☆午後8時の訪問者(2016年 ベルギー、フランス 106分)
原題 La fille inconnue
監督・脚本 ジャン=ピエール・ダルデンヌ 、 リュック・ダルデンヌ
出演 アデル・エネル、オリヴィエ・ボノー、ルカ・ミネラ、ベン・アミドゥ、ローラン・カロン
☆ベルギー、リエージュ州セラン
セランの工業地帯ってところはなんだかごみごみした感じのところで、そこにある診療所に近いムーズ川のほとりで工事用クレーンの運転手に発見されるのが、アフリカのとある国からやって来た不法滞在者の姉妹の妹だ。この子が診療所の呼び鈴をおして、わずか後に殺されたことがこの物語の発端になってるんだけど、う~む、不法移民の問題は根深いな。
診療所のあとをつぐことになるアデル・エネルはほんとにどこにでもいる普通の新米女医を演じてて、その素人くささがダルデンヌのドキュメンタリータッチに合ってたんだろうね。
診療時間を過ぎていたときの訪問者っていうのはほんとに出たくない存在で、それがことに踏み台にしようっておもってたちっぽけな診療所だったらなおさらで、さらにいえば使えない研修医が呼び鈴に応えようとしたことが余計に苛立ち、出ないでいいっていっちゃう気分になるのもよくわかる。このあたりの感情の機微はほんとにうまい。
でも、自分が答えなかったことで、少女が殺されたのは自分のせいだとおもい、その降ってわいたような責任感から少女はなぜ殺されなければならなかったのかという点を究明しようとするのも無理のない展開だし、結局のところ、自分が主治医になっている少年の父親が、少女を買おうと誘って断られたことで腹を立てて殺意のかけらもない腹いせで素っ転がしたことが死因になるなんていう、なんとも憐れなながらも現実味のある真実を知るにいたるんだけど、その背景にあるのは不法移民の問題がすべてのもとになっているっていう構図になってる。
上手だな~とかって感心だけしてる場合じゃないよね。