Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

FEAR X フィアー・エックス

2017年10月21日 22時50分43秒 | 洋画2003年

 △FEAR X フィアー・エックス(2003年 デンマーク、カナダ、イギリス、ブラジル 91分)

 原題 Fear X

 監督 ニコラス・ウィンディング・レフン

 出演 ジョン・タトゥーロ、デボラ・カーラ・アンガー、ウィリアム・アレン・ヤング、マーク・ホフトン

 

 △赤いホテル

 妻ジャクリーン・ラメルを撃ち殺したのは誰なのか、またその理由はなんなのか。

 ジョン・タトゥーロはそれだけを求めて妻が殺害されたウィスコンシン州のショッピングモールの警備員になり、日々、怪しい人間を追い、防犯カメラの映像をひたすらチェックし続ける。同時に、ジョン・タトゥーロは妻の幻想を見る。妻は常に自分に笑顔を向けるものの自分から離れていく。自宅でも、自宅の前でも、宿泊したホテルの部屋でも廊下でも、暗闇の中へ去っていってしまう。

 それは死ということなのだろうけど、自宅の正面に建っていて数年先まで団体契約が結ばれている平家にだけは、雪のふりしきる中、明瞭な映像で入っていく。ということはもしかしたらこの幻想だけは現実なのではないか。ジョン・タトゥーロはそうおもって人気はないながらも毎日夕方になると明かりの灯る不気味な家1329番地へ潜入する。

 そこでジョン・タトゥーロはフィルムを見つける。フィルムに映っていたのはモンタナ州ルート200にあるレストラン「スティーヴ&ニッキー」の前で戯れる母子だったが、ジョン・タトゥーロにその母子の記憶はない。けれど、その写真を撮ったとおぼしき野郎がドアに映りこんでいた。この野郎は防犯カメラに映っていたピンボケ野郎ジェームズ・レマーだった。

 ジョン・タトゥーロはモンタナ州へ急ぎ、かつて妻と訪れたことのある思い出の町モリストンのベル・ホテル305号室に宿泊し、野郎と母子を探していくのだが、野郎はその土地で表彰までされる警官で、母子はその家族だった。どうやら、この野郎は警察のからんだ大掛かりな事件に関与しているようで、その事件に妻も引き摺り込まれていた可能性があることだけはわかった。

 しかし謎解きはここまでで、あとはジョン・タトゥーロが怪我を負わされ、モリストンから追い返されるところで物語は終わってしまう。なんじゃこれは!という怒りだけが、ぼくたちに残るのだね。好かったのは売春婦役のアマンダ・オームスがやけに綺麗だったことくらいだ。

 まあ、野郎が、その汚職事件だかなんだかに手を染めているとき、ウィスコンシン州へ出張するたびにジョン・タトゥーロの妻と不倫をしていたわけで、たぶん、妻は事件についてもなにか知っちゃったんだろうね、で、殺された。野郎ジェームズ・レマーとしては、この事実を明るみに出されたくない。けど、奥さんのデボラ・カーラ・アンガーは感づいちゃう。このときの追い詰める演技は上手だね。で、これはいかんということで、野郎はベル・ホテルへ乗り込み、503号室へジョン・タトゥーロを呼び出し、幻想的な赤い廊下で殺人未遂をしでかすわけだけれども、やけにいろんな数字にこだわった不思議な雰囲気の映画だった。

 単調に進んでいくんだけど、妙な緊張感がある。ずっと奥さんを殺した犯人を突き止めようとしているのを撮ってるからそうなるんだろうけど、でも音楽もないし、行動的なところもない。ただ、効果音っていうのか、空気を震わせるような微妙な音がずっと続いてる。けっこう、鼓膜に残る。濃密な雰囲気なんだよね。警備員をしているスーパーマーケットが騒々しい分、家のある住宅地の森閑とした空気との差がかなりあって余計に緊張感を生んでたかな。

 けど、脚本がどうにも中途半端で、赤い部屋と廊下とプールのような雫のような幻想的な映像だけが突出してた。もうちょっとなんとかなったんじゃないかっておもうんだけど、幻想的な雰囲気を濃厚にしたいんならそれ相当の演出もあったろうに、物足りなさがいっぱいだね。

コメント