☆愛の嵐(1974年 イタリア 117分)
原題 Il Portiere di notte
英題 The Night Porter
監督 リリアーナ・カヴァーニ
出演 シャーロット・ランプリング、ダーク・ボガード、フィリップ・ルロワ、ガブリエーレ・フェルツェッティ
☆1957年、冬、ウィーン
リリアーナ・カヴァーニの演出が凄いのかシャーロット・ランプリングの演技が凄いのかわからないけど、この倒錯した性愛劇のリアリティは並大抵なものじゃない。それはなにもシャーロット・ランプリングが騎乗位になったときの腰の使い方があまりにも官能的すぎるとかいう些細なことではなく、画面から饐えた匂いが漂ってくるような全体の雰囲気のことだ。
まあ、ここでいまさらあらすじを追いかけたところで仕方がないけど、なんとも皮肉というか偶然というか、ダーク・ボガードのことだ。
ダーク・ボガードが演じてるのはかつてのナチスの将校で、こいつが収容所でシャーロット・ランプリングを奴隷人形のように扱い、性愛の妙を骨の髄まで染み込ませてしまった張本人で、そのせいでシャーロット・ランプリングは性愛の奴隷と化し、異常な性愛がそのまま深層心理にこびりつき、さらにそれが自分にも相手にも苦痛と屈辱を与えることに死と引き換えにしてもいいとまでおもえるような官能の極地へ堕とされてしまうわけだけれども、そのダーク・ボガード本人、戦争を経験している。
ただし、枢軸軍ではなく、連合軍の将校としてだ。ただ、皮肉か偶然かわからないけれど、ダーク・ボガードが進軍していった先は、アンネ・フランクが最期を迎えたベルゲン・ベルゼン強制収容所だったってことだ。なんか見えない糸に絡みつかれているような、そんな感じを受けちゃうなあ。