところはおんなじで、三つの物語の接点がどこに置かれているのかということもじっくりと考えながら観ることができたし、なるほど、全体の3分の2あたりが交錯点だったのねと余裕をもって観ていられた。絵つなぎも無理矢理ってわけじゃなくて、たとえば、浸水についてもオーバーラップさせてる。商船の銃弾の穴から、スピットファイアの風防ガラスの隙間から浸水してくる海水だ。かなり多くの絵つなぎが、おなじ条件の場面をつないでいる。まあそのカットバックのせいで、かえって紛らわしくもなるんだけど、それはノーランなりに幻惑する効果を求めたものだろう。

 それにしてもハンス・ジマーの音の繰り返しというか、増幅というか、いや、無限軌道の音楽というべきか、この音楽ともいえないような音楽と、時計の秒を刻む小さな音から風圧すら感じさせる爆裂や銃撃などの大音響がなければ、これだけの臨場感はなかったんじゃないかってやっぱりおもった。

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