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日本のいちばん長い日

2017年10月09日 00時28分38秒 | 邦画2015年

 ◇日本のいちばん長い日(2015年 日本 136分)

 監督・脚本 原田眞人

 出演 役所広司、本木雅弘、山崎努、堤真一、松坂桃李、三船力也、戸田恵梨香、蓮佛美沙子

 

 ◇狂気が足りない

 そもそもいまさらなんでこの作品を再映画化しなければならなかったのかがわからない。

 原田眞人は上手な監督で、かたい演出をするし、絵面もうまく作る。だから映画は安心して観ていられるものが少なくない。たとえば『駆込み女と駆出し男』みたいに。でも、この作品についてはどうかな。役所広司もまた好い役者なんだけど、人格者に過ぎるのが難点で、すべてを寛容にくるんでしまう芝居は上手だけど魂の激情のような迫力はやはり三船敏郎の気迫に一歩足りない気がする。役者はそれぞれに得手不得手があるもので、戦争当時の張り子の虎ではあっても張り切った絹糸のような精神をあらわすには三船敏郎のような役者が必要だったような気がするんだよね。

 まあそれは役所広司にかぎらず、他の役者についても同様で、終戦当時の緊迫しきった心模様をどのように演じるかという点について、感情の昂揚の凄まじさについて、しかしながらそれが狂気による奔出であるのか冷静沈着な行動であるのかを表現しなければならず、これはなかなか大変だ。たしかに岡本喜八の前作は大仰すぎるところもなくはなかったけれど、それは戦争のもたらす狂気がこんにちから見れば滑稽極まりない悲喜劇であるという視点のもとに描かれているからそうなるわけで、演出もどのような視点に立つのかというところがいまひとつ稀薄なように感じられるんだけど、まあこれは個人的な意見だから。

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